欠けている部分の指摘は誰でもできる 「会社の悪口を言う」をやめよう(澤円)
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
面接の時に起きがちなこと
ボクはマイクロソフト勤務時代に、数多くの新卒・中途の採用面談をさせてもらいました。本当にたくさんの面談をさせてもらって、今のボクのキャリアにしっかり繋がっています。
新卒でも中途でも、必ず質問するのは「志望動機」。なぜボクがいる会社を選んでくれたのかを聴かせてもらいました。
「自分の身に着けたスキルを活かしたい」
「御社のビジネスに自分の経験が役に立つ確信があります」
「テクノロジーの最前線で仕事をしたい」
こんな感じで、ポジティブな動機を教えてくれる人が大半なのですが、時々いるのが……。
「今の会社は硬直化していて未来が感じられないので」
「役員たちの考えが古すぎてやっていられないのです」
「給料が安すぎてどうにも……」
うん、本音出た!って感じですね(笑)。もちろん、正直なことはいいことです。ただ、この手の物言いにはリスクも付きまとうのは間違いなさそうです。
欠けている部分を指摘するのは誰でもできる
「今勤めている会社の問題はここです」と語ることを、「自分は問題点を指摘できる優秀なビジネス脳を持っている」と考えている人が、一定数いるようです。サラリーマンの新橋の赤ちょうちんでは、背広姿で自社の「イケてない部分」を大声で話している人をたくさん観察することができます。
「いや、ほんとに社長分かってねーからさ、オレ言ってやったんだよ~~!」とか。「XX部の連中は、ビジネスが分かってねーんだよなー! ほんともっと勉強しろってんだよ!」とか。
さぞかしお仕事のできる方なんだろうなぁと思わせつつ、
「最近のはやりのアレ、なんだっけ? チャックGTP?」(正確にはChatGPT)
なんてトンチンカンなフレーズが飛び出したりして、実に愉快な気分になったりします。いずれにせよ、「会社のイケてない部分」を見つけて悦に入っても、正直本人の株が上がるわけもなく、むしろ下がるだけです。
というのも、「欠けている部分」は誰でも見つけられるものだからです。必ずボクが例に出すのは、ランドルト環。視力検査の「C」の輪のことです。これ、欠けている部分を指さすことで視力を測るわけですが、裏を返すと「見つけやすい状態」だから検査が成立するんですよね。
ボクは「欠けている部分を指摘するだけならバカでもできる」と乱暴な物言いをさせてもらっています。実際、見つけやすい部分だけに目がいっているわけですからね。
逆にランドルト環の「丸い部分を説明しなさい」と言われるとどうでしょう?なかなか難易度高くないですか? でも、そこに着目ができ、言語化できる人こそ「デキる人」ではないかなって思うのです。
仕事ができる人たちの特徴
ボクの周りには、本当に魅力的な起業家たちがたくさんいます。その人たちに共通している資質は「環境のせいにしない」ということです。
もちろん、環境に不満を持つことはあるでしょう。そして、それはある意味大事な気付きでもあります。
一方で、その不満を改善するための思考に切り替えられないと、単なる他責思考にもなりかねません。会社ぐるみで法律に反することをしているとか、そういう極端な事例はともかくとして、完ぺきな環境が整っている会社なんてそうそうありません。
なので、いかにして自分にとって快適な職場環境にしていくのか、というのもビジネスパーソンとしては求められる思考ではなかろうかと思います。自分がコントロールできる部分に着目し、ちょっとずつでも改善していくことで、パフォーマンスを向上して会社に貢献しようと思う人は、どこの会社でも欲しがられる人材になります。
「仕事ができる」というのは、「与えられたタスクを完ぺきにこなす」ということとイコールではない、というのがボクの考え方です。与えられた仕事をやり遂げるのは、いわば必要条件。十分条件は、「さらに活躍できる環境を自分で整えて、周囲の人も含めてより活躍できるようにする」ことだと思います。
転職する・しないにかかわらず、常に自社のいいところを言語化できるようにすることと、会社の課題を自分事にして、改善のための方法を考えて実行することを心がけてみませんか?
そう意識するだけで、会社の見え方も変わるし、そして周囲からの目も変わることでしょう。そして、自分の気付きを恐れずにどんどん周囲にアウトプットしていくことも大事です。そういう人の元に、とてつもなくステキなチャンスが優先的に回ってくるものです。
さて、より「デキるビジネスパーソン」として活躍するために必要な「思考」について言語化した本を出版します。その名も「メタ思考」。自分と、自分を取り巻く環境を客観視して、アクションにつなげていくための思考プロセスについて書いた本です。ぜひ手に取ってみてくださいね。