ワンフロアに200人 ー フラットな働き方を実現する建築事務所 ビャルケ・インゲルス・グループ BIG
この記事は、ビジネス誌「WORK MILL with ForbesJAPAN ISSUE04 LOVED COMPANY 愛される会社」(2019/4)からの転載です。
世界にはその国、土地、人々や業種に合わせたさまざまな形態のユニークなワークスペースが存在する。今回はニューヨークの建築事務所「BIG」のオフィスを訪れた。
コペンハーゲンとニューヨークに拠点をもつ建築事務所、ビャルケ・インゲルス・グループ。頭文字を取ってBIGと称されるここは、若くして世界的な活躍をする建築家ビャルケ・インゲルスによって2005年に創設された。デンマークのLEGOオフィスや、世界中のグーグルオフィスの設計を担当する、世界でも有数の建築事務所である。今回我々は、ニューヨーク・ブルックリンにあるBIGのオフィスを訪ねた。
一歩足を踏み入れると、まずはその広さに驚く。クリーンでシンプルな内装と、キックスクーターで移動する人もいるほど広々とした空間。BIGで働く日本人女性マキさんは、このオフィスをつくる際のプロジェクトリーダーだった。「ものすごく大変だった」と当時を振り返る。「200人以上が同じ空間を共有することが目的だったので、そもそもワンフロアに収めることができる空間を探すことに苦労しました」
そうして見つけたこのオフィスの広さは約4000㎡。ビルの構造上中心に穴が開いたドーナツ状をしており、デッドエンドのためいろいろな人たちが交流しやすい構造になっている。個室がないのもこの空間の特徴だ。個人作業が多いイメージのある建築事務所だが、それも「みんなが同じ空間を共有する」というビャルケの思いから。「でも、さすがに電話スペースやプライベート面談の場所はあったほうがいいという声があがっているので、いま検討しています」とマキさんは笑う。
一般的に建築事務所はピラミッド型の組織が多く、目には見えにくいが、上司、部下といった職階がはっきりしているという。しかしBIGでは、役割としてのマネジメントはあるものの、各パートナーが複数のプロジェクトに関わっているためフラット。それがオフィス空間にも表現されている。1~2カ月に1回は「フライデーバー」というイベントが行われ、担当チームがその回のテーマを決めてお酒を飲みながら交流し合う。普段オフィスを歩いていれば、チーフコミュニケーションオフィサーの役割をもつ社員がラフに話しかけてきて、社員同士をつなぐ。ハード面のみならず、ソフト面からもコミュニケーションを促進しているからこそ、クリエイティブな建築を作り続けられるのだろう。
2020年4月22日更新
取材月:2019年2月
テキスト:石原龍太郎
写真:金東奎(ナカサアンドパートナーズ)
※『WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE 04 LOVED COMPANY 愛される会社』より転載