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Z世代と考える、働きたい「はたらき方」とは? ― 大阪大学 オン・キャンパス・インターンシップの取り組み

デジタルネイティブといわれるZ世代の若者たち。そんな彼らは、自分たちが「はたらく」ということに対して、どのようなイメージを持ち、どんな働き方をしたいと思っているのでしょうか。そんなZ世代と共に、「はたらき方」について考える産学共創プロジェクトの試みとして、大阪大学とオカムラではアクティブ・ラーニング型の「オン・キャンパス・インターンシップ」を開講しています。未来に繋がる学びの創出のため、このプロジェクトはスタートしました。

 

大学での時間をより実りあるものにするためには、自分の将来を見据え、目標を立て、それに向かって努力する必要があります。また、卒業後に価値ある貢献をするには、社会ではどのような力が求められているのかをできるだけ早い段階で知り、準備しておく必要があります。

 

しかしながら、多くの学生は自分自身が働くことを具体的に深く考えるのは、「就職活動を行うとき」というのが現状かと思います。そうではなく、もう少し早い段階で自分自身の「はたらく」について考える機会があることで、その先の大学生活がより実りがあるものになるのではないか。大阪大学のCOデザインセンターを主体に、松繁教授・松浦教授・イステッキ特任教授と共に、オカムラのワークデザイン研究所の花田・谷口が授業を担当。「未来のはたらく」をテーマに先生方、学生たち18名と約4か月間、全6回の授業を通して、ワークショップやレクチャを交え、一緒に考えました。

 

昨年はオカムラ関西支社オフィスに併設する共創空間「Open innovation biotope “bee”」(以下、bee)の空間で実施した授業も、今年はコロナウィルスの影響でZOOMでの開催となりました。

 

※写真は、2019年度の授業風景です。

 

「はたらく」ということ

そもそも、学生の皆さんは「はたらく」ということに対して、どのようなイメージを持っているのでしょうか。オリエンテーションの際に、皆さんに聞いてみたところ「責任」「お金」「社会貢献」「ストレス」などのキーワードがあがりました。全体的には、「はたらくこと」に対して辛そう・しんどいというマイナスのイメージを持っている学生さんが多そうです。

 

そんなイメージの学生たちに対して、Work in Lifeという考え方やWORK MILLで取材してきたさまざまな働き方をしているワーカー(社会人)の方を事例に紹介し、「はたらく」のイメージについて再度考えてもらいました。

 

「はたらく」イメージが膨らんだ次に注目したのは、「人」です。どのような働き方をしても切り離せないのが人間関係。学生には、ご自身の人生グラフを作成してもらい、人生の振り返り、またその中でどんな社会人に出会ってきたかをグループワークで共有してもらいました。そのうえで、『アクティブトランジョン 働くためのウォーミングアップ』のワーク、社会人でいそうなタイプをキャラクター化したカードで未来を考えるゲームを実施。自分が、『一緒に働くにはちょっと抵抗がある人』『一緒に働いてもいい人』をカードの中から選定。理由も合わせて考えてもらい、グループワークで多様な価値観に触れてもらいました。そのなかで、いったい自分はどんな社会人になりたいのか、自分自身を見つめ直すことに加えて、選ぶ際に重視した価値観はなにか?も考えてみました。

 

―こちらのワークショップはオカムラの人事部が担当しました。※参考:アクティブトランジョン 働くためのウォーミングアップ

 

グループワークを経てさまざまな意見や価値観を共有した後、改めて『一緒に働くにはちょっと抵抗がある人』『一緒に働いてもいい人』のカードをそれぞれ1人3枚を選定してもらいました。結果は下記のようになりました。

『一緒に働いてもいい人』

1位:キャリアアップを目指す『資格さん』
2位:理不尽なこともあるけど、素早く仕事を進めたい『忍さん』
3位:プライベートが大事な『オケイコさん』、自分の会社が大好きな『わが社さん』、ステップアップを目指す『踏み台さん』

 

『一緒に働くにはちょっと抵抗がある人』

1位:寝る間も惜しんで働く『不夜城さん』
2位:自己肯定感が低めの『私なんてさん』
3位:見返りを求める『ソロバンさん』

 

『一緒に働いてもいい人』の「踏み台さん」は良くも悪くも2面性があるのではないかという意見がありましたが、3位に。『一緒に働くにはちょっと抵抗がある人』の1位は「不夜城さん」、圧倒的なトップでした。その後に続いたのは「私なんてさん」。マイナス思考やネガティブな発言は周りにも伝染するのではないか、という意見が見られました。しかし、先生たちからは「私なんてさん」は、歩み寄り次第で心が通じ合い、「一緒にやろう!」となる可能性が高いですよ、との意見があったり。学生視点と先生たちの経験上の視点では異なり、多様な価値観に触れてもらえたかと思います。

 

学びたい空間は?

次に考えたのは、空間。いわゆるオフィスで働いたことがない(人によってはあるかもしれませんが)学生には、まずは自分が「どんな場所で学びたいか」について考えてもらいました。この授業では、発表について細かな指示は出さない方針のため、いつも課題は抽象的です。そのため、学びたい空間についてもさまざまなアプローチから考えてきてくれていました。

 

過去の経験から、「広いデスク、窓、自然の香り、雑音」という条件を写真と共に挙げる学生もいれば、昨今のコロナウィルスの影響でオンライン授業などを体験し、「不特定多数に見られている空間が苦しい」と感じることに気づいた、「オンラインも便利だが限界を感じ、希望はコミュニケーションがとれる空間で学びたい」、などさまざまな考えがあがりました。

 

わたしたちは、この3月末から在宅勤務が始まり、まず思ったのは「快適に働ける家具が欲しい…」だったのですが、学生から出た要素では家具に関する条件は少なく、全体的に「音環境」「かおり」「景色が見える環境」「人と関わりあえる環境」を望む声が多く見られました。中には、「ZOOMを繋ぎっぱなしにした環境」などを挙げていた学生も数人いて新鮮でした。「人との関わり」「ZOOMを繋ぎっぱなしに(何か会話をするわけではないけれど、繋がっている感・すぐに誰かとコミュニケーションが取れる点が良いようです。)」などは今年だからこそより強く出た「学びたい空間」かもしれません。

 

※写真は、2019年度の授業風景です。

 

「学びたい空間」を考えた後は、イステッキ先生に映画や写真を通して海外の働く空間のレクチャをしてもらい、世界のワークプレイス※を見ました。オフィス内に走るためのトラックがあったり、パーキングで仕事をしていたりと、一言に「働く空間」といっても多種多様です。

※ここでのワークプレイスは、オフィス内の働く場所に限らずコワーキングスペースやカフェ、図書館など街の中にある様々な働く場所を指します。

 

学生の働く場所のイメージは、グレーのデスクに収納といった無機質なオフィスのイメージが強くあったそう。昨年は、オカムラの関西支社beeで授業を行っていたこともあり、オフィスの一例を学生さんに感じてもらえる機会もありました。しかし、今年はZOOMで授業ということもあり、レクチャを受けるまで具体的なオフィスのイメージがわかなかったのかもしれません。

 

イステッキ先生のさまざまなワークプレイスの紹介に「ワークプレイスってこんなにカラフルでかっこいいんだ!」「こんな場所も働く環境になりうるんだ!」なんて声も見受けられました。もちろん、まだまだグレーで島形対向のオフィスも存在する旨はきちんとお伝えしています。

 

その後は、わたしたちから過去の研究の一つである「はたらく心地」のよいオフィスについて、「ワークプレイスは、企業にとってどのようなものなのか」についてご紹介をしました。

 

はたらくにまつわる問題とは?

最後に、考えたのは「はたらくにまつわる問題」。「はたらく」のイメージ・人・空間などさまざまな視点から「はたらく」について考えてきましたが、いざ自分が社会に出て働くとなった時に問題になりそうなことは何か、各自テーマを決めて調べてきてもらいました。

 

学生たちが選んだテーマは、女性の働き方から終身雇用、会社における服装まで多岐にわたっていました。ここからも、自分自身が働くことになった際に気にするポイントや価値観が見られるのかなと思います。また単純に、「女性の働き方」といっても、芸事の場合について考えていたり、バリバリ働きたいのにどうして男女で賃金格差が生まれるのか、夢を取るべきか現実を見るべきか迷っているさなかでのテーマ設定であったりとさまざまな問題について調べてきてくれました。

 

どんな働き方がしたいか、どんな場所で働きたいか。

最後は、今まで考えてきたことの集大成として、「どんな働き方をしたいか」「どんな場所で働きたいか」ということについて考えてきてもらいます。これからの学生生活をより意義のあるものにするためのヒントをつかむためです。プレゼンテーション方法も、今回は指定せず「自分の個性を入れて」発表してくださいとお願いをしました。歌って表現するもよし、コラージュで発表するもよし、詩を朗読するもよし、個性を表現したうえで課題を発表するという形です。

 

まず、課題に取りかかる前にぶつかるのは「自分の個性は何か?どう表現に取り入れればいいのか?」という点のようです。考えた末に、好きな音楽で作詞作曲をしてプレゼン・生演奏、人形劇形式でのプレゼン、デザインが好きという子はポスターや実際に働きたい場所の図面を書いたり、3Dでモデリングをしたウォークスルーでのプレゼンを行ったり(建築やインテリア関係の専攻ではない学生です)、好きなアーティストの価値観から自分自身の働き方を考える、など本当にさまざまな個性を交えて発表してくれました。

 

このような表現方法の幅の広さは、Z世代の特徴といえるかもしれません。多様な表現ツールを積極的に活用することに抵抗のないデジタルの活用が上手な世代だ、と改めて感じました。彼らは今後、パワーポイントなどの定型的なビジネスツールではなく、多様な表現で今後ビジネスを展開していくのかもしれません。

 

 

働き方に関しては、休みの取りやすさや(有休休暇や時間休暇、育児休職など)、復職のしやすさ、働く時間を自由に調整ができる時間の自由度について。また、コロナウィルスの影響で拡大が進んだテレワークについても、テレワークは実践したいものの働く場所と住む場所は分けたい、など働く場所の自由度についても意見があがっていました。

 

男女平等は当たり前の考え方だと捉えている世代であり、男性の育児休暇も珍しくないと感じる世の中になりつつありますが、キャリアをどう捉え、どのように対応していくべきか、Work in Lifeとして男女問わず考えていく世代の兆しを感じました。

 

働く場所については、少し前までは都心で働いていないとできない仕事も多くありましたが、ここ数年でのICTの発展や場所の分散化が進んでいることもあってか、中都会や便利な田舎、自然が窓から見られる場所、車通勤ができるようなワークプレイスを「働きたい環境」として挙げている学生さんが多数でした。近年、東京一極集中から地方への分散の必要性が問われ、地元志向の学生も増えていると聞きます。若者たちの「働きたい環境」も都会でバリバリ働く、というものから少し離れていっているように感じました。

 

具体的な働く環境については、授業中に事例として出したさまざまなオフィスの印象もあると思いますが、いわゆる自席だけではなくリフレッシュやカフェスペース、チャイルドルームやコワーキングスペースがオフィスにはあってほしいというABW(Activity Based Working)のような働き方、グレー一色のオフィスではなく温かみ、居心地の良さ、カラフルなワークプレイスを希望する学生さんが多くいました。

 

また、働く環境も大事ですがやはり「人間関係」に関するキーワードも多く、対等に意見を言い合える関係、アットホーム感といったヒエラルキー型でない人間関係をイメージするようなキーワードが見られました。

 

多様性に関しても、多様な人がいることで社会が支えられていること、多様な人が働いている環境で働きたいという意見も見られました(余談ですが、今回の授業は留学生が3人受講しており、各国の働き方や文化について学生さん同士で知ることが出来たのも良い機会だったと思います)。その他にも、通勤する際の服装、仕事に対する達成感や、どんなところでも学べる力がつけられる環境、社会の変化への対応などがキーワードとして挙がっていました。

 

もちろん、プレゼンテーションではあくまで「理想」であり、すべてが叶うとは思っていませんと言った学生さんもいました。しかしながら、「はたらく」ということに対してネガティブなイメージを多く持っていたり、全くイメージができないと当初発表していたりした学生たちが、自分自身が「どのように働きたいか」「どのような環境で働きたいか」について考えて、アウトプットすることができたのは、毎回の授業で答えのない課題と向き合い、学生たち自身で考えた結果ではないかと思います。

 

 

授業担当者のプロフィール

―松繁寿和(まつしげ・ひさかず)大阪大学大学院国際公共政策研究科
大阪大学経済学部を卒業後、同経済学研究科(大学院)に進学。オーストラリア国立大学の博士課程に留学。大学院では労働経済学を専門としていたが、その後、興味は学校教育、企業内人事など人の育成、配置、動機に移る。近年は、教育訓練効果の測定、学校と社会を通じた人材育成の総合的な把握、社会と大学の共創によるカリキュラム開発などをテーマとしている。『「仕事映画」に学ぶキャリアデザイン』(2020、有斐閣)等を執筆。

 

―松浦博一(まつうら・ひろかず) 大阪大学COデザインセンター
京都大学法学部を卒業後、都市銀行に入行。約28年間の銀行員人生で、二度の大きな合併を経験(本部と現場を18回転勤異動)し、管理監督者である支店長、部長時代に人事管理、経営マネジメントを学ぶ。その後独立系システム会社へ出向・転籍し、管理部門(総務・人事・労務等)の責任者を経営職階で約10年を過ごし、現在は大阪大学COデザインセンターに教授(URA シニア・リサーチ・マネジャー)として産学官民連携を担当。

 

―Cihangir Istek(イステッキ・ジハンギル) 大阪大学COデザインセンター
イスタンブール工科大学建築学部を卒業後、英国UCLバートレット校建築学部で修士課程、東京大学では空間におけるアフォーダンスとコミュニケーション力を専門とし博士課程を終了。1986年以来、トルコ、英国、日本の設計事務所や大学で国際的に働き、2015年〜2019年までico-D, the International Council of Designの理事会に携わった。現在、大阪大学COデザインセンター「ソーシャルデザインとイノベーション」部門の特任教授。デザイン思考・実践、地域社会と連携して教育・研究している。

 

―花田愛(はなだ・あい) 株式会社オカムラ ワークデザイン研究所
大学院卒業後、オカムラに入社。専門は芸術工学。オフィスや公共施設の空間デザインを経て現職。現在は、コミュニケーションと環境をテーマに、これからのはたらき方、学び方とその空間の在り方についての研究に従事。社内外のダイバーシティ推進プロジェクトを担当。大阪大学招聘教員。著書に「オフィスはもっと楽しくなる – はたらき方と空間の多様性 -」がある。

 

―谷口美虎人(たにぐち・みこと) 株式会社オカムラ ワークデザイン研究所 
大学時代より「働く場」と「人」の関係に興味を持ち、ワークプレイスデザインを専攻。入社後、オフィス環境の提案営業を経て現職。現在は、ウェブマガジン・ペーパーマガジンの企画・編集、働く環境についての研究に従事。ライフとワークについて考えるWORK MILL主催の共創プロジェクト「Work in Life Labo.」のディレクター兼研究員としても活動中。大阪大学招聘教員。

 

2020年9月24日更新

テキスト:谷口美虎人

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