熱狂をアフター万博にどうつなぐ? 大阪をアイデアシティにする方策を探ったカンファレンスをレポート
各国の文化や英知、アイデアが集結する世界的イベント「大阪・関西万博」が開催され、会場の夢洲は大勢の人でにぎわいました。そんな万博も2025年10月13日をもって閉幕しました。
当初は親しみにくい印象を抱いていた人も多く「万博って、結局何をやっているの?」という声があったのも事実です。しかし、SNSでの発信などをきっかけに、その見どころや盛り上がりは広く知れ渡るところとなり、会場には連日、国内外から多くの人が押し寄せました。
会場の外でも、たくさんの共創を生んだ今回の万博。新しいプロジェクトに取り組んだり、これまでの活動の価値を見直したりと、企業やプレーヤーの活躍の舞台は多岐にわたります。
本連載では、大阪・関西万博に同調するように「勝手に」生み出されたムーブメントに着目し、その仕掛け人たちの胸の内を取材していきます。

「大阪・関西万博」は2025年10月13日に閉幕しました。その瞬間、大阪は「2度の登録博覧会(以下、登録博)を経験した都市」として新たなフェーズに突入しました。
閉幕まで1か月を切った9月16日、中央公会堂で開かれたアフター万博アイデア会議「demo!play NOODLE」には、行政や企業、クリエイターなど多様なプレーヤーが集結。万博が始まる前から関西を中心に社会実験やイベントを仕掛けてきた、一般社団法人demoexpo(以下、demo!expo)の呼びかけに応じ、万博のあとの大阪をどのような街にしていくべきか話し合いました。
活動領域や国籍を超え、湯気を立てる“NOODLE”のように熱を帯びた議論を振り返ります。
※本取材は大阪・関西万博の開催期間中に実施しました。本文の発言や言い回しは、取材当時のものをそのまま掲載しています。

オープニングは上方落語。笑いで頭をほぐし、アフター万博を考える

カンファレンスの全体テーマは「大阪を世界に誇れるアイデアシティへ」。8つのセッションが展開され、登壇者らの活動実績を紹介しながら、未来への提言を示す形で進行していきました。
約7時間にわたるカンファレンスの幕開けを飾ったのは、大阪府豊中市出身の落語家・桂九ノ一さん。イベント名になぞらえ「せっかくなので麺の噺を」と、上方落語を代表する演目のひとつ『時うどん』を披露し、会場の空気を温めます。

オープニングセッションには、demo!expo 代表理事で広告制作会社「株式会社人間」プロデューサーの花岡さん、大阪商工会議所(以下、大商)理事の玉川弘子さん、株式会社E-DESIGN 代表取締役の忽那裕樹さんが登場しました。テーマは、「万博の熱狂を“まちの当たり前”に——共創DNAインストール宣言」。
3人は、demo!expoと大商などが中心となり設立した「⼤阪まちごと万博共創プラットフォーム」の活動や、大阪で万博を盛り上げる活動を実現できた背景、そして万博後の大阪のあるべき姿について議論しました。
花岡さんは、万博誘致の時期から自主的に取り組んできた制作活動やdemo!expoの運営を振り返り「『でも、やろう!』という気持ちで乗り越えた。先輩方の経験と、30〜40代の推進力を掛け合わせ、文化と経済の断絶を克服したい」と展望を語りました。
さらに忽那さんは、自身が携わった都市活性化プログラム「水都大阪」や、このたび保存されることが明らかになった夢洲の「静けさの森」などに触れ、「チャレンジを生み出せる土壌が、都市を活性化し長持ちさせる一番のポイント。まず『やって見せる!』ことをすれば、物事も動く」と指摘し、共創の場づくりを応援。
玉川さんは、大商の鳥井信吾会頭の言葉を借りつつ「今後も『やってみなはれ』の精神で、大阪を舞台にした活動を支援したい」と決意を示しました。

「やってみなはれ」の精神で、大阪らしさを後押ししていく

「大阪では2度の万博を機に共創が加速してきた」と話す玉川さん。官民の枠組みを超えて生まれたダイナミクスは、どうすれば残していけるのか詳しくうかがいました。
大商は、万博会場での展示における企業×企業のコラボレーションと、「まちごと万博」を通じた多様な共創を支援。異なるレイヤーでサポート役を担ったと振り返り、「これまで交わらなかった人や組織がひとつになれた意義は大きい」と強調します。
ただ、この動きを止めないためには、登録博のような大規模なイベントに頼るだけではなく、意識的な取り組みも必要だといいます。「『大阪のまちっていつも何か面白いことをやってるよね』とイメージしてもらえるように、小規模でもプロジェクトを継続的に仕掛けていくことで、人々の熱が冷めてしまうのは防げます」。
では、アフター万博の旗振り役は誰が務めるべきか——そうした問いに玉川さんは「特定の誰かがリーダーシップを発揮すれば上手くいく、という時代ではない」とした上で「大商は、行政トップや経済団体のトップをはじめ、幅広いコネクションとネットワークを持っています。これにロジックを掛け合わせることで、普段交わらない人をつなげることも可能。『やってみなはれ!』とプレーヤーを強力に後押ししていきたい」と語りました。
EXPO酒場のレガシーとは? タイ・チェンマイの事例との比較で学ぶ

オープニングが終わり本セッションがスタート。最初は「EXPO酒場」を題材とし、万博開催前から蓄積したレガシーを大阪に根付かせる方法を探りました。スピーカーは、クリエイティブ・エコノミー・エージェンシー・チェンマイ(CEAチェンマイ)のディレクター、イムハタイ・クンジナさん。そして、「JR西日本SC開発株式会社」でショッピングセンター事業などに携わる傍ら、EXPO酒場プロデューサーを務める出口清史さんです。
イムハタイさんは、チェンマイ・デザイン・ウィークなどのイベントを通じて地元のクリエイターを支援しています。タイ第2の都市であるチェンマイを国際的なクリエイティブ都市にするべく実施している事例を交え、ボトムアップの熱量と、目標を明確にすることの重要性を強調。「ボトムアップで何かを始める際には、大きな目標を持つべきだが、小さな目標(Small Goal)も重要」といいます。
出口さんは、EXPO酒場の実績を紹介。大阪・関西万博に興味がある人々が語らうイベントとして始まったプロジェクトが、万博期間中はキタ(LUCUA大阪)とミナミ(心斎橋PARCO)、ふたつの常設店を開くに至った経緯を振り返りました。
その上で、イムハタイさんの活動との共通点を見出しながら「EXPO酒場は『公共空間を開く』『頼まれていないのに勝手にやるボトムアップ型』『街をつなげる』という3つの要素が功を奏した。キタとミナミをつないだことで、人も文化も循環し始めた」と回顧。 イムハタイさんは「一人ひとりにとって『自分自身のために』と自分ごとになれば、街は魅力的になる。その積み重ねがより良い都市をつくる」と市民を巻き込むコツを説きました。
大阪のナイトタイムエコノミーのポテンシャルを、世界目線で考える

続いては、ナイトタイムエコノミー(以下、NTE)がテーマ。NTEとは、夜間の経済活動を指す言葉で、アートやエンターテインメントなどさまざまな活動を通じて、地域の魅力を発信し、消費拡大などにつなげる考え方です。ゲストスピーカーのルッツ・ライシェリングさんは、NTEに関する調査・助言を行うコンサルティング会社「VibeLab」の共同設立者で、持続可能なナイトライフカルチャーの促進に向けた活動で広く知られています。
ルッツさんは「ナイトライフの中心は、アルコールではなく文化であるべき」とし、NTEの充実に必要な6段階のフレームワーク(インスピレーション、ビジョン、アセスメント、ガバナンス、アクションプラン、教育)を解説。「Vibe(雰囲気)はお金で買えるものではなく、創造的なコミュニティと手頃なスペースが必要」と課題を示しました。
観光や文化に関するコンサルティング事業などを展開する「ORIGINAL Inc.」代表取締役でシティガイド「Time Out Tokyo(タイムアウト東京)」代表でもある伏谷博之さんは、日本人の「夜」のイメージは、バブル時代のノスタルジーに引きずられがちと指摘。「NTEの充実は、人生の選択肢を増やすことにもつながる。ライトアップやプロジェクションで終わらせず、包摂の仕組みにまで踏み込むべき」と強調しました。
ふたりの提言に対し、公益財団法人大阪観光局 理事長の溝畑宏さんは「私が最も危機感を持っているのは人材不足。大阪は多様性、共生、ダイバーシティを重視し、包容力を持つ都市にならなければ、アジアのハブにはなれない」と応えます。夜間の労働者の賃金、社会的地位の向上の必要性も訴えました。
ルッツさんは、夜の大阪を体験したといい「大阪には、他者にオープンで歓迎的なアイデンティティがある。独自のナイトライフが開花するポテンシャルが感じられた」とエールを送りました。

大阪をもっと創造的なまちに! 公共空間を“使い倒し”て社会実験を誘発するには

次のセッションのテーマは「なんば広場から御堂筋へ:ふざけられる特区のつくり方」。「なんば広場」や御堂筋など公共空間を活用し、既存のルールを超えた「ふざけられる特区」をどうつくるか議論しました。カナダのケベック州モントリオール市にある文化地区「Quartier des spectacles(カルティエ・デ・スペクタクル)」(以下、QDS)を成功事例として取り上げ、クリエイター主導の活動が、規制や行政の壁を乗り越え、都市を創造的に変えるプロセスを共有しました。
QDSは約1平方キロメートルに80の会場を集約した文化地区。年間を通して、複数の施設や公共空間でフェスティバルやコンサート、アート展示やパフォーマンスなどが展開されています。文化活動や公共空間の楽しみを支える新たなインフラ整備に加え、文化・芸術的価値を持つ歴史的建築物の保全も進められています。セッションにはQDSを運営する非営利団体「QDS international」のシニアアドバイザー、ジャクリーン・ウェストさんが登場。QDSでは、年間1000以上のイベント、50回以上のフェスティバルが開催されているといい「この地区は単なる会場群ではなく“公共のプラットフォーム”。文化プログラムを無料にし、開放することが最大の特徴」と強調しました。
再び登壇した忽那裕樹さんは、なんば広場の整備に際し、関係者との調整に苦労したと吐露。官民を超えたQDSに強く興味を示しながら「日本の警察は厳しいと思います。だからこそ『先にやってしまう』がキーワード。制度を変えるためにも、まずはやってみて、問題がないと示すことが必要」と、国内実施のポイントを説きました。
なんば広場の運営・管理団体の一員である「南海電気鉄道株式会社」でエリアプロデュースを担当する寺田成さんは「鉄道会社は街づくりの司令塔ではなく黒子。ソフトからのまちづくりが大事だと考えている。感度の高いアーティストを呼び込み、広場の魅力を底上げしていく」と展望を語りました。
関係者を対話で結び、地域に対する住民の愛着を育むことが成功のカギ

「万博を通じて、大阪には人を集めるパワーがあると証明された。市民が公共空間を使い倒す覚悟を持てば“ふざけられる特区”は実現できる」と壇上で語ったジャクリーンさん。QDSの学びを大阪で最大限活用するためのポイントとは何なのか、整理してもらいました。
安全性や経済的側面だけでなく、文化的・社会的な側面に焦点を当て、「ローカルの人たちがどうすれば楽しめるか」を考えることは不可欠だといいます。「住民がその地域を好きになれば、美観を保ったり盛り上げたりする動きが活発になります。私たちは、住民との対話から『朝はコーヒーを楽しみたい、夕方はジャズを聴きたい』といった時間帯ごとのニーズも把握し、共に楽しめるプログラムを設計しました」。
一方、行政や権利者との合意形成においては、信頼関係と柔軟性をキーワードとして挙げます。例えば、年間・月間という単位や既存の枠組みにとらわれず「半年間の試行期間を設けさせて」などのアプローチをすることも有効で、その期間でデータを取ってレポートを提出し、信用を得ることも可能だと説きました。
「大学や研究者と連携することで、アートやカルチャーがもたらす幸福度なども統計データとして定量化できる。クリエイターの『やりたい』という気持ちを、観光客や投資家が『応援したい』と思えるような仕組みに変換することが必要。そうすれば、表現活動が都市設計や経済と効果的につながり、みんなが価値を共有できる空間をつくることが可能になります」。
万博の学びをまちに落とし込み、世界につながる都市にするには?

セッションは後半に突入。ここでは、大阪を世界とつながる「実験場」にするべく、次世代の都市標準について議論。場づくり、技術、そしてエンタメという3人のスペシャリストが、技術によるつながりの創造や、万博で生まれた気づきや共創を街にどう落とし込むか話し合いました。
ゲストは、カナダのモントリオールを拠点とするクリエイティブスタジオ「Mirari」の共同創業者でクリエイティブディレクターのトーマス・ペイエットさん。光・音・動きの仕掛けを得意とし、大阪・関西万博ではカナダ館のクリエイティブディレクターも務めています。
「テクノロジーは物語をつむぎ、感情を伝えるためのツール。人々が集まる空間をつくる手段であって、目的ではない」とトーマスさん。自身が手がけたプロジェクトを紹介し「理想は、参加者にとって技術が“見えない”こと。自然なパフォーマンスを体験したときに、『意味』が残る」と持論を展開しました。
大阪・関西万博の催事企画プロデューサーを務める小橋賢児さんは、俳優業を経て企画運営側に転向した経歴にも触れながら「エンタメを通じて非日常空間をつくることで、『全人類が自分自身の人生をつくるクリエイター』という未来を目指している。万博は、気づきを生む触媒。気づきからアイデアが湧き上がり、行動することで街を変えることができる」と応えます。
「阪急阪神不動産株式会社」の執行役員で、「グラングリーン大阪」をはじめとした梅田エリアのまちづくりに携わる谷口丹彦さんが「今後の日本は、グローバルなクリエイティブ・プレイグラウンドを構築していくべき。カナダパビリオンの技術のように、夜間の梅田全体をARで演出したい」と構想を明かすと、トーマスさんは「未来の都市は発見し、遊び、驚く場所」と同調して締めくくりました。

最大限の「おもろい」を追求する、大阪ならではのクリエイティブとは

続いてのセッションは「30分で掴む世界の訪日トレンドリサーチ」。万博期間も多くの外国人が大阪を訪れたことから、すぐに実施可能かつ具体的なインバウンド戦略について解説しました。
「株式会社サイバーエージェント」インバウンド消費行動研究室の三木ひなたさんは、アジアの若年層の、日本での行動様式を紹介。訪日客のニーズは、爆買いに象徴される消費型の観光から変容を遂げているといい「アジアを一括りに見るのではなく、国別のインサイト(潜在的な欲求)を理解し、サービスを最適化することが必要」と論じました。
欧米豪の訪日客については、「株式会社大阪メトロ アドエラ」で、ローカルイマーシブ観光「Osaka JOINER」などを担当する吉田瑛仁さんが解説。「大阪のソフト面の特徴——コミュニケーションのウェットさ、インタラクティブさは、訪日客のみなさんにとっても魅力的。日本人は英語が苦手だと知っているので、積極的にコミュニケーションをとれば喜んでくれる」と話しました。
オープン・声・怒り……? キーワードを手がかりに大阪ブランドを考えてみた

最後のセッションでは、ベトナムのブランディング会社「Rice」の共同創業者でクリエイティブディレクターのジョシュ・ブライデンバッハさんを招き、「大阪らしいクリエイティブとは」という議題で、大阪ブランドの言語化を試みました。
ジョシュさんは、Appleやユニクロなどのグローバルブランドがベトナム国内で展開する際のローカライズ(言語や習慣などに適合させること)を担当。国内発のブランドも多数手がけており、プロダクトの背景にある文化を汲み取ったクリエイティブを得意としています。
迎えるは、大阪を拠点とするクリエイティブユニット「graf」の代表でクリエイティブディレクターの服部滋樹さんと、demo!expo理事で株式会社人間のアイデアマン、山根シボルさん。服部さんは「grafはデザインするだけでなく、“仕事をつくってきた”チーム。プロジェクト→プログラム→ムーブメント→カルチャーの流れで活動を展開している」と自己紹介。山根さんは、万博を機に多数のお菓子屋と共創した新しい羊羹「大阪ええYOKAN」などの活動で、「大阪らしさ」に考えをめぐらせてきたと振り返りました。
大阪は初訪問というジョシュさんですが、夢洲の大屋根リングをはじめ、大阪にまつわる多数のデザインが「O」をモチーフにしていると発見したといい、さらに各国から人が集まるという受容性の高さなどを踏まえ「Osaka is OPEN」というタグラインを提案。サプライズのプレゼンテーションで、聴衆の関心を惹きました。
セッションはこのタグラインを軸に展開していき、「OPENをどう分解してクリエイティブに落とし込むか」という議論に発展しました。服部さんはジョシュさんの手法に触れ「数量で測れない、小さな声を見逃さないことが、愛されるブランドづくりには重要」と分析。山根さんは「現状への不満や怒りをエネルギーに変えることで、素直で力のあるクリエイティブができあがる」と提言し、議論は熱を帯びたまま、惜しまれつつ終了の時間となりました。
万博誘致のキーマンたちが見据えるアフター万博

長い一日を締めくくるクロージングトークは、大阪・関西万博の誘致から関わってきた2人が登壇。「パノラマティクス」主宰で、大阪・関西万博 EXPO共創プログラムディレクターの齋藤精一さん、demo!expo副代表の今村治世さんが、万博関連の活動や社会現象を振り返り、大阪で培われた知見を次世代や今後の万博へどうつないでいくか語り合いました。
2015年ミラノ万博 日本館シアターコンテンツディレクター、2020年ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザーを歴任し、今回の万博でも活躍した齋藤さんは、レコードの表と裏になぞらえて「万博にもA面つまり良かった点とB面、生々しい現実がある。記憶に残るのはA面だが、本当に記録に残さないといけないのはB面」と力説します。

開幕前から批判的な声が多かった万博ですが、「マスメディアや広告ではなく、市民が自分の言葉で語りだしたことが転機となった」と齋藤さん。これに対し、「2025年日本国際博覧会協会」に勤務した経験があり、ロゴマーク策定や「TEAM EXPO 2025」の立ち上げなどに従事してきた今村さんも「SNSの力で、万博がどういうものか初めて知った人も多い」と同意しました。
公式・非公式を超え大阪で巻き起こった活動について、齋藤さんは「人にフォーカスし、どういう人たちと、どうやってつくったのか、次の万博にも伝えるべき」と助言。今村さんは「demo!expoとして次の一手は仕込んである。資金は限られるけれど、海外とつながりながら活動を広げていきたい」と応えました。
万博は完成品の展示場ではない。市民の自発的な参加が成否を決める

齋藤さんは今回の万博や、それに呼応して起こった活動をどのように見ているのでしょうか。まずは壇上でも語られた「B面」を深掘りしていきます。
「B面というのは、華やかに開催された裏側にある課題、哲学、反対意見などを指しています。万博への批判や、『行政は万博よりもやるべきことがある』という意見、そして企画の裏側で『何をやろうとして、何ができなかったのか、なぜできなかったのか』をアーカイブして検証することが資産になります」
自身の万博での役割を「クリエイティブとデザインの力を用いて、民間、行政、テクノロジー、アートなど多様な要素を結びつけること」と位置付けつつ、「達成率は15%程度」と厳しい自己評価も。「東京五輪後も、大型プロジェクトは代理店依存体制から脱却できていない」のが現状で、もどかしさを感じることも多かったと話しました。
一方で、今回の万博では市民参加の形がアップデートされたとも分析。「特に大阪では熱量を持った人たちが集まり、自分の活動に落とし込んでいく動きが見られました。『仕事』と『活動』を結びつけるという考え方が世の中を動かす。万博後においても重要な動きです」と注視します。
また、万博そのものへの解釈も更新されつつあるといい「万博は完成品を見せる場ではなく、議論や挑戦が途中経過として立ち現れる空間です。正解を押し付けるのではなく、多様なアクションを並走させることに意味がある」と語り、“万博の捉え直し”こそがレガシーと結論づけました。
万博は終わる。でも——まちでの活動継続を誓い、団結して次のステージへ
スピーカーとファシリテーターで総勢28人が登壇したdemo!play NOODLE。各セッションでは「万博を終えてどうするか」を語るだけでなく、各界のスペシャリストたちが、ときに腕組みし、眉間にしわを寄せながら、今後の大阪のあるべき姿を真剣に考えました。
最後のあいさつに立った花岡さんは「ヌードルは単なる麺ではなく、英語のスラングで脳を意味している。今日はみんなで知恵を絞り出す場になった。今後どう動くべきか、みなさんにもヒントを持ち帰ってもらえるのでは」と充実感をにじませていました。
夢洲が未来社会の実験場ならば、大阪市街は、最短距離・最速でその実証にトライできるフィールドともいえます。「でも、やろう!」の掛け声でイベントは締めくくられました。コミュニティや地域が持つ力を巻き込み、大阪を国際的なアイデアシティに押し上げる試みは、すでに始まっています。
2025年9月取材
取材・執筆:山瀬龍一
撮影:牛久保賢二
編集:人間編集舎/南野義哉(プレスラボ)


