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大阪・うめきた公園で、エシカルをもっと身近に。ぷらっと入れる体験共創型施設「PLAT UMEKITA」が生み出したいもの

JR大阪駅北側に広がる、約4万5000㎡の都市公園・グラングリーン大阪の「うめきた公園」。大規模な再開発が話題を集める「うめきた」エリアのシンボル的な存在です。

この公園内に2024年9月に開設されたのが、「PLAT UMEKITA(ぷらっとうめきた)」。TOPPAN株式会社が運営する体験型共創プラットフォームです。

ここにCINRA, Inc.、ハーチ株式会社、事業構想大学院大学も加わり、4社が協働しながらエシカル、サステイナブル、ウェルビーイングといった価値観を楽しい体験に変換して発信しています。

大阪の中心地である街の公園に、こうしたプラットフォームを設ける意義とは。ここに集う人々で、どんな共創を生み出したいと考えているのか。運営に携わる皆さんに、お話を伺います。

共創で目指す、エシカル×エンターテインメント

公園に隣接していて、開放的で気持ちのいい場所ですね。「PLAT UMEKITA」はどんな場所なのでしょうか?

木村

ここはTOPPANが企画・プロデュースする空間です。「エシカルテインメント」をテーマに、「公園の遊び方」や「日々の暮らし」をアップデートする体験型プログラムを仕掛けています。

木村和也さん(TOPPAN株式会社PLAT UMEKITA企画編集室ディレクター)

エシカルテインメントというのは?

木村

「ETHICAL(倫理的な)」と「ENTERTAINMENT(娯楽)」を掛け合わせた造語です。エシカルを近寄りがたいものではなく、誰もが楽しめる形で提示していきたいという「PLAT UMEKITA」の基本姿勢を表しています。

誰でも気軽に入れるので、公園を訪れた人がなんとなく立ち寄って楽しむことができます。

流線型の白い屋根が特徴的な「PLAT UMEKITA」。休憩にぷらっと立ち寄ることもできる

確かに、「エシカル」って近年ではよく聞く言葉ですが、具体的にどういうことかイマイチよく理解できていない気がします。

木村

そうなんですよ。たとえば、企業のWebサイトに「カーボンニュートラルに取り組んでいます」と書いていても、一般の生活者にとってはなんだかぼんやりしているし、興味を持ってもらうのは難しいですよね。

ここでは、子どもたちが手を動かして遊びながらコンポストにふれるなど、みんなが楽しめる体験に変換したいと思っているんです。

「コンポスト」「地産地消」「脱プラスチック」など、エシカルに関係するワードのカードを掲げたボード。カードをひっくり返すことで、意味を確認できる

エシカル、エンタメ、ビジネス、各ジャンルの第一線企業が集結

オープン以来、展示やイベント、ワークショップ、スクールなどをたくさん開催されていますが、どのように企画・運営しているんですか?

第1弾の自主企画展「「アップサイクル・アニマルズ」の様子。ダンボール、木材、日用品などの廃材を活用して制作された動物彫刻、楽器類やコンポスターを組み合わせ、動物園に見立てた体験型インスタレーションが展示された。(提供写真)

木村

コンセプト設計からイベント企画、運営までを行うのが「PLAT UMEKITA企画編集室」です。

運営母体であるTOPPANと、エシカルやサステイナブル分野に知見を持つハーチ、アートやカルチャー文脈に強いCINRA、新規事業を生み出す人材を育成する事業構想大学院大学の4社で立ち上げました。

運営に携わるメンバー

各社がどんな役割を担っていますか?

鶴木

事業構想大学院大学は、新規事業の立ち上げや起業を目指す社会人向けのビジネススクールです。エシカルやサステイナブルといった分野で、社会課題解決型の事業を始めようとする人たちが多く集まっています。

大阪校はグランフロント大阪にキャンパスを構えて8年目。現役生や修了生、講師陣など、人的リソースを生かし、事業創発ネットワーキングや企業共創企画に寄与できればと考えています。

鶴木貴詩さん(事業構想大学院大学 大阪校 事務局長)

野村

ハーチは「Publishing a Better Future(より良い未来をみんなに届ける)」をコンセプトに、7つのWebメディアを運営している会社です。

特にエシカルやサステイナブルをテーマとする「IDEAS FOR GOOD」というメディアで蓄積してきた知見を生かして、この場所の企画に関わっています。

東京では、企業や自治体から展示やスクールの依頼が増えているのですが、関西で場づくりに携わるのは初めてだったので、ドキドキしながらスタートしました。

野村蘭さん(ハーチ株式会社)

木村

CINRAさんは、この取材では都合が合わず参加がかなわなかったのですが、音楽や映画、アートといったカルチャー系のWebメディアを運営している会社です。最近はソーシャルグッドの分野にも範囲を広げています。

エシカルにカルチャーの要素を組み合わせる、エシカルテインメントの「テインメント」の部分を主に担ってくれています。

TOPPANさんから声をかけて企画編集室を結成したんですか?

木村

はい。私たちが1社だけでできることは限られていますから、それぞれ強みを持つ各社と一緒に企画を作れたらと思ったんです。TOPPANは企画編集室の座長的な役割ですね。

ちなみに社外との共創だけでなく、TOPPANの中でもさまざまな立場の人間が関わっているため、TOPPANの社内共創プロジェクトにもなっています。

計画段階は東京のメンバーが中心となって進めていましたが、企画・運営に関しては関西の事業部と連携して行っています。

豊島

僕はTOPPANの関西メンバーとして関わっています。実は東京と関西の社員がここまで密に連携するプロジェクトは、今まであまりなくて。入社5年目なんですけど、ほぼ初めての経験ですね。

東京と関西では企業文化がちょっと違うなと感じることもありますし、このプロジェクトを通して部署や世代を超えたコミュニケーションが起こっているのが面白いですね。

豊島紀拡さん(TOPPAN株式会社)は関西事業部に所属している

木村

20代の社員が60代の社員にインスタグラムの使い方を教えていたりして、これまでは見たことがなかったシーンだなと(笑)。

各社の知見を持ち寄り、強みを生かして協働する

社内外の共創からどんなものが生まれていますか?

木村

そもそも各社の専門知識や経験してきたことが全く違うし、TOPPANの東京と関西でもやっている仕事が違うので、その知見を持ち寄って企画を作っていくのは面白いですね。

たとえば、最近開催した「食のミライ放送局」というイベント。エシカル分野のキャスティングはハーチさんからアイデアをいただいたり、事業構想大学院大学さんにはトークセッションに参加してもらったりしました。

「食のミライ放送局」の様子(提供写真)

野村

ハーチ1社だけだと、エシカルに興味が似た価値観の人が集まるので、毎回同じような話になってしまいがちなんですよね。

でも、この企画編集室では「こういう人選があるのか」「音楽やアートももっと取り入れたほうがいいね」といった広がりが生まれて、私も面白いし勉強になっています。

最近は社内全体にもその空気が広がってきていますね。

木村

そうなんだ! よかった(笑)。

鶴木

それは私も同じですね。事業構想大学院大学だけでイベントをやっても、リーチできる範囲にはやっぱり限界があります。

エシカルやアートなど、それぞれに興味のある人と出会えたり、その知見をこちらがもらえたりすることで、新たな事業創出につながりそうだと思っています。

うめだエシカル100人カイギの様子(提供写真)

鶴木

あと、「PLAT UMEKITA」では、毎月「うめきたエシカル100人カイギ」を開催しています。

事業構想大学院大学の現役生や修了生がピッチに登壇して、新たな交流が生まれています。学内イベントだけでは実現できない、外への広がりを感じますね。

木村

100人カイギは「PLAT UMEKITA」のネットワーキングにもなっていて。

登壇者や参加者の人たちが、今度はここでワークショップを開催したり、マルシェに出店したりといった形で次につながっています。

今後はさらに視野を広げて、「この場所で一緒に共創プロジェクトをしませんか」といった展開もしていきたいですね。

ここで生まれたネットワークが、ゆくゆくはどんな形に発展していくことを目指しているのでしょうか。

木村

企業や自治体、学術団体、地域住民、クリエイターなど、さまざまな人たちと連携し、新しい事業やサービスを生み出すことを目指しています。

2025年5月からは企業と一緒にサービスのプロトタイプをつくるなど、具体的な動きも出てくる予定です。そこからオリジナルの事業やサービスが生まれ、さらには新たな協働プロジェクトにも発展していけたらと考えています。

公園というパブリックスペースだからこそ、ぷらっと集まる人が気づきを得られる

うめきた公園というパブリックスペースに共創空間を設けることには、どんな意義があると感じますか?

木村

ビルの会議室やイベントスペースと比べると、圧倒的にオープンな空気がありますね。基本的に貸し切りできない施設なので、通りがかった人がふらっと入って来られるんですよ。

天気の良い週末には、ベビーカーでいっぱいになることも多いです。さまざまな世代や属性の人が、ぷらっと立ち寄っては「そっか、フードロスってこういうことなんだ」といった気付きを少しでも持ち帰ってもらえるといいですね。

PLAT UMEKITAの中にも、公園のマップがある

鶴木

平日夜は仕事帰りのオフィスワーカーの人がイベントに参加してくれることも多いですね。

私自身、うめきたエリアのオフィスビルで長く働いてきたものの、今までは家と職場の往復になってしまいがちで。あえてこの街で働く価値や地域への愛着を実感しづらかったんです。

そういう人にとって「PLAT UMEKITA」はサードプレイスになり得る。公園という気軽に来られる場所にあることに価値があるのかなと思います。

野村

ハーチはコンテンツをつくる場所がWebメディアなので、ハードであるリアルな空間をつくることの意義はよく感じています。

エシカルなWebメディアを運営していても、記事を読んでくれる人はその分野に興味がある人だけになってしまう。パブリックスペースに空間があるからこそ、エシカルについて知ってもらう機会が生まれます。

実際、今までメディアでは接してこなかった方とお話しする機会があるんですが、皆さんがすごくエシカル分野に興味を持ってくれるんですよ。

豊島

展示を見ている人に声をかけると、向こうからも積極的に話をしてくれるというシーンはよく見かけますね。興味を持ってくれているんだなと実感します。

野村

「もったいない精神」という言葉もありますし、大阪の人たちはエシカルとの相性が良いのかなって個人的に想像したりしています(笑)。

取材日、「Food for Good」をテーマにした食の展示が行われていた

「アップサイクル」という言葉自体は知らなくても、「実は私もやってた!」みたいなことはありそうですね。

野村

ビジネスの観点で言うと、toCのアプローチに悩んでいるエシカル分野の企業さんがとても多いので、企業と生活者の新しいつながりができる場としてうまく活用してもらえたらいいなと思います。

豊島

エシカルな取り組みをどうやって発信していくか、悩まれている企業さんは多いと僕も感じますね。

それをいかに楽しい体験に変換していくのか。公園の一部として楽しんでもらえる企画を考えていきたいですね。

「楽しい」というキーワードを大切にされているんですね。

木村

僕がよく言っているのは、「楽しさファースト」。まずは僕たちが楽しいと思えるかどうかが大切で、結果的にその楽しさがユーザーへ自然に伝わるのが理想です。

以前働いていたイベント会社で、先輩から「木村くんが楽しくないと、お客さんも楽しくないよ」と言われたことがあって。その言葉を、この施設を運営する上で意識しています。

野村

わかります。だから私も、自分たちが楽しいことをやっています(笑)。

木村

ビジネスパーソンの皆さんにとっても、この場所が「楽しさファースト」で働くきっかけになれたらいいなと思いますね。

僕は働きながらときどき公園の芝生で寝っ転がったりしているんですけど(笑)。クローズドなオフィスでは生まれない出会いやアイデアが見つかると思います。

うめきたの街で、大阪らしいエシカルを

うめきたエリアはまだまだ再開発の途中です。「PLAT UMEKITA」を通して、街の発展にどのように関わっていきたいと考えていますか?

鶴木

さまざまな人たちが集い、エシカルについて考えてもらえるような場づくりをしながら、未来をより良くしていくために力を尽くしていきたいです。

この春には、グラングリーン大阪の南館もオープンしました。万博で大阪がより盛り上がっていく年なので、「PLAT UMEKITA」の存在感もさらに高めていきたいと思っています。

豊島

うめきたを訪れる方もさらに増えると思うので、その期待感、ワクワク感をより高めるコンテンツを発信したいですね。自分自身も楽しみながら取り組んでいきたいです。

野村

先ほども大阪とエシカルの相性が良いんじゃないかと話しましたが、「大阪らしいエシカルなビジネス」を作っていけるんじゃないかなと思っていて。

今はエシカルだけでビジネスになっている企業はなかなか少ないですが、それを大阪から発展させていけたらいいなと考えています。

4社で共創しながら、エシカルやサステイナブルが日常の一部になる未来を作り出していきたいですね。

木村

都市の真ん中にこれだけ大きな公園があるというのは世界的にも珍しい。この「都市の余白」のような空間で一体何ができるのか、一緒に考えてトライし続けたいですね。

「PLAT UMEKITA」は入場資格はないし、休憩がてらぷらっと入ってこられる、公園の中でも特にニュートラルな空間。でも、何かしらの体験ができる場所でもあります。

企業と生活者がより有機的に結びつく場所として、これからも新しい事業やサービスが生まれる事例を積み重ねていきたいと思います。

「PLAT UMEKITA」とうめきたエリアのこれからを楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました!

山田 雄介
山田 雄介

【編集後記】
「エシカルって、ちょっと難しそう」
 ——そんな先入観をやさしくほぐしてくれるのが、PLAT UMEKITAで行われている共創の風景です。4社それぞれが異なる強みを持ち寄りながら、立場や肩書きを超えて「面白い未来」を本気で模索している。その姿勢はどこか文化祭のようでもあり、でも目指しているのは社会を動かす本気の実験。
公園という誰にでも開かれた場所で、「楽しさ」と「問い」を同時に届けてくれる彼らと地域との営みに、みんなで価値創造する未来の働き方を感じました。
小さくても自分にできる一歩を考える、といったきっかけになるPLAT UMEKITAにぷらっと立ち寄ってください!
(WORK MILL編集長/山田 雄介)

2025年2月取材

取材・執筆=藤原朋
写真=古木絢也
編集=桒田萌(ノオト)