生成AI時代でも、わからないことは恥ではない。「わかったつもり」をやめよう
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
「わかる」とはどういうことか?
突然ですが、ちょっとしたワークをしてみましょう。まず、紙とペンを手元に用意してください。そして、パソコンもスマホも見ずに、ジブリの大スター「トトロ」の絵を描いてみてください。
……さぁ、あなたが描いたものは、トトロですか?
誰に見せても「トトロだ!」って言ってもらえる出来栄えですか?
これはいわゆる記憶スケッチですね。このワークは、対面の講義で「知っていることと、本当にわかっていることの差」を実感してもらうために実施しています。
多くの人は、スタジオジブリの本物のトトロを見たら、本物であることを認識できます。そして、世界各地に増殖するいわゆる「パチモン」のトトロを見て、大笑いしたりします。
でも、自分で描いてみると、パチモントトロにも及ばないようなシュールな姿が紙の上に現れたりするわけです。
描けない、というのは、すなわち言語化が足りていない状態だとボクは定義しています。言語化がされていないと、再現性が生まれません。自分のスキルを言語化せずとも高いパフォーマンスを出せるいわゆる天才タイプ、周りにいませんか?
往々にしてそういう人たちの教え方が上手くなかったりするのは、共有可能な言語化がすっ飛ばされていたりするからです。この辺の仕組みについては、「知識の呪い」:エリザベス・ニュートンの実験(1990)でも示されています。
生成AIの功罪
この言語化を大いに助けてくれる存在が、生成AIです。ChatGPTやGoogle Geminiの登場によって、言葉のかけらを見事な文章へと変貌させることが、めちゃくちゃ簡単になってしまいました。
そして、自分が知らないこともすぐに教えてくれて、インスタントにあれこれわかった気になってしまったりしますよね。ボクも、ここ何年かで、いろんな調べ物をしたおかげでめちゃくちゃ賢くなった錯覚があります(笑)。
とはいえ、生成AI名物といえば「ハルシネーション」ですね。自信満々でもっともらしいことを言ってるけれど、実は間違っているという、アレです。
生成AIが教えてくれたことを鵜呑みにして、そのままアウトプットして恥をかいたり袋叩きにあったりしている人、ネット界隈で毎日観測できますね。
理路整然と、自信ありげに断言されると、人間はついつい信じちゃうもの。そして、「AIを使っているのは自分だ!」という意識があるので、AIの言うことを「自分がわかったこと」に変換しちゃうのも、これはまぁ仕方ないことではあろうかと思います。
とはいえ、ここでやっぱり考えることを放棄してしまうのは、ちょっと危険ではありますね。本当にはわかっていないのに、他人から「こいつわかってないな」って思われるのが嫌だから、AIの言うことをそのまま自分の理解ってことにしてしまおう……。これはある意味思考の放棄ともいえます。
わからないことは恥ではないって思いましょう
昨今のXでのレスバ(レスポンス・バトル=コメント欄やSNS上での言い争い・口論)を見てると、「自分の方がお前よりわかってる」とマウントを取り合いまくっていますよね。それも、結構なお年の人がそれやりまくっているのを見ると、なんというかいたたまれない気分になります。
「バカなやつだな」「わかっていないな」なんて言葉を平気で使う人たちは、きっと「自分の方がわかっている」ということを認めてもらわないと、自分の人生の価値が下がると思っているのかもしれませんね。(ちょっと言い過ぎかも)
でも、そんなに何もかもわかってなくてもいいじゃないですか。
「へー、それは知らなかった!」「それわからないんですよね〜〜」なんて気楽に言える方が、ずっと楽だと思うんですよね。そして、「自分が幸せになること」を考えることにたくさんの時間を使う方が、有意義な人生につながるんじゃないかなぁと常々思ってます。
わかってないことがたくさんあることは、その分伸びしろがあるということ。
別に恥ずかしいと思う必要はないのではないかと思います。
ボクの周りの面白い人たちは、「人よりもわかっていること」を前面に押し出すより、相手の良さを引き出すことに長けている印象があります。
そして、謙虚さがあるがゆえに、多くの人たちが集まって、結果的に多くの情報を得ることになり、「わかっていること」が増える。妙なプライドを持つこともなく、周りの人にあれこれ教わって、その都度感謝したりするから、さらに仲間が増える。こっちの方がずっと楽しい人生だと思いませんか?
わかってるふりなんてやめて、「いやーー、今日も色々勉強になっちゃったな!」って思えるような日々を過ごしましょう。
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト


