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ウィズコロナ、アフターコロナ時代に選ばれる働き方・働く場のあり方とは?

全国的に緊急事態宣言が解除され、ウイルスの感染に注意しながら経済活動を再開していくウィズコロナの期間に入りました。時差出社、ソーシャルディスタンシングの確保などまだまだ通常の生活とは異なる不便な点もありますが、アフターコロナに向けて着実に進んでいます。

オカムラでは新型コロナウイルス感染症対策としての在宅勤務に関する実態調査をおこない、「慣れない在宅勤務 どんなことが起こっているのか緊急調査」、ウィズコロナの期間のオフィスを考えるレポートを公開してきました。今回は、現在のウィズコロナ、そして特効薬やワクチンが開発されたアフターコロナの時期にどのように働いていくのかについてのレポートを2回にわたってお届けします。第1回目の本記事ではウィズコロナ、アフターコロナにおこないたい働き方や選ばれる働く場のあり方についてご紹介します。

「安心・安全」を実現するために、在宅勤務を希望

5月25日に政府が緊急事態宣言の解除を発表しました。しかし、ウイルス感染の危険がなくなったわけではなく、感染のリスクを下げながら過ごす「ウィズコロナ」の期間に移行したと言えます。3密を避けるために、オフィスにおいても人口密度を下げたり、座席間の距離を広げたり、こまめに清掃や除菌をおこなったりと様々な対策がとられています。多くの企業では、いきなり全員のワーカーをオフィスに出社させることはできず、在宅勤務を併用しながら業務上、出社の必要性が高い人からオフィスで勤務させているのが実情です。ではウイルス感染の危険性が残る中で私たちはどのように働いていくべきなのでしょうか。

ウィズコロナの期間におこないたい働き方について聞いてみると、8割以上の人が「できる人は在宅勤務し、必要があれば出社して働く」ことを希望していることがわかりました(上図)。さすがに感染の危険性がまだある中で「ビフォーコロナのように全員が出社して働く」と答えた人はひとりもいません。「安心・安全」を第一にこの時期を乗り切りたいという意思を感じることができます。では、この時期に主に働きたい場所はどこなのでしょうか。

回答を見ると、おこないたい働き方と同じく、「自宅・実家」が8割近くを占めることがわかります(上図)。オフィスに様々なウイルス対策の工夫がほどこされていても、都市部を中心にオフィスに至るまでの通勤経路での混雑を不安視する声が多く聞かれます。できる限り密になる状況を避けるために自宅・実家での勤務を希望する人が多いことがわかります。

「安心・安全」と感じられる3つのポイント

ウイルス感染の状況をみながら、段階的に出社する社員の割合を上げていくウィズコロナの時期ですが、実際に出社した社員が、このオフィスは「安心・安全」であると感じるポイントは何なのでしょうか。

ワーカーの答えで特に多かったのは「ローテーションなどでオフィスの人口密度が抑えられている」「ソーシャルディスタンシングが確保されている」「家具や扉の取手などがしっかりと消毒されている」の3項目です(上図)。3密を避けるための方策に加え、清潔を保つための習慣によって多くの人が「安心・安全」なオフィスになっていると感じられるようです。

他にも「オフィス内での行動に関するガイドラインが設けられている」「対面での会議はおこなわずオンラインでおこなっている」といった項目も上位にきています。確かに、オフィスを提供する側がいくら工夫をしたとしても、実際にそこで働く人がどうふるまっていいのかがわからなければ十分な効果があらわれませんし、対面での会話を伴う会議はなるべくこの時期避けたいところです。

アフターコロナは在宅を軸に?

では、ワクチンや特効薬が開発され、ウイルス感染の危険性がなくなったアフターコロナの時期はどんな働き方や場所が望まれるのでしょうか。まず、アフターコロナにおいて、今回体験したような在宅勤務をどのようにおこなったらよいかについて尋ねてみました。

緊急事態宣言が出される前の回答を見ると、6割近い人が「基本的には出社するが、必要があれば在宅勤務を認める」と答えていましたが、緊急事態宣言後にほとんどの人が在宅勤務をおこなうようになってからの回答を見てみると「在宅勤務を基本とし、必要があれば出社する」がトップになっています(上図)。オカムラでは過去3年にわたり、同様の質問をしてきましたが、在宅を基本とする働き方が出社を基本とする働き方を超えたのは今回初めてです。長期化する在宅勤務の中で最初はいろいろ起こっていた問題も乗り越えられるようになってきたためではないかと考えられます。新型コロナウイルス以前には1割台にとどまっていたテレワーク採用企業がこれを機に一気に増えるかもしれません。

では、アフターコロナで主に働きたい場所はどこなのでしょうか。

最も多かったのは「自拠点のオフィス」で45%超の人が選択しています(上図)。次いで約3割の人が「自宅・実家」と答えています。このデータについては2つの見方ができそうです。まず、テレワークに長く携われてきた人であれば、オフィスで働きたい人が5割を切ったことに驚かれるのではないでしょうか。オフィスはまさに仕事のために特化された場所で、効率よく働くために長年デザインされてきました。家にはない、快適なイスや、高速で印刷ができる複合機、議論を展開できるホワイトボードなど便利なものにあふれています。今まで調査してきた中では、その働きやすさから圧倒的な支持を集めていました。そのオフィスを選ぶ人が5割を切ったことは、ワーカーの意識が大きく変化したと言えます。

もうひとつの見方は、在宅勤務を基本とした働き方を望んでいるのにもかかわらず、「自宅・実家」が1位にならなかったのはなぜか、という点です。これについては在宅勤務を経験した人の多くが、今のままの「自宅・実家」は働くために最適化されていないと感じていることが影響しています。今回は緊急事態で強制的に在宅勤務をしなければいけない状況になった人も多かったと思います。今後、在宅勤務を認める企業が増え、オフィスに出社する日と、在宅で働く日を選択できるようになるのであれば、自宅や実家の環境も効率よく働けるように変えていく必要があります。

「オフィス」と「在宅」が2項対立ではない時代に

今回の新型コロナウイルスの流行以前のことを思い出してみると、在宅勤務は育児や介護に従事している人など限定的な対象がおこなうものであったり、台風など自然災害の時に特例としておこなうものだったりした企業も多かったと思います。「在宅勤務は特別」という意識があり、なかなか全員が自然におこなう環境ではありませんでした。しかし、今回の事態により、多くの人が在宅勤務を経験することで、在宅のメリット、オフィスのメリットどちらも身をもって感じられたのではないでしょうか。そのどちらの恩恵にもあずかれるように、どのようにルールを決め、環境を整えていくのか、アフターコロナの時代に向けて、今から準備しておく必要があります。

2020年6月25日更新

テキスト: 池田晃一(株式会社オカムラ)
調査:オカムラ ワークデザイン研究所 2020年
データ参照元:新型コロナウイルス感染症対策としての在宅勤務調査 緊急事態宣言前後の変化版