生ごみから地域の栄養循環を作り出せる。「ゼロ・ウェイスト×都市の循環×Well-being~コンポストでつながるコミュニティ~」イベントレポート(ローカルフードサイクリング株式会社 たいら由以子さん)
気候変動、エネルギー問題、貧困、自然災害——。サステナブルな社会の実現に向けて、私たちが向き合うべき課題は多岐にわたります。
それらの課題のなかで、オカムラは「共創のチカラでムーブメントを起こしたい」という想いのもと、ごみの問題に着目。「ゼロ・ウェイスト×SOMETHING」のタイトルを掲げ、オカムラの共創空間4カ所を巡回するプロジェクトをスタートしました。
「ゼロ・ウェイスト」とは、「ごみをなくす」という意味の言葉。出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを出さないという考え方です。
第3回のテーマは、毎日の暮らしで必ず出る「生ごみ」。それを資源として活用し、都市の中で小さな栄養循環を生み出すヒントを、ゲストや参加者とともに考えました。
共創空間で資源循環の一歩を踏み出す

佐々木
本日は、ご参加ありがとうございます。株式会社オカムラ西日本支社で、共創空間「Open Innovation Biotope “Tie”」の運営を行っている佐々木です。
「Tie」では、所属や立場を超えて人が集まって、ワークショップやセッションを通じて交流し、「働く」に関わる新たな価値創造を目指しています。


河田
名古屋で共創空間「Open Innovation Biotope “Cue”」のコミュニティマネージャーを務めている河田です。
「Cue」のグランドテーマは「はたらくのワクワク見つけた」です。特に、つながり、刺激、ひらめきの3つをキーワードとして大事にして活動しています。
肩書きや年齢にとらわれずにいろいろな方々とつながって、非日常的な空間で対話を続けることで、ひらめきに変わることを目指しています。


福田
商環境事業本部で、「みせいくラボ」という小売店を作る仕事をしています。
今日はコンポストに関する話なのですが、店舗にも活かせないかと思って参加しました。


福田
東京の浜離宮にある私たちのオフィスでは、ごみをゼロにすることを目指す活動の一つとして、自発的に「リユースカップ」の使用を始めました。
ごみに関する調査を進める中で、私たちのオフィスでは1日に400個の紙コップを使っていることが明らかになりました。
そこで、カップを毎日回収して洗浄するリユースサービスを導入しました。


福田
この取り組みによってオフィスで働く人の意識も変わり、従来の紙コップの使用量から4割ほど削減できました。この成果をCO2の削減量に換算すると、杉の木400本が1年に吸収する量に相当します。
「紙コップ1つ」の積み重ねでこれほどの効果が出たことには、私も驚いています。本導入に向けて、検討を進めていきます。(※2026年6月1日より本運用が決定しました)
自然環境に及ぼす土の影響。土は命の源だった

佐々木
今回のテーマは、「ゼロ・ウェイスト×都市の循環×Well-being」。
コンポストと都市の循環について、ローカルフードサイクリングのみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

たいら
ローカルフードサイクリング株式会社のたいら由以子と申します。
私は、食べ物をもう一度食べ物にする手段としてコンポストを選び、楽しく「持続可能な栄養の循環」を生み出す活動を続けています。
1997年から暮らしと土壌の改善をつなぐためコンポスト活動をしていて、国内外にコンポストやその堆肥を使った野菜づくり、循環の仕組みなどを普及しています。


たいら
活動を始めたきっかけは、30数年前に父が末期がんになったことです。
医師に「これ以上の治療は難しい」と言われ、自宅で無農薬の玄米菜食で「食養生」をすることに。ただ、当時は福岡で無農薬野菜がほぼ手に入りませんでした。そこで初めて、自分を取り巻く「食」の状況を理解していないことに気がついたんです。
父の看病をする間、いろいろなことを調べました。その中で、自然の機能は大きく4つに分類できることを学びました。
・デザインやアートの着想となる「文化的な機能」
・山や川など、一次産業に携わる基盤を整える「基盤機能」
・水や食べ物、衣類の原料などを提供する「供給機能」
・あらゆるものを無毒化・調整する「調整機能」

たいら
現代は、この調整機能が落ちたことで、気候変動や温暖化が進んでいるのだと気がつきました。
かつては、山の腐葉土の栄養が雨などにより海へ流れ込み、その腐葉土がプランクトンや魚の栄養となり、魚が死んだら分解され土の栄養になって海藻がよく育つ。そんな豊かな海を作る循環があったのです。
しかし、今や山にも陸にも堆肥のような栄養分を蓄えた土がなくなってしまいました。


たいら
では、失われた土の力をどう取り戻すのか。ここで重要になるのが「堆肥」です。
実は運動場のような硬い土に堆肥を入れると、森のようなふかふかの土に変わるんです。


たいら
さらに日本では、生ごみの焼却に1兆円もの費用をかけています。
生ごみには、本来なら資源としておいしい野菜を育てる力があるのに、わざわざお金をかけて燃やしてしまう。これほどもったいないことはありません。

「コンポスト」×「コミュニティガーデン」で、おいしい栄養の循環を作り出す

たいら
だったら、各家庭で生ごみを堆肥化できれば、焼却している栄養を循環の輪につなぐことができます。
それを個人で行ったり、地域でつないだりすることができれば、地球温暖化へ具体的なアプローチができるし、食べるものを自分たちでコントロールできるようになるのです。


たいら
そこで私たちは、半径2kmの、「自分事」として捉えられる範囲で栄養の循環を作ることを提案しています。
半径2kmは地産地消の定理であり、主婦が生活圏内と感じる距離。週に3〜4回通えるエリアですね。そういった範囲でこの循環の輪をつくりませんか、という活動です。


たいら
自宅で堆肥を作るための方法がコンポストなのですが、コンポストには庭やベランダでできるもの、ミミズ式や電気式などさまざまな種類があります。
私たちが継続しやすさを重視して開発したのが、バッグ型のコンポストです。
2カ月間生ごみを入れ続けて、微生物に食べてもらって分解させ、できた堆肥を半径2km以内のマルシェに持って行ったら野菜と交換できる仕組みを作りたいと思ったのです。


たいら
コンポストに入れる野菜の皮や食べ残しなどは非常に栄養が高い。これらを自然発生した微生物が分解します。分解が進むとコンポスト内の温度が上がります。
不思議なことに、生ごみを投入し続けてもかさは増えません。次第に土の色が濃くなり、栄養が凝縮されていきます。
2〜3カ月生ごみを入れた後は、最後に入れた生ごみを分解させるために熟成期間を取ります。この期間は生ごみを入れずに、水を入れて混ぜる。すると、いい堆肥ができるんです。



たいら
また、私たちは地域の住民が共同で花や野菜、ハーブなどを栽培する「コミュニティガーデン」を増やすための活動もしています。
こうした場所は、子どもたちにもいい影響を与えます。自然体験が多いと、自立性や協調性、積極性が育成されるのです。
また、ウェルビーイングにも直結します。大学の調査で、コミュニティガーデンに来ると幸福度が上がることがわかっています。


たいら
子連れにとっては教育の場、ベテランにとっては学びと実践の場になっています。仕事の引退後、「公民館には行きたくないけれど、コミュニティガーデンには行きたい」という男性も多いです。
さまざまな世代の方にとっていい影響があることがわかります。これらのことから、コンポストとコミュニティガーデンがセットになればいいのだとわかりました。


たいら
今、「循環型コミュニティガーデン協会」を立ち上げて、東京の渋谷や有明、調布、そして京都、仙台、福岡市内にモデル地区を6カ所作っています。これは誰でも参加できるものになっています。
楽しむことを中心においた循環型コミュニティガーデンで、月に2回ほど堆肥作りや畑の作付けの仕方など、勉強会を開催しています。天神での様子をご紹介します。


目良
私たちは7年ほど、天神界隈の企業に、コンポストや菜園に取り組んでもらう活動を行っています。会社のスペースで堆肥を作って野菜を育てて、みんなで食べる。
あるホテルでは、野菜を育てて朝食にして、そこで出た生ごみを再びコンポストに入れて循環させています。畑のスペースがなくても、プランターでも育てられるので、みなさん楽しみながら取り組んでくださっています。
とはいえ、コンポストの使い方が不安な方もいるので、私たちメンテナンス・クルーが、月に2回指導したり、菜園のお手伝いをしたりしています。
コンポストとコミュニティガーデン、どこに設置する? ワークショップで半径2kmの課題を解決
イベントの後半では、地域の循環を考えるワークショップを実施。
世代も仕事も性別も異なる「初めまして」のメンバーが、早速ペンを走らせながら、言葉を交わしていきます。「そんなこと考えたこともなかった」といった声もあちこちから聞こえてきました。
グループごとに、地域にある資源や課題を出し合い、解決策のアイデアを自由に考えていきました。




参加者
ビルの屋上にコンポストを設置して、家庭や会社から出る生ごみを車や船で回収して堆肥を作り、天神内で野菜を作って「天神ブランド」として売るのもいいのではないかという意見が出ました。

参加者
天神内の広い公園をコミュニティガーデンにして、ファーマーズマーケットを開催します。
そこにもコンポストを置いて、飲食店から出た生ごみを持ち込んでもらえるような形にしてはどうかと考えました。

参加者
博多には屋台があるから、そこで出たもので堆肥を作ると話題になりそうだと思いました。
互いのアイデアを聞き、「これはすぐできそう!」「実現したい」と目を輝かせる場面もありました。ワークショップの最後には、参加者からの感想が寄せられました。
・コンポストを使ったリサイクルを、都心でしようと思っていること自体に新鮮な刺激を感じました。
・私はバッグ型のコンポストを使っていて、今まさに土に変わっていく瞬間を楽しいなと思いながら見ています。個人的にですが、もっと普及活動をしていこうと思いました。
栄養の循環を妄想体験で生み出した後は、交流会で更なる意見交換を
イベント最後の交流会では、ローカルフードサイクリングのみなさんが作っているジャムやピクルスなども振る舞われました。



普段「ごみ」として捨てていたものが、コンポストひとつで栄養循環の素になり、地域の課題を解決できるかもしれない。そんな発見がある1日となりました。
2026年4月取材
取材・執筆=神代裕子
撮影=西澤真喜子
編集=鬼頭佳代/ノオト


