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今の仕事にどこか納得がいかない「モヤモヤ」の正体は? アイディール・リーダーズCOO・後藤照典さんに聞く、自分の「パーパス」に合った仕事の見つけ方

社会人になって数年が経つと、仕事を一通り覚え、自分に与えられた役割を果たせるようになっていくもの。

その一方で、現状に大きな不満があるわけではないものの、「この仕事をこのまま続けていていいのだろうか?」「もっと自分に適した職場があるんじゃないか?」など、漠然とした「モヤモヤ」を抱える人も多いようです。

自分が心からやりたいと思える仕事はどうやって見つければいいのでしょうか? 自分の生きる意義や目的を意味する「パーパス」を考えるワークショップを企業や個人に提供している、アイディール・リーダーズ株式会社COOの後藤照典さんに伺いました。

後藤照典(ごとう・あきのり)
アイディール・リーダーズ株式会社COO。東京大学教育学部卒業。グロービス経営大学院修了(MBA)。ベネッセコーポレーションで商品企画、人事などに携わった後、「日本企業にパラダイムシフトを起こす」という志から、アイディール・リーダーズに入社。経営者・リーダー向けのエグゼクティブ・コーチング、ビジョン・パーパスの策定や実装のコンサルティング、1on1トレーニングなどの実績多数。共著書に『パーパス・ドリブンな組織のつくり方 発見・共鳴・実装で会社を変える』(日本能率協会マネジメントセンター)。

社会人が抱く「モヤモヤ」の原因はどこにある?

20代後半〜30代になると、自分の仕事は一通りできるようになった実感があるからこそ、どこか納得できていなかったり、もっと適した仕事があるんじゃないかとモヤモヤした気持ちがあったりするように思います。

特に最近は、会社と個人は対等な関係で、ともに成長していくものだという考え方がありますよね。

いい傾向だと感じる一方で、個人が会社との距離感をどう考えるのか、あるいは社会とどう関わっていくべきかに悩みやすい状況なんじゃないかと思うんです。

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後藤

確かにそうですよね。特に、今の30歳前後の皆さんは自分を大切にする教育を受けてきていますし。

こういった仕事に対するモヤモヤはなぜ生まれるんでしょうか?

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後藤

モヤモヤの原因を考えるために、逆にモヤモヤしていない状態を想像してみましょう。

それは、「自分はこれを目指している」「こうなりたい」という思いが明確で、そこに向かっているときだと思うんです。つまり、自分のビジョンやパーパスが明確になっている。

なるほど。どこに向かいたいのかが曖昧だと、モヤモヤした気持ちになりがちなんですね。

ところで、ビジョンとパーパスってよく聞きますが、どう違うんですか?

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後藤

ビジョンは「なりたい姿」。起業したいなど、具体的な地点を目指すことです。

パーパスは「ありたい姿」で、こう生きていきたい、こんなことを大切にしたい、自分の存在意義はこうだ、といった、生きるスタンスのようなものですね。

ビジョンとパーパスは、人によってどちらかをもっているのでしょうか?

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後藤

ビジョンに心を動かされる人もいれば、パーパスに動機づけられる人もいる印象です。両方もっている人もいますね。

私たちが子どもの頃に考えていた「夢」って、ビジョンだった気がします。たとえば、「この職業に就きたい」とか。

「ありたい姿」、つまりパーパスを考える機会はあまりなかったような……。

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後藤

そうですよね。まず、自分は「ビジョン派」、「パーパス派」のどちらなのかを考えてみるといいと思います。

これまでの人生で、ワクワクしたり心を動かされて自ら行動したりした経験を振り返ってみると、自分はどちらのタイプなのかがわかってきますよ。

振り返るのは、学生時代のことでもいいんですか?

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後藤

もちろんOKです。私が経営者のコーチングをすると、文化祭の思い出を挙げる方も多いんです。

文化祭であれば、

・「○○人を集客して、体育館を人でいっぱいにしよう!」といった目標に向かって取り組んだ人はビジョン派

・「仲間と楽しく過ごせる時間を大切にしよう」といったプロセスを大切にした人はパーパス派

と考えてもいいですね。

日本で働いている方々の話を聞いていると、「パーパス派」の人も多いように感じます。

2つの違い、よく理解できました。

今日はぜひパーパスの考え方について詳しく教えてください。

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後藤

わかりました!

ゼロから自分のパーパスを探るのは難しい。ではどうする?

自分で自分のことを理解するって、意外と難しいですよね……。

自分がパーパス派だとわかったとして、具体的にパーパスをどう考えていけばいいのでしょうか?

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後藤

ひとつの手がかりとして、自分の価値観を探ってみる方法があります。

たとえば、この「価値観リスト」を使って、自分が大切にしている価値観を8つ選び、次に5つに絞って、最終的に3つだけ残す。それが自分の価値観なので、そこからパーパスを自分の言葉にしてみるんです。

書籍『パーパス・ドリブンな組織のつくり方』より抜粋

へえ……! ゼロから考えるよりも、自分の価値観が見つかりやすそうですね。

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後藤

もうひとつは、パーパスを掘り下げる質問に答えてみるという方法です。

書籍『パーパス・ドリブンな組織のつくり方』より抜粋

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後藤

こういうワークをしてみると、自分が大事にしていることが見えてきます。

パーパスの場合、お風呂に入っているときに突然思いついた、なんてことは基本的にはありませんからね。

自分ひとりでじっくり考えるのか、人と話しながら考えるのかでいうと、どちらがいいんでしょうか?

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後藤

人によって多少わかれると思います。内省が好きな人はひとりでゆっくり考えるのがいいでしょうし、コミュニケーションによって発想がふくらむ人は同僚や親友と話しながら考えてみるとよさそうです。

さらなる詳細は、書籍『パーパス・ドリブンな組織のつくり方』でも紹介している。

自分のパーパスと会社のパーパスの「重なり」を見つける

ビジョンの場合、具体的な仕事をイメージしやすいですよね。

でも、自分のパーパスを言葉にした後は、どうやって仕事に結びつければいいんでしょうか?

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後藤

そうですね。ビジョンは言葉の通り、ビジュアライズ(可視化)されていますから。

パーパス派の方の場合、まず「自分の仕事がパーパスと合っているのか」の現状確認をしてほしいと思います。私が行うワークショップでも、「改めて考えてみたら、自分のパーパスが今の仕事と合っていた」という人は、けっこう多いんです。

ええ! 意外です。

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後藤

多くの人は自分のパーパスを考えたことがないので、会社のパーパスだけを見ても、自分との共通点に気づきにくいんですよね。

自分のパーパスと会社のパーパスに重なりがあるかを考えてみて、近しい部分が見つかるとモヤモヤが少し晴れると思います。

その「重なり」が見つかった人は、他のことでモヤモヤしていたということでしょうか?

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後藤

そうですね。たとえば、スキルが足りないだけだった、と気づけば、スキルアップをがんばればいいですよね。そうすれば、1年後にはもっと活躍できるようになりますから。

なるほど。自分がやるべきことが明確になるっていいですね。

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後藤

そして、自分のパーパスと会社のパーパスの共通点が見つかると、自分のパーパスに向かって努力することが、会社のパーパスへの貢献にもなるんです。相乗効果ですよね。今の私もこの状態なので、働いていて幸せです。

それはいいですね!

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後藤

仕事が自分のパーパスを実現するための舞台であると感じたいですよね。人生が豊かなものになると思います。

自分のパーパスと会社のパーパスの重なりが見つからなかったら、どうすればいいでしょうか?

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後藤

社内で異動希望を出せるようだったら異動を考えて、難しければ転職してもいいと思います。

ただ、最近は転職がしやすくなりました。次の仕事が見つけやすい状況だからこそ、ちょっと注意が必要です。

というと……?

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後藤

自分のパーパスやビジョンがはっきりしないまま、なんとなく転職すると、次の職場でもすぐにモヤモヤしてしまいがちです。結果、転職を繰り返してしまう。

確かにそうですね。転職しやすいからこそ、気をつけたいポイントだと思いました。

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後藤

やっぱり大切なのは、ビジョンやパーパスなんですよね。自分がもつスキルだけで会社を選ぶと、入社後にミスマッチが起きやすい。個人も、そして採用する会社も抜けがちな視点だと思います。

あとは、会社側のパーパスが変わるケースもあるんじゃないでしょうか? 事業を変えた企業って結構ありますよね。

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後藤

そうですね。会社の経営方針が変わったことで、自分のパーパスと合わなくなる場合は起こり得ます。そのときも、転職を考えるのも選択肢だと思いますよ。

自分のパーパスは、変わり続けるもの

自分のパーパスも、ずっと同じであるとは限らないですよね。ライフイベントが起きたときなどは、自分の価値観も変わりそうです。

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後藤

変わることもあると思います。たとえば、結婚して家庭をもったことをきっかけに、大切にしたい価値観に家族の幸せが含まれるようになったり。

そう思うと、自分のパーパスを考えるのは、永遠のテーマかもしれませんね。

パーパスを考え続けるのも大切なんですね。最後に、モヤモヤを抱えている方が一歩踏みだすためのコツがあれば、教えてもらえないでしょうか?

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後藤

今日お伝えした価値観を考える方法論以外ですと、肩肘を張らず、周囲にいる先輩の話を聞いてみてはどうでしょうか?

今はYouTubeやニュースアプリなどにさまざまな人のキャリアについての話がありますから。

自分に素直になって価値観を見つめる機会をつくり、共感する言葉やしっくりくる考え方を探してみてください。そうして、働くことで幸せだと感じる人がひとりでも増えてほしいと願っています。

取り組みやすいことから始めるのも、自分のパーパスを見つけるコツなのかもしれませんね。今日は貴重なお話をありがとうございました!

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2023年9月取材

取材・執筆=御代貴子
撮影=小野奈那子
編集=鬼頭佳代/ノオト