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足元も楽にして働きたい! ハイブリッドワーカーが久しぶりにビジネスシューズを選ぶコツは?

長期化するコロナ禍。出社とリモートワークを融合させた「ハイブリッドワーク」を取り入れる企業も少しずつ増えてきています。

外出機会が増え、以前履いていた靴に足を通すとなんとなく違和感を覚える……なんて人もいるのでは? そこで、今回はシューフィッターの木村克敏さんに、ハイブリッドワーカー向けに、昨今のビジネスシューズのニーズ変化と靴選びのコツを教えてもらいました。

木村 克敏(きむら・かつとし)
一般社団法人足と靴と健康協議会事務局長、日本靴医学会会員、日本整形靴技術協会理事、FHA認定上級シューフィッター(バチェラーオブシューフィッティング)。1988年、婦人靴専門店を全国展開する株式会社かねまつに入社。ショップ店長、オーダーサロンマネージャー、銀座本店副支配人などを歴任。コールハーンジャパンへ転職後、メンズ、ウィメンズシューズの日本向け商品開発のアドバイザーを務める。現在は、シューフィッター養成講座の運営、講演活動などを行っている。

コロナ禍で広がる「ゆったり」へのニーズが靴にも影響

コロナ禍の約3年で、働く人の靴のニーズに変化はありましたか?

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木村

一番の変化は、「ゆったりと靴を履きたい」というニーズが高まったことです。特にオフィスワーカーは、リモートワークによって外出機会が減りました。それにより、これまでの働き方を見直すとともに、「自分にとっての心地良さ」「いかに快適に過ごすか」を追及する人が増えたと思います。

その結果、靴にも見た目のおしゃれさだけではなく、ゆったりと過ごせる履き心地が求められるようになったと感じています。

従来のような、かっちりしたビジネスシューズは敬遠されがちということでしょうか?

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木村

はい、そう思います。

もともとこの10年ほど、ライフスタイルはカジュアル化の一途をたどっていたんです。ビジネスシューズも履きやすさなどの機能性の高いものが求められるようになっていました。コロナ禍でその傾向が強まったと思います。

そう言われてみると、多くの企業ではすでに「オフィスカジュアル」が浸透していますよね。

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木村

人間、楽をしてしまうと、なかなか元には戻れませんからね。とはいえ、サイズにゆとりがありすぎる靴は、靴ズレや爪のトラブル、長く履き続けると外反母趾などを引き起こす可能性があり、足の健康にはよくありません。

あくまでも、履き心地がいいけれど、サイズがあった靴をきちんと履くのが大切です。

また、ビジネスシーンにふさわしい靴のスタイルやデザインに大きな変化はありません。

そうしたニーズに応えるように、「見た目はエレガントだけれども、実はすごく履きやすい機能的なビジネスシューズ」が色々なメーカーから発売されています。

体重2キロの増減で足のサイズも変化?

出社のために週5回ビジネスシューズを履いていた頃と比べると、ハイブリットワークではビジネスシューズを履く機会が減ると思います。そのワークスタイルの変化を踏まえた「靴選びのポイント」を教えてください。

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木村

久しぶりにビジネスシューズを買う場合、まずは足の現状を知ることが大切です。

百貨店の靴売り場などにいるシューフィッターに測定してもらったり、靴の専門店にある足の三次元計測器を使ったりして、足の変化をモニタリングしてみましょう。

健康診断のように、足も半年から1年に1回程度は、定期的に測定してもらいたいです。

お店で試し履きをするとしても、サイズを確認するだけの人が多いと思いますが、そうではなく、しっかりと測定してもらうということですよね?

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木村

はい。視力を測らずにメガネは作りませんよね? 靴も健康を左右する大事なアイテムなので、正確なサイズを定期的に測定するべきです。

リモートワークで体重に変化があった人もいらっしゃるでしょう。一般的に体重の増減が±2kgあると、足の周りのサイズにも変化が現れると言われているんです。

それに、座っている時間が長いと血液循環が悪化し、足がむくみやすくなり、履き心地も変わってしまう。そのため、可能であれば、かかりつけのお医者さんのように自分の足の特徴を継続的に把握してくれているお店で購入すると良いと思います。

なるほど……! 特に久しぶりに靴を買い直したいと考えている人は、しっかり測定した上でフィットする靴を選ぶと良さそうですね。

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木村

おっしゃる通りです。

これまで履いていた靴に足を通したときに、窮屈に感じたり、何らかの違和感があったりしたら、足のかたちが変化している証拠ですから。

靴は「官能」で選ぶ。ぴったりな一足を見つけるための「履き比べ」のススメ

「ぴったりの靴」というのは、自分が履いた感覚で判断して良いのでしょうか?

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木村

はい。靴は「官能の履物」ですから、測定したデータは踏まえつつ、履いた感覚を大事にしてほしいです。

足に合っているサイズが大前提ですが、特に気にしてほしいのは、
・歩いてみて、かかとがパカパカと抜けない
・足の指を動かせる
・違和感なく履いて歩ける
・靴を重く感じない
ことです。

実際のところ、シューフィッターである私が「見てこれでバッチリだ」と思う一足を選んでご本人に履いてもらっても、履きにくいとおっしゃるケースは少なくありません。

客観的にはどう見てもフィットしているので不思議なのですが、やはりご自身しか分からない感覚があります。

「なんだかしっくりこないな」と感じた靴は避けた方が良さそうですね。

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木村

そうですね。ジャストフィットした靴は、少し履いただけで歩きやすさが格段に違います。

既製品の靴のサイズは、24cmの次は24.5cmというように、5mm単位で作られています。ところが、サイズが2mm違うだけで履き心地に差が出るんです。そのため、お店では実際に使う靴下やストッキングを履いた状態で試しましょう。

それから、もし販売員に「しばらく履けば馴染みますよ」と言われても、鵜呑みにしないように。足を通したときの違和感は、なかなか消えませんから。

加えて言うと、特に革靴は個体差があるので、お店にある在庫を履き比べて、気に入ったものを購入することをおすすめします。

なるほど。ちなみに、オンラインで靴を買いたい人は、利用する際にどういうことに気をつければいいのでしょうか?

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木村

正直なところ、試し履きをせずに購入するのは賭けのようなものですよね。強いて言えば、足に合わなかった場合を想定して、返品制度があるオンラインショップで購入することが望ましいです。

あと、S・M・Lのように大まかなサイズ展開の靴は、なるべく避けたほうが良いですね。

悩んだらシューフィッターを頼って。ワークスタイルに合わせた靴選びを

ハイブリッドワークでは、家にいる時間も出社と同じくらい長くなります。となると、外履きだけではなく自宅で過ごすときのルームシューズも、きちんとしたものを用意した方が良いのでしょうか。

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木村

TPOや場所ごとに適した靴を履くことが、足に良いのは確かです。ほとんどの人は家では裸足や靴下、スリッパなどで過ごしていると思いますが、可能であればルームシューズも用意されると良いですね。

特に、足にトラブルを抱えている場合、足をしっかり支える靴を履いていないと疲れやすさの原因につながってしまいかねません。

ハイブリッドワークにあたり、靴をトータルで選びたいときには、どうすれば良いでしょうか?

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木村

シューフィッターは、ビジネスシューズだけではなく、ルームシューズなどを含めてTPOに合わせた靴を選んでくれます。ハイブリッドワークになったタイミングで足を測定し、ワークスタイルや悩みを伝えた上でトータルコーディネートを依頼してみてもいいでしょう。

木村

ハイブリッドワークになって、久しぶりにオフィスに出社したらどっと疲れた、という人もいるかもしれません。外を歩く機会の減少に比例して、足の筋力も衰えますから。

ぜひ、ぴったりサイズの靴を履いて、快適な気分で歩く量を増やしてみてくださいね。

履き心地がいい靴を手に入れたら、歩きたくなりそうですね!

靴はファッション感覚で選びがちですが、足の現状を踏まえて選ぶことが大事だとよく理解できました。まずは、今の自分の足のサイズを測定してみたいと思います!

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2022年7月取材

取材・執筆=末吉陽子
編集=鬼頭佳代/ノオト