森ビルが仕掛ける「MORIワークスタイルラボ」の舞台裏。WORK MILLと問い続けた、企業が“よりよく働く”ためのカルチャーとは?
2025年6月に発足した「MORIワークスタイルラボ」は、森ビルに入居する10社の総務や人事担当者が集まり、縦横斜めのつながりをつくり、各社の抱える課題と向き合っていく共創プロジェクトです。WORK MILLは、このプロジェクトの企画・運営パートナーとして立ち上げ時から伴走しています。
2026年2月には、各企業の学びを発表する「最終報告会」を開催。参加者からは「今までにない企画だった」「これからも交流していきたい」とたくさんの前向きな声をいただきました。
今回は、森ビルが仕掛ける「MORIワークスタイルラボ」についてプロジェクトの関係者4名に話を聞きます。一体、どのようなきっかけでプロジェクトが始まり、前例のない企画を成功させることができたのでしょうか?
正解を見つける場ではなく、探求し続ける場をつくりたい
「MORIワークスタイルラボ」は、森ビルのテナント企業の総務・人事担当者が集まり、働き方を考えるだけでなく、学びながら交流までできるという、あまり聞いたことがない取り組みだと感じました。
どのようにして生まれたのか、プロジェクトの始まりから教えてください。



稲原
まず私は、ハードとソフトの両面から、入居テナントのワーカーのパフォーマンスが最大化できるような商品企画を手掛けています。


稲原
コロナ禍で世の中の働き方が大きく変化する中で、テナントのお悩みごとも多様化してきました。だったら、森ビルという組織の中にそういったお悩みごとに対応できるチームがあった方がいいのではないか?
そう思って、6〜7人で「MORIワークスタイルラボ」の母体となるチームをつくったのがきっかけです。メンバーは全員兼務で、複数部署のメンバーから構成される部門横断のチームです。
稲原さんが集めたメンバーで始まったんですね!
蓮池さんは、そんなお誘いで参加されたんですか?


蓮池
そうですね。もしかしたら、「いろいろやりたいことがありそうな社員がいるぞ?」と稲原さんから思われていたのかもしれません……(笑)。
私は普段、オフィス事業部でテナントの窓口担当をしています。契約や困りごとについてのコミュニケーションをとる仕事ですね。


蓮池
でも、「それだけでいいのか? もっと『森ビルに入居してよかった』と思っていただけるサービスはできないのか?」と、考えるようになっていったんです。
そんな時に、稲原さんに声をかけられたんです。「僕らは、もっと森ビルのオフィスだからこそ提供できることがあるのでは」と訴えると、「いいね」と言っていただいて。
悶々と考えるだけの時間から、行動へ移せる場をつくっていただけてありがたかったです。
ベストタイミングだったんですね。


稲原
そもそも森ビルは社員がテナントにしっかり伴走し、一緒にお困りごとを解決する体制を築いてきた会社です。
せっかく森ビルを選んで入居いただいたわけですから、その価値を最大化するお手伝いをしたい。その想いから、テナントの課題に合わせたセミナーなどを企画してみたのですが、それだけでは、課題の解決にはならない気がして……。
それで、セミナーなどの単発のイベントではなく、企業同士が交流しながら課題解決につなげる連続プロジェクトはできないか? と考えるようになりました。
連続プロジェクトですか?


稲原
単発のセミナーで「これが最先端な働き方ですよ」「〇〇すると働く人にメリットがあります」といった答えを渡すのではなく、もっと「どうしたらよりよい働き方ができるか?」と問い続けていける場所が必要だと考えるようになりました。

蓮池
これまでも入居されている方々の働き方やオフィスに関するレポートを作成し、お配りしていたんです。
とくに喜ばれたのが、他社のオフィスづくりの事例紹介でした。総務や人事のご担当者にとって、他社の事例は知りたいけれど、なかなか知る機会がなかったようです。
幅広いテナントの事例を知っている森ビルがハブになれば、業種に囚われず横のつながりをつくることができるかもしれない。そうしたら、テナント同士で新たな共創がうまれ、よりよい働き方や空間が生み出せるのではないか?
そんなふうに「MORIワークスタイルラボ」の枠組みが決まっていきました。
共通認識は「やってみないとわからない」
「MORIワークスタイルラボ」をWORK MILLチームと共に企画・運営をすることになった経緯も改めて教えてください。


稲原
単発セミナーを積み上げただけでは、きっと満足できるクオリティには持っていけないな、と感じていました。なにか、カリキュラムのようなものが必要だと思ったんです。
そこで、ワークプレイスに知見があり、カリキュラムがつくれるような内部組織を持っている会社を探したときにオカムラさんを思い出し、営業担当の方にご相談して、WORK MILLの皆さんをつないでいただいたんです。

岡本
ありがとうございます。このご相談をいただいた時、森ビルさんの熱意に感化されましたね。
それに、私たちWORK MILLがこれまで10年以上にわたって「日本の働き方をよくしたい」と続けてきたことで何か貢献できるんじゃないか、と。


岡本
すぐに「絶対、メンバーみんなのいい経験になるから思いっきりやろう!」と決めました。それで、すぐにWORK MILLメンバーに声をかけて、特別チームをつくりましたね(笑)。
私はどちらかというと広げていくタイプなのですが、同じ部署の六車さんは畳んでくれるタイプ。私と特に相性抜群で……。すぐに声をかけました。

六車
私たちがチームをつくったあと、まず両社でワークショップを行いましたよね。
お互いに「MORIワークスタイルラボで果たしたいことは何か?」を、腹を割って語り合ったんです。


岡本
ワークショップは1回あたり3時間くらいかけていて、全部で2回実施していて。
1回目はパーパスモデルを使ってお互いの思惑や達成したいことの重なりを確認しあって、2回目に「MORIワークスタイルラボ」で扱うテーマを決めていきました。

稲原
前例のない取り組みだからこそ、これだけの時間をかけていかないとつくれなかったとも感じます。
テナント同士で「働き方を探求し続ける場」にしたいというゴールは決まっていても、どんな内容、どんなテーマにしていくかは不明瞭だったので、WORK MILLの皆さんはすごく大きな助けになりました。

蓮池
懐かしいですね。
始まったばかりのころは噛み合わない時もあったように記憶しているのですが……、ワークショップ以降はまとまっていきました。
チームビルディングの面でも、重要な時間になっていたんだなと思います。

岡本
私たちもどのように「MORIワークスタイルラボ」を創り上げていくか、イメージが持てていなかったので、ワークショップを通じて解像度を上げてもらった感覚があります。

稲原
やりながら変えていった部分もたくさんあったので、常に「やってみないとわからない」という気持ちで取り組んでいましたね。

岡本
最初から、稲原さんが「答えを出すことがゴールじゃない」とおっしゃっていたのが、私たちのやりがいにもつながっていました。
最初から正解を決めて突き進んでいく方が、正直ラクではあるんですよ。でも、ここは“ラボ(実験室)”。
だから、プロジェクトの間も「ずっと探し続けていこう」という姿勢は私たちも勉強になりましたし、振り返ってみてこの進め方でよかったと感じています。
働き方のHOW論よりも、一丁目一番地の「企業文化」を探求する
そして、2回のワークショップを経て、「企業文化」というテーマが決まったんですね。選んだ理由についても教えてください。



蓮池
絶対に各社共通で終わりがないテーマだったから、というのが一番の理由です。
ラボが始まる前に、どんな情報を知りたいかテナントさまにヒアリングしたところ、「座席の作り方や空調費の抑え方などの具体的な話が聞きたい」という具体施策に関する意見もあったんです。しかし、そこに焦点を当ててしまうと、興味がある企業とない企業が出てきてしまう。
そこで、会社の一丁目一番地である「企業文化」をテーマにすることに決めました。

2025年6月から始まった、初年度を振り返ってみていかがですか?


稲原
2月に行った最終報告会がものすごくよくて。
漠然と「こうなったらいいな」と予想していたことが、そのまま再現されて、本当に嬉しかったですね。


稲原
やはり、参加してくれたメンバーの皆さんのレベルがすごく高かったんだな、と改めて感じられました。

蓮池
実は、各社に「エース社員2名のご参加をお願いします」「毎月2時間で、欠席はしないでほしい」とお願いしていました。実際のところ、エース級の社員のリソースを毎月2時間あけるって、企業としては「しんどかった」と思うんです……。
だからこそ学びの質はもちろん負荷のかけ方には、かなり気を配りました。宿題は基本なしで、参加時間内でなにか価値を持ち帰ってもらいたいな、と。

六車
報告会の盛り上がり、素晴らしかったですね。
発表の内容に多様なアイデアが混ざっていたことが個人的には刺さりました。
こういう成果が出たのは違う会社メンバー同士で考えを共有しあう「グループディスカッション」の時間がしっかりあったからではないかな、と思っているんです。まさに共創が生まれていく様子を目の当たりにしたように思います。


岡本
自社の企業文化って、社内メンバーだけで考えていても言語化しきれない部分がたくさんあると思うんです。
でも、ラボで他の企業で働く参加者との対話によって違いが見えてくる。それで、自分たちが持っている企業文化の輪郭に気づくことができたのではないかな、と思っています。
そのせいか、スタート時期と比べて「自信」を持っている人が多くなった気がしませんか?

六車
わかります! 横のつながりが強固になったことも影響しているのではないかな、と。
10社がひとつのチームになっている感じがあったので、報告会も堅苦しくなく、笑顔でカジュアルな雰囲気でしたよね。緊張している人が少なかった気がします。

岡本
ぶっちゃけ話も飛び出したり……(笑)。
それぞれの参加者が生の声で発表している雰囲気も、すごくよかったと思いました。
実はラボというより道場? 自己開示が豊かな共創を育む

稲原
そういえば、もともと「このプロジェクト名は道場にしようか」なんて意見もあったよね……(笑)。


岡本
ありましたね!
考え方としては、一番しっくりきていたのが道場でしたよね。

稲原
心持ちとしては道場なんだけど、さすがに渋いかな……ということで、最終的にラボに落ち着いた感じでしたよね。

六車
そうですね。私たちのワークショップでも「研究する」というより、「ここで共創していく中で一人ひとりがスキルアップしていくこと」を話していました。
名前は「ラボ」でも、道場の感覚はしっかり参加者の皆さんにも伝わっていたと、報告会の雰囲気を見て感じましたよ!
お話を聞いていると、本当に「三方よし」のプロジェクトだなと感じているのですが、その秘訣はどこにあるのでしょうか?


稲原
振り返ってみると、会社と仕事するのではなく、その中にいる“人”と仕事するという考え方をしているのが大きいかもしれませんね。
もともと全幅の信頼がないと任せられないプロジェクトでしたから、一緒に仕事をする前に「この人と心中できるか?」としっかり考えたんですよ。
その点、WORK MILLチームのみなさんと接する中で、「これは信頼できる相手だ」と感じられたので、そこがうまくいった理由だったかもしれませんね。
ちなみに、どのあたりで「信頼できそう」と感じてくださったのでしょうか?


稲原
しっかりと自己開示してくれたことじゃないでしょうか。ワークショップもそうでしたし、打ち合わせ後のちょっとした会話でも、思っていることをきちんと率直に伝えてくださる。
今ではよく飲みに行きますし、プライベートのことでもほとんど知らないことがないんじゃないかというくらい仲良しですよ(笑)。
これからも一緒に、道場こと「MORIワークスタイルラボ」を続けていきたいですね。

岡本
嬉しいです! ぜひ!
今後、どんなラボに育てていきたいですか?


稲原
参加メンバーの対象者は変えていってもいいと思うんです。
たとえば、より多くの学びを得ていただくという観点では、若手のメンバーを対象としてもいいと思います。

岡本
ラボのOB・OGを集めたアルムナイ会があってもいいかもしれませんよね。
本ラボとアルムナイ会が同時に走りつつ、テナントさまも事務局に入り込んでくるような構図になると、より森ビルさんらしい活動として根付いていくのではないでしょうか?

蓮池
僕たちがいないところでも、テナントさま同士で「ランチしよう」とか「3社で新しいプロジェクトを動かそう」のように、大小問わず新しい共創がうまれていくといいですよね。

六車
そうですよね。テナント内の縦・横・斜めで多様なつながりができるきっかけが「MORIワークスタイルラボ」にある、そんな形が理想かもしれませんね。
ラボを続けていくことはもちろんですが、共創が自然と生まれていくように働きかけていく。「森ビルに入ると、知り合いがいっぱいできる」なんて思ってくださる企業さんが増えていったら私たちも嬉しいです。

稲原
よし、また決めていきましょう!

WORK MILLでは、本記事のように空間設計を含めた共創活動のお手伝いもしています。共創の進め方に迷いがある方は、ぜひ一度お問い合わせください。
2026年2月取材
取材・執筆=つるたちかこ
写真=篠原豪太
編集=鬼頭佳代/ノオト


