逆に僕からお聞きしたいのですが、机の前にずっと座りながら、すばらしいアイデアが思い浮かんだことってありますか？

その通りだと思います。

2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授も、シャワーを浴びているときに、iPS細胞につながるアイデアが湧いてきたそうです。

働きすぎて心を病んでしまう人もいるわけですし、もっと柔軟性があっても良いと思います。

Googleでは、「勤務時間のうち20%は自分のやりたいプロジェクトに費やしてもいい」というルールがあるんです。

元Googleエンジニアのチャディー・メン・タンは、この20%を使って、マインドフルネス瞑想の研修プログラムを開発したそうです。他にもさまざまなツールがここから生まれています。

焚き火です。火の前にいると、人って気持ちがほぐれると思うんです。「散歩ミーティング」のように「焚き火ミーティング」があると、ふとアイデアを交わしあえるのではないでしょうか。

他にも、あえて日常生活と離れた場所で過ごす「リトリート」も良いですね。僕の以前の勤務先では、温泉で会議をするリトリートイベントがありました。

元々「リトリート」は「撤退する」「避難」「隠居」という意味を持ちます。日常から撤退して、普段の生活とは違う場所で自分を見つめ直すと、いつもとは違うアイデアが生まれるのではないでしょうか。

少し視点を変えて、プロジェクトアドベンチャーのようなアクティビティーもおすすめです。

例えば、4メートルの高さの壁があるとします。それをチームで「いかに乗り越えるか」「どうやって体を支え合うか」といったコミュニケーションをとって、課題の解決を目指す。プロジェクトアドベンチャーでは、そういったアクティビティが行われています。

そこで、働く上で必要な信頼関係を築くことができたり、他のメンバーの人となりがわかったりするんです。

とはいえ、プロジェクトアドベンチャーほど大掛かりなことがすぐにはできないこともありますよね。

その点、散歩は気軽に取り入れられます。アイデア出しはもちろん、雑談が増えることで結果的に社内のコミュニケーション量が増えて、仕事のパフォーマンスも上がるのではないでしょうか。

実際に歩きながらインタビューをされて、感情の状態はいかがですか。

それは、物事に対して凝り固まった考え方をするのではなく、柔軟に捉えることができる「認知の柔軟性」が高まったのかもしれませんね。これも、創造力と関わりの深い認知機能です。

やはり運動をしていると、ポジティブな気持ちになってきますよね。

日常的に散歩をするなら、「ここに行くと楽しい」というお気に入りの場所を見つけるといいかもしれません。僕の場合、近所の公園にある桑の木に向かって歩く、と決めているんです。

やはり、「健康維持のために運動する」「痩せるために運動する」と無理に目的を設定するよりも、「ついで」だと気軽に続けられます。創造力も上がりますし、結果的にアイデアも浮かびます。

散歩ミーティングの良さは、机の前では得られない刺激が得られるところですね。景色、風、におい。五感の刺激が得られるからこそ、アイデアが生まれる。ぜひ、取り入れてみてください。