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DE&Iが尊重される本当の理由 マイクロマネジメントをやめよう(澤円)

仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。

日本企業にありがちなとある「空気」について

多くのビジネスパーソンは、マイクロマネジメントという言葉は耳にしたことがあるでしょうし、そのよろしくない影響についてもご存じなのではないでしょうか。

マイクロマネジメントとは何か、ChatGPTさんに訊いてみました。

マイクロマネジメント(Micromanagement)とは、上司や管理者が部下やチームの業務に対して過剰に細かく指示を出し、すべてのプロセスや詳細を監視しようとする管理手法を指します。これは、業務の進め方や細部に過度に介入し、従業員に自主的な判断や行動をさせない管理スタイルです。

とりあえず、ポジティブには定義されていないようですね!

そりゃそうです、いい大人があれこれ細かく口出しされたり指摘されたりして、仕事のパフォーマンスが上がるわけがない。

でも、今でもこのようなマネジメントスタイルが横行していることには、日本企業の特徴とも言えるある「空気」のようなものがあります。

これは、ボクが言っていることではなくて、アメリカでMBAを取った友人から教えてもらったお話です。

友人が取った科目は「日本企業をマネジメントする方法」だったようなのですが、その中で「日本企業は社員を子供扱いする」という言葉があったそうなのです。

いやこれ、ひどくない?と思う一方で、やっぱバレるよなー……とも思いました(笑)。実際に子供扱いしてますもんね、日本企業。

マイクロマネジメントって、子育て初期段階では絶対必要だったりしますよね。何せ、人間の子供はほぼ何もできない状態で生まれてきます。危機管理も何もできませんし、自己防衛の機能も不十分です。

そうなると、とにかく目を離さないようにしなくちゃいけませんし、一つひとつの行動にアドバイスをする必要もあります。

そうしていくうちに、まずは生き物として生きられるようになり、次に社会生物である人間として生きられるようになっていくわけです。なので、どんな人間であれ、幼少期まではマイクロマネジメントが必要です。

しかし、社会人になってからのマイクロマネジメントは、はっきり言って「思考能力を下げるだけ」というのがボクの持論です。マイクロマネジメントは、メンバーの判断を必要としません。マネジメントをする側の意向だけが機能することが求められます。

メンバーは、人間の形をしたロボットとして動くことが求められ、それから逸脱すると、「エラー」「バグ」と認識されて、叱責という手段による「改善」が執り行われるわけです。

実に窮屈ですよね。こんな場所で働くのは、本当にしんどいものです。

マイクロマネジメントをしている人たちは悪人なのか

でも、こういう職場を作る可能性は、誰でも持っています。

なぜかというと、マイクロマネジメントの背後にあるのは「悪意」ではなく「正義」である場合があるからです。ビジネスは社会貢献をすることであり、会社は社会貢献を効率的に行うための器です。

「社会にいいことをしましょう!」というとなんだか理想主義的なお話に感じますが、残念ながら今の発達した資本主義社会においては、徹底した「効率性」「費用対効果」「迅速性」が求められがちです。

結果的に、「もっと手際よく費用を抑えて素早くビジネスしたい!」と思うあまり、「最適化」という名のもとにあらゆる自由度・自主性を削ってしまい、「考えずに動く」ことが徹底されるようになるわけです。

しかし、短期的にはこれが効果を上げる場合もあります。そうなると、勝てば官軍で「自分のやり方は間違ってなかった!」と胸を張る経営者やマネージャーが出てくるわけです。

でも、このようなやり方をしていると、落伍者も多くなります。そんな時は「ついてこられないやつが悪い」と切り捨ててしまい、残った人たちをさらに細かく管理たり、不幸にも何かのプロセスで新たに入ってきてしまった人をしっかり支配下に収めて同様のマネジメントを繰り返そうとするわけです。

しかし、こういうやり方はどこかで違法行為に繋がったり、メンバーの大量離脱の穴埋めができずに破綻するリスクも極めて高くなります。

では、このようなマネジメントに陥らないために必要なマインドセットはなんなのでしょう?

DE&Iが尊重される本当の理由

DE&I(ダイバーシティ・イクイティ・アンド・インクルージョン)という言葉、昨今よく耳にするようになりましたよね。

日本語で「多様性、公平性、包括性」と訳されるこの三つが、経営において極めて大事であると有識者の間ではすでに共通認識になっているようです。

DE&Iと聞くと「あぁ、女性活用ね」とか「外国人採用ね」とか連想する方もおられるかもしれませんが、それは全体の中の一部でしかありません。

DE&Iの根本の部分で大事なのは、「個の持つ資質や特徴、能力を尊重して社会に貢献する機会を提供する」ということです。

このような社会を実現するためには、誰か一人が頑張ればOKというものではなく、人類の最小単位=個である自分が、自分の頭で考えることが大事になってくるのです。

もちろん、サポートが必要な場面はあるでしょう。支援を求める人もいるでしょう。でも、これはマイクロマネジメントとは異質なものです。

マイクロマネジメントは、この資質や特徴、能力を無視もしくは支配下に置くことを是とします。DE&Iの世界観においてこれはNGです。

あくまで尊重されなくてはならないのは個であり、全体プロセスが回ることではありません。個を尊重する結果として、プロセス全体がうまく回るようにデザインするのがこれから必要とされているマネジメントです。

では、なんでそんな面倒なことをするのでしょう?

これは、とにかく世の中のニーズがあまりにも多様化してきているからです。

誰にでも受け入れられるようなヒット商品を生み出すのは、もはや至難の業です。家電製品も、すべてのユーザーのニーズを満たすものを作ることはほぼできなくなってきていて、いかにして「個人レベルのニーズを組み入れるか」にシフトしていっています。

そのためには、多種多様な考え方が自然と取り入れられるような組織作るが求められるわけです。このような組織や社会のニーズに対して、マイクロマネジメントはかなり相性が悪そうです。

なぜなら、マネジメントする側が全知全能の神のようにあらゆる事象を網羅的に把握しなくてはならないわけですから。

ということで、「世の中いろんなやり方や考え方があってもいいよね〜」ともっと気楽に構えるところから始めましょう。

今やテクノロジーの力で、あらゆるものが細かく観察できる時代です。自分の思考くらいは、時にはのんびりと解放させてあげるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。

アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト