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アクティブファイルを把握しよう ― 個人で取り組むペーパーレス化で業務効率アップ

皆さんは普段働いている中で、どれくらいの量の“紙の資料”に触れているでしょうか。電子化が進んでいるとはいえ、まだまだ職場の日常には、多くの紙が散見されるでしょう。

オフィスのペーパーレス化は、印刷のコストや保管場所の削減など、さまざまなメリットがあります。また、昨今はフリーアドレスやABW(Activity Based Working)といった柔軟な働き方が広がっている背景もあって、オフィスづくりや運用においても、コンパクトに個人単位で使用できる収納・ロッカー(個人用収納家具)の導入や個人がオフィスに保管・保存している文書(個人保有文書)の削減への関心も高まっているようです。しかしながら、「個人の収納スペースが減ったら各ワーカーはそれに対応できるのか」「最低限必要な収納量はどのくらいなのか」といった具体的な検証は、あまり為されていません。

そこでオカムラでは、オフィスワーカーを対象にオフィスにおける個人保有文書に注目したアンケート調査を行いました。また、個人保有文書がどの程度活用されているのかを把握するため、個人保有文書のうち、特に最近1ヶ月間で仕事に使用し、現在も個人保有している文書を「アクティブファイル」と定義して分析を進めました。

ここでは、調査・分析の結果と、自社オフィスでの個人保有文書の削減の取り組み事例についてご紹介します。

個人保有文書とアクティブファイルの実態

個人保有文書量に関する調査では、該当する紙資料や冊子・書籍をすべて積み上げると想定して、その概ねの高さを回答してもらいました。

その結果、オフィスワーカー全体でみると、個人差はあるものの一人当たり平均131.6cmとなりました。これは一般的なデスクワゴン1.5台、壁面キャビネット1.5段に収納できる量に相当します。また、自席がないフリーアドレスワーカーでは同72.9cm、それに対して自席があるワーカーでは同202.9cmとなり、約3倍の差がみられました。

次に、アクティブファイル量について、オフィスワーカー全体では一人当たり平均26.9cmとなりました。また、フリーアドレスワーカーでは同20.0cm、自席があるワーカーでは同35.2cm、個人保有文書量に占める割合はそれぞれ27.4%、17.3%となっています。つまり、自席があることでアクティブファイル以外の使用頻度の低い文書がストックされがちなことがうかがえます。

さらに詳しくみると、フリーアドレスワーカーの約7割、自席があるワーカーでもその半数は、アクティブファイル量が20cm以下であることもわかりました。

これらはあくまで参考値ですが、個人用収納家具の選定や個人保有文書量の削減を検討される場合の目安とされてはいかがでしょうか。

自社オフィスでの取り組みとその効果

新築オフィスビルに入居する自社オフィス移転プロジェクトでは、移転を機により柔軟な働き方を実践するため、オフィスに保管・保存する文書量の削減を目指しました。その一環として、入居予定のオフィスワーカーを対象とした個人保有文書量とアクティブファイル量に関する入居前調査を行い、その結果をもとにワーカー主体で個人保有文書の削減・適正化に取り組みました。また、取り組みの成果を把握するため、同様の調査を入居後にも実施しました。

入居前、対象ワーカー全体の個人保有文書量は一人当たり平均165.8cm、アクティブファイル量は同30.5cmとなり、前述のアンケート調査の結果に比べて、個人保有文書量は約25%も多い状況でした。さらに、対象ワーカーの約8割が個人保有文書の整理・整頓や削減が必要であると感じていました。

これらを参考に、入居後の個人用収納家具として、フリーアドレスワーカーには約40cm角の個人用ロッカー1ヶ所、自席があるワーカーにはデスクワゴン1台を割り当てることにしました。そして、対象ワーカー一人ひとりが個人保有文書量の削減目標を設定し、チームメンバーに目標値と進捗状況を明示しながら取り組みを進めました。

その結果、入居後には対象ワーカー全体の個人保有文書量は一人当たり平均46.6cmと入居前に比べて約72%の大幅削減を達成しました。アクティブファイル量も同17.2cmと削減されていることから、個人保有文書の電子化も推進されたことがわかります。また、個人用収納家具がコンパクトになったため、収納スペースが足りないといった不満が心配されましたが、入居前に「ちょうどよい」と感じるワーカーが全体の約半数であったのに対し、入居後は約7割まで増加、一定の評価が得られていました。

これらの個人保有文書に関する取り組みは、働き方にも影響を与えています。仕事に必要な文書を検索する時間(文書検索所要時間)は、入居前に一人・一日当たり平均17.9分でしたが、同12.3分と約31%削減されています。そのうち、個人保有文書の検索所要時間も同8.8分から同6.9分と約22%削減されています。文書検索所要時間の削減量は一人・一日当たり6分弱と短い時間ですが、年間に換算すると一人当たり勤務日約2.9日分に相当します。余分な労力を省き、業務効率を向上するためにも有用な取り組みといえそうです。

アクティブファイル、把握していますか?

ご紹介したアンケート調査では、個人用収納家具の収納容量と個人保有文書量の相関関係、つまり収納できるスペースが増えれば個人保有文書量もそれに合わせて増えてしまう傾向もみられました。オフィスづくりでは、過不足のない、適正な収納容量の個人用収納家具を用意することもポイントです。

また、個人保有文書やアクティブファイルの内容は、オフィスワーカーごとに異なるものです。日々の業務において何がアクティブファイルなのか、どのように保管・保存すると便利なのか、きちんと把握しておくことも大切です。このような働く人の主体的な意識・行動を無理なくサポートする場や運用の要件を明らかにするために、今後の調査・検証とレポートにご期待ください。

2020年1月30日更新

リサーチ:上西 基弘(株式会社オカムラ)
編集:西山 武志
イラスト:野中 聡紀
データ参照元:アクティブファイルに関する社内調査(オカムラ調べ)