うすきとライフを考えよう 第3回 「産後の仕事復帰で新しい働き方をトライアルする(アクション編)!」
このコラムは「ワークインライフ※1 」を今まさに模索中のWORK MILLの薄(うすき)が、試行錯誤の毎日の中で自分なりに感じたこと考えたことをお伝えしていく連載。子育てに限らず、ライフキャリア・ワークキャリアについても自身の経験をもとにお話ししていきたいと思っています。
第2回にお届けした、産後の仕事復帰プランニング(うすきの場合)に続き、今回はその後プランニングを踏まえ実践したことについてご紹介します。
題して、「産後の仕事復帰で新しい働き方をトライアルする(アクション編)!」です。
※1「ワーク」と「ライフ」という2つの要素を同列に捉えるのではなく、「ライフ(人生)にはさまざまな要素があり、その中のひとつとしてワーク(仕事)がある」という考え方のこと。ライフを構成する要素としては、ワークのほかにファミリー(家族)、ホビー(趣味)、ラーニング(学び)、コミュニティ(組織・地域)などが考えられる。
夫の会社の企業内保育園に入園決定!
10月末に復帰することを決めたあと即保育園探しが始まった(この様子はうすきとライフを考えよう第2回プランニング編参照)。区の保育園は期中には奇跡的な状況でないと入園はほぼ不可能。その中で別の選択肢としてあったのは夫の企業内保育園、区の保育園の一時預かり、ベビーシッター、そして母(高齢のため最終手段。いつもありがとうございます!)であったのは以前書いた通りである。
夫の会社に確認すると、企業内保育園には10月入園のエントリーが早速できるとのことで申し込むものの、うわさでは区の保育園と同様、待機児童が出るかもしれないということを聞く。うーむそうだよね、思うようにいかない、みんな状況は一緒だもんね。なので同時に区の保育園の一時預かり、ベビーシッターも調べに調べる。すると、ベビーシッターは私が居住する区では助成が出ていること(1時間あたりの利用料が通常の半額以下に!)、そして区の保育園の一時預かりは保育園側に余裕がある日は預けることが可能と分かる。
早速ベビーシッターについても助成の登録とベビーシッター会社の選定・面接の予約に進む。復帰に向けて出来る限りの準備をしたものの、ベストな復帰ができるのは企業内保育園に入園できること。もうこうなったらあとは神頼みである(神様、こういうときばかりごめんなさい)。ドキドキしながら待つこと数か月、入園承諾通知を受け取る。やったー!!これでひとまず安心して復帰はできる(その後の大変さは予想以上であったが)、本当に嬉しかったことを覚えている。その後早速具体的な復帰後のプランニングを夫とともに開始する。プランニングの前提としては、私と夫は以下を考えた。
- 子どもがまだ生後4か月と小さいため子どもに無理がかかるのは防ぐ
→無理がかかると子どもが病気になる可能性もあり、子ども、また生活に余計に負担がかかってしまう - 毎日のことなので私・夫ともにギリギリの状況(精神的にも肉体的にも)になると想定される働き方はやめよう
→ここはいろんな考え方があると思うのだが、私たちはまずは自分たちのライフが大切であると立ち返ることにした。自分たちのライフが回らなくなり健康を害してしまったら、ワークどころではなくなってしまう。これは非常に重要で、あとになって実感することだが余裕をもたせたつもりでも、最初の子育ては発生する事象が想定しきれていないためすぐに余裕がなくなってしまうのだ。
それを踏まえた上での細かな働き方は以下である。
- 復帰の10月から翌年3月まで私は時短勤務をしよう。
- 復帰後すぐの10月~12月はまだ子供が小さいので週1出社(週4在宅勤務)で会社に相談してみよう
- 問題が発生しなければ、翌年の1月~3月は週5出社に切り替えよう
- 想定していないなにか特別なことが発生した場合は、子どものことを最優先に意思決定しよう
新しい働き方のトライアル(こちらは前回のうすきとライフを考えよう第2回参照)とこのプランニングを合わせ上司・会社と相談。具体的には、同時期に制度化された在宅勤務制度に則り日数のみ拡大、業務計画書を毎週提出、その上で毎月業務報告書をまとめそれを元に月1回三者面談(自分・上司・人事部)という働き方を当プランニングと合わせ相談したのである。そしてこの形で会社はOKを出してくれ、なんとか実質的な意味での復帰の環境は整ったのである。
ベビーシッターは17人?!
10月下旬、仕事と子育ての日々がついに始まった。週1出社・週4在宅勤務、子どもはまだ小さくそんなに動かないとはいうもののやはり子どもの世話をしながらでは業務はムズカシイ。そこで在宅勤務のときはベビーシッターを頼むことにした。時短の勤務時間は昼食時間を除き6時間。区の補助が4時間単位で出るという観点もあり、そのうち4時間をベビーシッターに来てもらい業務をする。残りの2時間は子どもが寝ている間に柔軟に分散し勤務をしよう。そんなふうにして子どもとの仕事生活が始まった。ベビーシッターを依頼するにしても、子どもがまだ生後4か月と小さいので完全に私がいないところでお世話をしてもらうのは不安…。というわけで別室ではなく、同じリビングで私は業務、子どもはベビーシッターにお世話をしてもらうという形をとった。業務中はもちろん私は世話をするわけではなく業務に集中しているのだが、ふと見ると子ども&ベビーシッターは視界に入るという具合である。
区のベビーシッター利用クーポンには本当に助けてもらった。だが、もちろん利用には年間何時間までといった制限があり、更にこれは利用開始してから分かったのだが、ベビーシッターをこちらで選べないといったデメリットもあった。この点はなかなか困りものであった。うちの場合はタイミングのせいもあるのか、ほぼ毎回違う方に来ていただくことになった。2か月半で来ていただいたベビーシッターは17人!そのため、毎回ほぼ「初めまして」状態でどういう方か分からないので説明をしっかりする必要があり、初めてなのでどういう世話をされる方なのかを気にしておく必要があった。子どもにとって毎回違う方に世話されるってどういうことなんだろう…いいのか?!ということも思った(区のクーポンを使う以上仕方がないのだが)。
結論を言えば、そこは割り切ることにした。まずまだ子供は小さいのでそこまでベビーシッターが毎回違うとは感じていないかもしれない。もし感じていたとしても小さな頃からさまざまな人と交流することで社交性が増すかもしれない(何の実証もされてないですよ!ザ・うすき考えです)と考え割り切った。お互い初めましてということで毎回説明が必要というのは、注意事項をまとめたペーパーを用意し、そちらを見ていただく&簡潔に説明すればよい、そしてこちらが世話の仕方を気にするという点に関しては自分が気にしておけばよい。
実際やってみると想定していないことはいろいろと発生した。まずは勤務時間を1週間でなんとかクリアしたとしても、タスク自体が終わらない、ということ。これはほんとうにきつかった。私の業務の性質上なかなか他の人に渡しにくいというのもあったかもしれない。土日の夫のいるときにまとめて終わらせるようにもしていたものの、毎日寝不足と闘い、子どもの世話と仕事に追われギリギリだったことを覚えている。また、このような時期だからこそ特に私は感じたのかもしれないが、その日に仕上げる超短納期の急な業務の依頼も非常に苦しかった。平日に業務ができる時間に限りがある関係上、急な業務が入ってしまうともうその日寝ないで仕事をするしかなくなる。この点はマネジメントが気にしないといけない点かもしれない。ちなみに、週1日の出社の時は、企業内保育園に預け出社をしていた。この日にリアルですることが必要な1週間分の業務を終わらせることにしていた。
ベビーシッターを依頼するときに私が工夫したこと
- 子供の特徴やお願いしたいことは事前にまとめ、当日のオリエンテーション時に端的につたえられるように準備する
- ベビーシッターの特徴や評価などは事後に記録をしておく(私はエクセルで管理していました)
- お世話の仕方で気になるところは遠慮せずにその場で伝える
- お世話の仕方が危険性を伴う、信頼に欠ける行動をしたなど今後の依頼を避けたい場合は登録会社にしっかり伝える
入園が決まり、泣いた?!
私がなぜ子どもが生後4か月での復帰をしたかというと、業務に早く復帰したかったということと(仕事がとても好きなのだ、たぶん)、1日のうちほとんどが子どもと自分だけの生活でなく社会性をもつことが自分の性格にあっていること、そしてもう1つ、希望の保育園の入園を翌年の4月にできる限り確実になるようポイントを獲得するためという点もあった。
保育園に子どもを入園させている親ならみんな知っているのだが、保育園入園はポイント制になっており、共働き・フルタイム勤務だと獲得できるポイントは何点と決まっている。共働き・フルタイム勤務だとみんな同じラインのスタートなのである。そこからいかにポイントを上乗せできるかで保育園への入りやすさは違ってくる。区によって異なるのだが、私の居住する区では私がその時上乗せできる可能性があったポイントは2点。そのうちの1点の獲得条件が翌年の4月の時点で月単位の勤務が一定時間以上、 それを半年以上継続していることであった。そのため、早期復帰と合わせて私はポイント獲得の鬼?!となっていたのだった。
年が明け、週1日出社(週4日在宅勤務)の働き方を終え、週5日出社の日々が始まった。企業内保育園は家の近所ではなく電車に乗って7駅ほどのところにある。企業内保育園があってこそ安心できる環境での復帰ができたのだが、家の近所ではない場所に保育園があることは毎日の生活の中ではかなりの負担だった。毎日5時半に起き、6時50分に家を出、7時半に預ける。もちろんもう少し後の時間に預けることもできるのだが、通勤電車に巻き込まれるのは子どもが小さいため厳しいし、早めの時間に預けたほうが会社で業務可能な時間も長くなる。そのため必死になって毎日通っていた。時期が冬であったこともあり、なかなかの苦しさであった。
そんな毎日の中のある日、私の居住する区からのお便りが家に届く。ドキドキしながら封を切ると、「入園承諾書」「○○保育園(私たちの第一希望の保育園の名前)」の文字が!!気づいたら、涙を流している自分がいた。自分の高校や大学の合格でも泣いたことがない私なのであるが…わんわん泣いた。これは自分で分析するに、仕事をしながらの子育てという初めてのことに向き合い希望の園の入園獲得に際しできる限りのことをした、やり切ったことに対し、希望の結果が出て嬉しかったという涙。その一方で、自分としてはこれでいい、でも子どもにとってはこれでいいのかと心配しながら、不安になりながらそれでも信じて突き進んだ半年。そして仕事と子育ての中でどちらもできる限り完璧にしたい、でもそれはなかなかできないなかで時に仕事に悩み、時に子育てに悩みながらそれでも必死に過ごした毎日を想い、涙していたのだと思う。
この間(今もだが)夫とは、ともにさまざまなことを乗り越える戦友のような関係だった。私も夫も仕事が大切で、でも子どもも大切で、その中でどうしていくか、本当によく相談したし、時にはぶつかり合いながら、初めてのことに一緒に戸惑い、悩み、考え、私たちはこうしようと一つひとつ決めていった。綱渡りの日々を共によく乗り越えたと思う。でもそれは、会社や上司、メンバー、お互いの家族の支えがあってできたこと。私たちは本当に人と環境に恵まれていたと思っている。
最後に。産後どれくらいで復帰をするかは、これはもう自身のライフの考え方、また体調やその他の状況によるものであると思う。私も子どもの想像以上の愛らしさに、この時期に復帰をすることが自分にとって本当の望みなのかを何度も自身に問い直したこともあった。なので復帰は自分とパートナーのタイミング、そして自身の体調を優先的に考え決めてよいと思う。長いライフキャリアの中で、半年や1年、2年はほんの一瞬なのだから。
次回は最終回。「キャリア」について、少し考えてみたいと思います!お楽しみに。
著者プロフィール
―薄 良子(うすき・りょうこ)
広告コンサルティング営業、研修プログラム企画・開発のプロジェクトマネジメントなどの職歴を経て、2015年にオカムラに入社。社内働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョン推進、社外との共創活動を中心に、組織開発のプロジェクトに従事する。東京外国語大学ペルシア語科卒。筑波大学大学院経営学修士(MBA)。CDAキャリアカウンセラー。
2020年7月30日更新
テキスト:薄 良子(株式会社オカムラ)
トップ写真提供:菅原大介(株式会社ライ)
著者プロフィール写真:藤原 慶