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共創のつながりが街を形成するヒントになる 「NEXT UMEDA」を考えるイベントで見えてきたこと

街を形成するために必要なのは「共栄」

最後に、登壇者によるパネルディスカッションが行われました。モデレーターは、株式会社オカムラの遅野井宏。未来の梅田の街づくりには何が必要で、どんな意識を持つべきなのでしょうか。

株式会社オカムラ・遅野井宏

オカムラと阪急阪神グループが「bee」で行った共創活動は松岡さんも参加されましたね。どう思われましたか?

遅野井

松岡

予定調和の議論にならず、非常に面白かったです。弊社のビル担当の社員だけでなく、途中から商業施設担当の社員も加わってくれました。

岡本

やはり参加される社員の皆さんは、それぞれ異なるアセットをお持ちなので、それに基づいた議論に落ち着くのかと予想していたのですが。途中からはそれを壊す勢いで議論が深まり、興味深かったですね。

松岡常務が「これまでの固定観念や仕事のことは一切抜きで、楽しくやってほしい」と言ってくださったおかげで、ディスカッションがヒートアップしたのだと思います。

今日の会場である「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」のコンセプトに「つながり」という言葉がありました。今後求められる「つながり」の要素は何だと思いますか?

遅野井

松岡

個人的には、競合を問わず大型ビル同士でつながれるといいのでは、と思っています。これまでは競合企業同士としていかに差別し、ビルに人々を集めるか、といった観点が大切でしたが、これからは「共栄」の時代。他社同士がつながり、梅田がつながることで、街が形成されるのではないでしょうか。

実現することこそが難しいのだと思いますが、「共栄」を加速するためには、どうすればいいのでしょうか。

遅野井

岡本

やはり、互いに視座を上げて、想像する未来の景色を合わせることが大切ではないでしょうか。共通の目標を設定すれば、仲間を集めることもできますから。

松岡

私の場合、ビルや施設には「ワクワク感」が大切だと思っています。現在、阪急阪神グループは梅田で多くの商業施設を運営していますが、安心・安全が大切にされているものの、「ワクワク感」は足りないのではないか、と危惧していて。

そこを補うには、どんな場所が作りたいか、といったパッションを語り合える機会が必要です。だからこそ「bee」での共創活動では、予定調和ではない議論を深めたいと思っていました。

実現することこそが難しいのだと思いますが、「共栄」を加速するためには松岡さんのおっしゃった「ワクワク感」は、商業施設や百貨店を中心とした街づくりにおける課題でもあります。活気のある街とそうでない街、どんなところが違うのでしょうか。

遅野井

山田

やはり立地のいい場所や、人口の多い街には、自然と活気が溢れていきます。大阪は笑いの街で商業施設を起点とした活気を生みたいならば、個人的には「笑える施設」があるといいなと思います。なんといっても大阪は、笑いの街ですから。

大型ビルに増えている共用スペースを活用するには

「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」12階の「WELLCO」は、入居している人々同士がつながったり、気分転換したりする場として機能していますよね。このフロアへの意気込みをお聞かせください。

遅野井

松岡

「WELLCO」はコロナ前に企画しはじめ、当初は「集まる」をコンセプトに掲げていました。しかし、コロナ禍によって状況が変わってしまい、「分散」をキーワードに掲げ直したんです。リアルで積極的に出会いを作っていくものから、オンラインも含めた分散型のつながりづくりを目指すようになりました。

今後も時代や状況によって、目的や用途は変わっていくと思いますが、今はこの形がベストだと考えて提供しています。柔軟性を持って運営していきたいですね。

こうした共用スペースを持つビルは増えていますが、活用されているビルとそうでないところがあります。山田さんと岡本さんは有効活用のポイントは何だと思いますか?

遅野井

山田

まずは、「積極的に利用してもいいんだ」と働き手の意識をつくっていくことが重要なのではないかと思います。

岡本

確かに、日本では休むことやリラックスすることに、罪悪感がある方が多いですよね。意識改革の必要性を感じます。

固定観念を外すことが、新しい街づくりへの一歩

参加者から、「アセット中心ではない街づくりを進めるポイントを教えてください」という質問がありました。私は、固定観念を外すことがポイントなのかと思いますが、松岡さんはどうお考えですか。

遅野井

松岡

そうですね。「こうあるべき」という発想より、「こうあってほしい」というヒントを大きく取り入れることが大事だと思います。何気なく使っている言葉には、それまで重ねてきた経験や印象が詰まっているものです。そこでクローズしないようにすることがポイントですね。

「bee」での阪急阪神グループとオカムラの共創活動で、岡本さんは、阪急阪神グループ側の意識の変化を感じられましたか。

遅野井

岡本

もちろんありました。「コロナ前とコロナ後で、梅田がどう変わったか」というテーマから議論をはじめたのですが、フラットに語り合っていくうちに、皆さんの表情がみるみる変わっていったのが印象深かったです。ビジネスに縛られた発想から離れて、「こう考えてもよいのではないか」という思考に辿り着いたというか。

こうしたワークショップは、短期的に数字で効果が現れるものではありません。しかし、あえて未来について考える時間をつくることで、確実な分岐点になると思います。

松岡

そうですね。街づくりは大きなテーマです。議論することですぐに目に見えるものとして完成形が表れるわけではありませんが、人とのつながりが見られた気がします。

部署や所属チームにとらわれず、ルールを作らずに話し合うことで、実際の本音が垣間見えることってありますよね。この共創活動ではそれが実現できて、発想や気づきを共有し、新たなネットワークが生まれた。参加した人々が次にどんな街づくりをしてくれるのか、楽しみです。

取材・執筆:桒田萌(ノオト)
写真:飯島隆
編集:鬼頭佳代(ノオト)