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すべてのワーカーのウェルビーイング(幸せな働き方)を本気で追求する。三井不動産・岡村英司さんに聞いた、場とメディアから発信する意義とは?(ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲)

「場」と「メディア」の両輪で、働き方の新しいあり方に向き合っている三井不動産。同じく「場」と「メディア」を運営しながら共創を生み出そうとしているWORK MILLにとって、その取り組みは以前から気になる存在でした。

本企画ではお互いの編集部がそれぞれの場を訪れ、相互に取材し合うことで、「発信」と「場づくり」の関係性を探っていきます。

今回、WORK MILL編集部の山田・前田・宮野の3名が訪れたのは三井不動産が運営するシェアオフィス・レンタルオフィス「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」店。

ご案内してくださったのは、企業の働き方改革の支援などの働き方コンサルティングを担当する三井不動産・岡村英司さん。実際に施設を紹介していただきながら、空間デザインの意図や人のつながりを育む仕掛けについてお話を伺ってきました。

幸せな働き方伝え隊 × WORK MILL コラボレーション企画!

三井不動産ワークスタイリング 公式note「ウェルビーイングのヒント発見!幸せな働き方伝え隊!」にて、WORK MILLを取材いただきました! 10周年の節目に掲げた新ステートメントと、そこに込めた思いに触れながら、これからの「働き方」を考えていきます。

WORK MILL編集部がワークスタイリング東京ミッドタウン八重洲へ!

中に入ってまず目に飛び込んできたのは、エントランスの天井から伸びる白い国産ヒノキのオブジェ。足元や壁にはやさしい緑が広がり、オフィスというよりおしゃれなギャラリー空間に足を踏み入れたような感覚になります。

入口の横には、撮影した自分の顔写真を元に作る「オリジナルウェルビーイングステッカー」を印刷できるマシンがあり、誰でも体験できるそう。

取材日は、12月ということもあってサンタクロース仕様です。プリクラのような写真が撮れて、取材メンバーもほっこり。

奥へ進むと、オフィス空間は4つのゾーン「INSPIRE」「RESPECT」「CONNECT」「FOCUS」に分けられ、さまざまな利用シーンに合わせてデザインされています。

個室は全45室。集中できるスペースになるよう、照明にもこだわったそう。

膝掛けやスリッパの貸し出しもあり、快適に過ごせるための細やかな配慮が行き届いています。防音パネルがあるので安心して作業に没頭できそうです。

一方、オープンスペースにある半個室エリアは、背面が見えないように設計されていて、開放感とセキュリティ面での安心感を両立しています。

全13室の会議室は、それぞれ百人一首をテーマとした名前が付けられています。

「CONNECT」ゾーンにあるオープンキッチンは、そこに居合わせた人同士が自然とゆるくつながれる場となっていました。

飲み物を手に、肩肘張らずフラットな雑談ができるのもカウンターテーブルがあるこの空間ならでは。

WORK MILL編集部で「これ、いいですね!」と盛り上がったのが、シェアキッチンに置かれていた共有のマグカップ。

手に取ると、陶器のような温かみのある質感とずっしりとした程よい重みが伝わってきます。

実はこれは「NAGORI」という名前のオリジナルマグカップ。あえてさっと持てない大きさ・形にすることで、自然と両手で包み込むように持つことになり、作業中にキーボードから一度手を離してふっと一息つける時間が生まれるんだとか。

さらに、コミュニティマネージャーが企画して常設してあるのが、利用者がリフレッシュできる「さぼテリア」。15分ほどの雑談はもちろん、ちょっとした相談、さらに塗り絵やおみくじ、パズルなどで息抜きができるなど、憩いの場になっているそう。

現在、コミュニティマネージャーは全拠点で約6名。日常的なコミュニケーションはもちろん、イベントを仕掛けるなど場を能動的に動かす役割を担っている。

人が自然につながる順番は「いる・なる・する」

宮野 玖瑠実(みやの・くるみ)。WORK MILL 編集部メンバー。共創空間Open Innovation Biotope “Sea”での共創活動やイベント企画運営に携わる。

ぐるっと全体を回ってみて、自然とコミュニケーションが発生しやすい仕掛けが散りばめられていると感じました。

この「場」をつくるにあたり、どんなコンセプトがあったのでしょうか?

宮野

岡村

コロナ禍をきっかけに、さまざまな事業者がシェアオフィス事業に参入しました。それで、「いつでもどこでも働ける」という価値は、当たり前のように広く提供されるようになったんです。

そこで、改めて「三井不動産がシェアオフィスをやる意味は何なのか?」をディスカッションした結果、行き着いたのが「ウェルビーイング」というキーワードでした。

岡村 英司(おかむら・えいじ)。三井不動産 ビルディング本部 ワークスタイル推進部 ワークスタイルデザイングループ長。2001年、三井不動産株式会社入社。オフィスビルリーシング業務を経て、2016年より三井デザインテック ワークスタイル戦略グループにてオフィスコンサルティング業務を推進。約30社、5万坪のオフィス改革を実施。現在は、三井不動産ワークスタイル推進部にて、働き方のコンサルティングに携わる。

岡村

「すべてのワーカーに、幸せな働き方を。」という想いのもと、我々がその伴走者になりたい。そのために「人と人がつながる場」であることを重視した新コンセプトの旗艦店として作ったのがここ東京ミッドタウン八重洲店です。

それまでは当社が手がけるシェアオフィスは個々が快適に働けるように個室中心の設計が多かったんです。でも、ここはオープンな空間やカフェエリアを充実させ、出会った人と気軽につながれる場にすることを意識しています。

それが「ウェルビーイング」につながる、と?

宮野

岡村

「ウェルビーイング」、つまり「幸せ」とは何なのか。ハーバード大学の80年以上にわたる「幸せ」についての研究があります。

さまざまな家族形態の個人に対してインタビューを続けた結果、幸せとは「良好な人間関係」だと結論を出しているんです。

かなり大きな方針転換だと思うのですが、社内でも納得感があったのでしょうか?

宮野

岡村

実を言うと、最初は戸惑いの声もありました。「いきなり幸せとか言い出して大丈夫?」とか(笑)。

それでも「何のために働くのか」「何のために生きるのか」を考えていくと、「自分が幸せになりたいし、誰かを幸せにしたいから働いている」という感覚に自然と行き着いた。

まだ道半ばではありますが、我々はそこを信じて取り組んでいます。

取材時に常駐していたコミュニティマネージャーの片島さん。取材中、何気ない会話の流れで声をかけると、さっと場に入り、編集部にも自然に話題を広げてくれた。

人間関係が鍵だとすると、コミュニティマネージャーの存在は重要ですよね。

宮野

岡村

そうなんです。実は、私たちのシェアオフィスに以前は企業ニーズに応じて人をつなぐ役割をもつ「ビジネススタイリスト」というスタッフはいたんです。

ですが、「ここはビジネスマッチングさせるだけの場所なのか?」という問いが生まれて。今の答えは、ビジネスにつながるのは大歓迎だけど、いきなりそこを目的にするのは違うかな、と。

岡村

医学博士の石川善樹さんが、大人と子どもの関係性は「いる」→「なる」→「する」という段階で進んでいくとおっしゃっていて。しかし、大人は、最初からビジネスを「する」ことだけを目指してしまう。

まずは一緒にいて、仲間になって、それから「する」。その順番があってこそ、長期的な人間関係が生まれ、アイデアをぶつけ合える関係性が育つ。

そこを飛ばして「する」だけやっても新しいものは生まれない。考えてみれば当たり前ですよね。

コミュニティマネージャーが「いる」を大事にすることで、最終的に「なる」につながった例もあるのですか?

宮野

岡村

しょっちゅうありますよ。雑談の中で「今こんなことに悩んでいて」という話から、「それなら〇〇会社の△△さんに今度会ってみますか?」といった具合で、結果的にビジネスマッチング的な流れになることも多いです。

また、コミュニティマネージャーが企画したイベントの参加者同士が仲良くなることも日常的に起こります。

すごく素敵です。イベントはどんなことを意識して開催しているのですか?

宮野

岡村

我々が一番大事にしているのは、自己開示他者理解です。

まず「いる(Being)」の部分をつくること。肩書きではなく、その人が「どんな価値観を持ち、どんな思いで仕事をしているのか」を知る。イベントを通じてそれをどう引き出すか、他者を理解できる状態をどうつくるか、常に意識しています。

非常に共感します。

私たちWORK MILLもよくイベントを開催するのですが、参加者の満足度が高い会ほど、名刺交換を最後にしているなと思っていて。

自己開示や価値観の共有が自然とできるイベントになっていると、自然とそういう順番でコミュニケーションが起きるんだな、と感じています。

宮野

「ここに来る人だけじゃない」──すべてのワーカーにウェルビーイングを届けるために

前田英里(まえだ・えり)。2025年冬より、WORK MILL ウェブ編集長を務める。

ワークスタイリングでは、場だけでなく「ウェルビーイング」をテーマにしたnoteも運営されていますよね。

改めて、なぜ情報発信も始められたのでしょうか?

前田

岡村

すべてのワーカーに幸せになってもらいたい。そんな想いを胸に日々本気でがんばっているので、ワークスタイリングに来る人以外にも、もっと広く届けたかったんです。

三井不動産ワークスタイリングの公式note「ウェルビーイングのヒント発見!幸せな働き方伝え隊!」。

メディアを通して、今まで嬉しい反応はありましたか?

前田

岡村

やはりワークスタイリングの会員さんから感想を聞くことが多いのですが、「記事を読むことが日々の仕事のちょっとした息抜きになっている」というお声をよくいただきます。

また、ある会員さんの働き方が素敵だったので取材させてもらったところ、後日「その記事を読んで応募を決めました」という方が現れて、結果的に採用に至ったという報告をもらいました。

それはとても嬉しいですね。

前田

岡村

立ち上げから約1年が経ちましたが、PVや読了率の目標は早い段階でクリアしていて。

現在は「読んだ人の行動や意識がどう変わったか」という部分に目を向けています。

岡村

それは数値で簡単に測れるものではないので、アンケートやイベントでの感想、日常の会話の中で出てくる言葉など、定性的な反応を丁寧に拾っているところです。

多くの人に読まれても、読者の心が動かなければ行動は変わりませんからね。

まさにこれからが本番というフェーズですね。1年間続けてきたなかで、想定外の発見はありましたか?

前田

岡村

一番大きかったのは「幸せな働き方」について一生懸命考え、行動している人がこんなに多くいるんだと実感できたことです。

企業や大学、行政など、立場は違っても、多くの人が「よりよく働きたい」「幸せに生きたい」と本気で向き合っている。仲間が想像以上にいると分かったのは大きな収穫でした。

メディアとして、大切にしている視点は何でしょうか?

前田

岡村

常にワーカーに対する目線をぶらさないことを意識しています。

たとえば、専門家の方にインタビューをするときも理論そのものではなく、「今の働き方をどう感じているか」「どんなふうに働いてほしいですか?」を聞く。

このメディアを読んでくれているのは、日々奮闘している現場にいる方々ですから、その人たちのヒントになるかどうか。働くという軸だけは、絶対に外さないようにしています。

なるほど、常に読者の顔が見えている感じが素敵ですね。

前田

人と人とのつながりを育てることが、社会を変えていくと本気で信じて

メディアで得た気づきを場に反映し、場で起きたことをメディアに拾い上げていく。

そうした双方向の循環ができると、新しい動きが生まれそうですよね。今、何か兆しはありますか?

山田

山田雄介(やまだ・ゆうすけ)。株式会社オカムラ ワークデザイン研究所 WORK MILL with Forbes JAPAN編集長。

岡村

まさに現在、その議論をしているところです。現状はどうしても一方通行の発信になりがちですが、「記事を読んでこう感じた」「こんなことを考えた」という声がコミュニティにつながっていく形をつくりたいんです。

たとえば、記事に登場した人と読者が集まって対話する場を設けたり、発信に対して意見が返ってくる仕組みをつくったり。リアルな場とメディアを行き来させながら、人と人のつながりを育てていきたいと考えています。

「ウェルビーイング」=「心地よさ」が注目されがちですが、働く上では成長につながるような負荷や挑戦も「ウェルビーイング」の一部になるのかもしれないな、と感じました。

山田

岡村

おっしゃるとおりです。結局、すべての根底にあるのは「人のつながり」だと思っています。

仕事でも人生でも、何か困ったときに支え合える関係があること。それ自体が、人にとっての幸せにつながるはずです。

岡村

今はもう、ただ物をつくって高く売ることだけに価値が置かれる時代ではなくなってきていると感じます。

もちろん、利益は大切。でも、それは目的ではなく、社会に価値を提供し続けるための手段にすぎません。何のために仕事をしているのか、どんな価値・存在意義があるのか。会社としてそんな問いに向き合わなければ、結果的に利益を継続することもできない。

場とメディアを行き来しながら、つながりを育てていく。そうやって、少しずつでも社会を変えていけたらと思っています。

その積み重ね、大事にしていきたいですよね。お取り組みの背景をじっくり伺うことができて、とても刺激的な時間でした。ありがとうございました!

山田

幸せな働き方伝え隊 × WORK MILL コラボレーション企画!

三井不動産ワークスタイリング 公式note「ウェルビーイングのヒント発見!幸せな働き方伝え隊!」にて、WORK MILLを取材いただきました! 10周年の節目に掲げた新ステートメントと、そこに込めた思いに触れながら、これからの「働き方」を考えていきます。

2025年12月取材

取材・執筆=矢内あや
撮影=栃久保誠
編集=鬼頭佳代(ノオト)