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ビジネスにおけるダイバーシティーとは ー 欧米企業の先進的な事例5選

ダイバーシティーとは

日本でも浸透しつつある、「ダイバーシティー」。特に東京オリンピックの話題が尽きぬ昨今、祭典の原点でもあるダイバーシティーの意味、そして社会及びビジネスにおける大切さについていまいちど学ぶことは重要である。アメリカの大手メディア、NPRはダイバーシティーをこう定義している。「ダイバーシティーとは、人種や民族、性別、性的指向、性自認、社会階層、信仰、年齢、障害や能力、政治的主張、地理的な位置などにおいて人々の違いを認め理解し、真実を歪めたりするようなバイアスや偏見を和らげることである。」*1

 

移民や難民が増加し、文化と文化がひしめき合う現代社会において、ダイバーシティーは真剣に向き合うべき課題へと急成長しつつある。しかしながらそれはビジネスにおいても例外ではない。

 

ダイバーシティーは営業成績につながる?

コンサルティング会社マッキンゼーによる最新の調査で、ジェンダーおよび人種・民族の多様性において上位4分の1に入る企業は、財務リターンが国内業界の中央値を上回る可能性が高いことが明らかになった。一方これらの項目で下位4分の1の企業は、平均以上の収益を達成する可能性が統計的に低い。

 

 また昨今、企業のダイバーシティーは競争上の差別化要因となり、時間の経過とともにダイバーシティーにおいてより優れた企業に市場シェアが移行すると考えられている。多様である企業ほど違う立場や経験からの様々な意見を取り入れやすく、結果として高い営業成績につながるのだろう。データは多様な人材を受け入れ、維持する能力は、企業にある程度の競争上の優位性をもたらす可能性があることを示唆している。

 

この記事では、国民が多様なことで知られるアメリカを中心とした企業を取り上げ、それらの企業がどのように社内外のダイバーシティーに向き合っているかを紹介する。

 

 

事例①   マリオット・インターナショナルの取り組み

アメリカに本社を設け、国内外に広くホテルを展開するマリオット・インターナショナル。マリオット社は、DiversityIncの「2020年の北米における最も多様性のある企業トップ50」にランクインし、社内外のダイバーシティーに焦点を当てたグローバルなプログラムの成果を世界に示した。

 

サプライヤーの多様化を推進

同社では社内のダイバーシティーの維持に尽力する一方で、「エクスチェンジ」という独自のプログラムを立ち上げ、サプライヤーにおけるダイバーシティーにも重きを置いている。本プログラムは、女性、LGBT、障害者、退役軍人など、社会的マイノリティが所有する企業と提携することを目的としている。文化や立場の違いを学び、受け入れることで、真にグローバルに考える力を養うというのが狙いだ。

 

実際、2020年までに女性が所有する企業への支出を5億ドルに増やすという目標を上回り、2019年末には既に約5億5,600万ドルに増加した。さらに現在では女性、退役軍人など多種多様なバックグラウンドの人々が運営するビジネスへの支出を10億ドルに増やすことを目指している。

 

更にこのプログラムにより、同社は昨今欧米諸国をはじめとする先進国で重要視される社会的弱者の人権と立場の保障の保障というアイディアを具現化、更にビジネスにおけるダイバーシティーも見事に実現させている。DiversityIncだけではなく、Fortune の「働く環境が最も優れている企業Top 100」やその他様々な賞を受賞しているのもうなずける。

 

ーマリオット社公式ウェブサイトより

 

事例② 北米トヨタの取り組み

北米トヨタでは、 ダイバーシティー& インクルージョン (D&I)のマインドセットに基づき、社内外の文化、民族、ジェンダーの多様化に取り組んでいる。同社では数年前から D&I 年報と呼ばれる、その年に行なったD&I に関する取り組み、及びそれらの成果を示したレポートを発行している。詳細に記録されたデータや関わった人々の記録などからも、トヨタの熱量がうかがえる。

 

では、D&I とは何か。トヨタは次のように述べている。「ダイバーシティー&インクルージョン(D+I)マインドセットとは、あらゆるアイデア、視点、貢献を認め、尊重し、評価し、考慮することです。」*2

 

多様性という意味のダイバーシティー、そして含める・組み込むといった意味を持つインクルージョン。違いを認め合い尊重する姿勢は、急速に外国人や多国籍企業が増加する現代日本において、非常に重要なビジネスの指標である。

 

女性の立場向上と躍進に向けて

北米トヨタが一昨年にスタートさせた「#SheDrives」(ハッシュタグ・シー・ドライブス)は社内における女性の立場の向上を目指す取り組みだ。同社では技術、営業ともに女性の役職の増加に精力的に取り組んでおり、実際北アメリカにある工場の責任者の多くは女性である。

 

トヨタはわずか2年間で、シニアマネージャーの女性の数を2倍以上に増やした。具体的には役職全体で女性の割合が21%だった2017年に比べ、プロジェクト発足後には44%まで増加している。更に、フィールドセールスの管理職研修プログラムの大幅な内容変更を実施したところ、入社3年後には女性の離職率が0%となった。この数字は、同社のダイバーシティー&インクルージョンへの積極的な取り組みを如実に示すものであり、女性支援のまさに理想的なケースとして多くのメディアで取り上げられる。

 

ー2020 TOYOTA D&I ANNUAL REPORT より

 

事例③ Googleの取り組み

次に、Googleが率先して行なっている少数派コミュニティのサポートと投資について取り上げたい。アメリカが人種のるつぼと呼ばれて久しい現在でもColored (有色人種)と呼ばれる人々の就職の機会は白人に比べまだ圧倒的に少ない。そこには様々な要因が存在するものの、やはり大きな障壁として逼迫するマイノリティ家庭の経済的な状況が挙げられる。低賃金で働く両親は子供に良質な教育を与えられず、結果として子供も低賃金の職に就くしかなくなるというケースがアメリカでは多くみられる。

 

そこで一昨年、Googleはアメリカの小・中学校に在籍するラテン系、並びに黒人の子どもたちとその家族への投資を始めた。

 

肌の色に関係なく、平等な教育の機会を

Googleはラテン系と黒人の生徒を中心に、アメリカに暮らす人種的マイノリティの子ども達の将来の選択肢を増やすことを目的としていて、既に2019年にUnidosUS、YWCA、Hispanic Heritage Foundationなどの団体に500万ドルの助成金を提供した。

 

この助成金は、2022年までに100万人以上の学生とその家族に、Googleが小中学生向けに提供しているコーディングカリキュラム「CS First」をはじめとするコンピュータサイエンスのカリキュラムの提供に使われる。「この取り組みは、学生たちが将来必要な技術的スキルと自信を身につけ、目指すキャリアで成功するための準備を支援するものです。」*3 とGoogleはコメントしている。

 

更に、英語を十分に話せない移民の子供達のためにスペイン語での授業も行なっている。この助成金は誰にでも平等な機会を、というGoogleの願いをまさに実現させるためのものだったと言える。

 

ーEnabling Spanish-speaking students to learn computer science より、スペイン語でプログラミングの授業を受ける子供達

 

事例④ Uberの取り組み

昨今日本でも話題に上がるUber。2009年に立ち上げられ、2011年にサービスを開始してからUber X, Uber Eatsなど様々な分野に活躍を広げ、現在ではおよそ70カ国、800以上の都市でビジネスを展開している。

 

同社では社内外のLGBTQ+の立場向上に精力的に取り組んでおり、その結果としてUberは、四年連続ヒューマン・ライツ・キャンペーン財団の企業平等指数(CEI)で最高の100点を獲得し、現在までに4つのグローバルオフィスがLGBTQ+平等のための「Best Place to Work」に選ばれている。

 

CEIはアメリカ国内のLGBTQ+のための職場環境の向上を目的としており、その評価基準が非常に厳しいことから、4年連続満点を記録する同社のダイバーシティーへの取り組みがいかに懸命であるかが分かる。

 

自分らしくいられる環境づくり・LGBTQへの支援 

UberではGender Transition Guideline(性別トランジションに関するガイドライン) と呼ばれる手引きが発行されており、社内全体で読むことが義務付けられているのだそうだ。性別トランジションとはどのようなものか。 手引き書では「トランスジェンダーが、社会の中で自分の性表現を公に変えていくこと」と記されている。これは、彼らのトランジションに伴う精神的、肉体的、社会的な苦痛を軽減し、同時にトランスジェンダーではない従業員たちの認識を深めるためのガイドラインなのである。

 

ガイドラインには、場合によって発生するトランジションに伴う姓名の変更についても、社内の書類では変更後の名前と性別の記載に最大限の努力をすることが明記されている(ただし法的書類以外)。更に現在、月一を目安に行われている社内フォーラムでは、トランスジェンダーのみならずLGBTQ+全体についての知識を従業員全体に提供することで従業員の教育と意識の浸透を図っている。

 

ーUber Gender Transition Guidelineより

 

事例⑤ アメリカン・エクスプレスの取り組み

Uber同様社内におけるダイバーシティーの向上に尽力している企業として、アメリカン・エクスプレスを紹介したい。同社では文化や宗教的バックグラウンドに特に重点を置き、そのような違いこそが社の成功の鍵であるというアイデアを活動の軸としている。どのような人でも快適に仕事ができ、自分らしさを失わないワークプレイスであり続ける、というのが社の指標である。

 

同じ人種、宗教バックグラウンド同士の交流機会を提供

アメリカン・エクスプレスでは、1987年から、社内にColleague Networks (従業員ネットワーク)と呼ばれる、共通した文化やバックグランドを持つ人々が集まるグループを形成し、共通点を持つ従業員同士の関わり合いを助長している。移民など、大多数とは異なる背景を持つ従業員が孤独を感じないようにするのが一番の目的だ。16ものグループには、ユダヤ系、アジア系、ムスリムや技術職女性のネットワークなども含まれる。

 

このネットワークコミュニティは同僚同士の関わり、個人的および専門的なソフトウェア開発、スキル構築、およびキャリアの成長をサポートする機会を提供してきた。さらに、同時にネットワーク同士の交流を活発に行うことで、全ての従業員が平等に活躍できるような包括的な社内文化の形成にも大きく貢献している。

 

Forbesの“America’s Best Employers for Diversity”(アメリカで最もダイバーシティーに優れた会社)を筆頭に、Fortuneの“World’s Most Admired Companies”(世界で最も称賛される企業)リストインするなど、同社のユニークな「ネットワーク化」スタイルは功を奏していると言えるだろう。

 

社内ダイバーシティーの次は?

以上、アメリカの企業がどのように社内外のダイバーシティーに向き合い、尽力しているかを取り上げた。異なる視点を理解・取り入れることは、更に広く画期的な視野につながっていく。

 

これらの事例に共通することはダイバーシティーの向上だけではなく、維持に取り組んでいることだ。社会のグローバル化が進み、ダイバーシティーの重要性が加速していく中で、私たちの課題は多様な文化や人種、バックグラウンドを受け入れた先に、その違いから生まれる格差や障害をどう解決するかということだろう。

 

*1: Diversity As A Core Value より翻訳 (https://www.npr.org/diversity
*2: 2020 TOYOTA D&I ANNUAL REPORT より翻訳 (https://toyotadiversityreport.com/wp-content/uploads/2020/09/Toyota-2020-DI-AR_Web_090120-1.pdf)
*3: Helping Latino students learn to code より翻訳 (https://www.blog.google/outreach-initiatives/google-org/computer-science-lessons-spanish/

2021年5月13日更新

テキスト:松尾舞姫

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