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「今を愚直に生きること」でいい流れに繋がる 先のことを考えすぎるのをやめよう(澤円)

仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。

学生さんと会話していて気づいたこと

皆さんこんにちは、澤です。ついこの前まで門松があった気がするんですけど、いつのまにやら節分も終わって、春が出番待ちな雰囲気ですね。時間が過ぎるのが早すぎ。困るなぁ。

さて、つい先日まだまだ未来たっぷりの学生さんたちと冬合宿に出かけてきました。ボクの軽井沢の別宅に集まってもらって、たっぷりと学生さんと会話ができて、とても楽しい二泊三日の時間を過ごせました。

そして、学生さんとの会話の中でしょっちゅう出てきた言葉が「将来のために何をすればいいですか」とか「今やっていることが未来のキャリアにつながるか不安で」とか。やっぱり、未来というのは不安と直結するものなんだなぁと改めて思いました。

ボクが学生だった頃は、ネットも何もなかったし、明らかに刹那的にその日暮らしって有様でした。本当に何も考えてなかった……。いや、ボクがアホだっただけなんですけれど。

大きな不安を持つことなく日々生きていられたのは、健康だったことと情報が少なかったことの二つの要素の結果かなって思います。

健康だと不安な気持ちになりにくいですし、情報が少なくかつボクのように何も考えていないと「急に大変なことにはならんだろう」くらいに思っていた気がします。特に、ボクが学生だった当時の日本はバブル絶頂期で、国全体に不安な空気が全然なかったんですよね。

それが、いまや日本は長いトンネルから抜け出せる気配すらなく、そして自分からアクセスしたくなくても飛び込んでくる情報は増える一方。若い世代に限らず、いろんな人が不安を感じるのも無理もない環境が整いすぎていますね。

ネットの登場によって、世界中で起きている様々な出来事をすぐに知ることができるようになりました。Statistaという会社の調査レポートによれば、2012年から2022年までの間のデータの増加量は14.9倍だとか。

人間の脳はほとんど進化してないでしょうから、情報過多なのは明らかですね。おまけに、ネガティブな情報の方がセンセーショナルに報道されがちで、どんどん不安になっちゃうのは実に自然な展開です。

今の学生さんは就職に関していえば「売り手市場」とは言われていますが、それでも自分が望むキャリアが得られるのか、あるいは「やりたいこと」が見つけられなくていい仕事をできるのか、不安になるのは無理もありません。

ラ・ロシュフコーさんの箴言(しんげん)が最高

どうやら、未来を恐れる人はずっと昔からいたようです。

そんな人々に対するアドバイスとして、1613年生まれのフランスの貴族であり箴言家でもあったラ・ロシュフコーさんはこんな言葉を残しています。(ちなみに「箴言」は平たく言えば「格言」のことなのですが、ロシュフコーさんの場合には「箴言」って言われるようです)

おなじ頭を使うなら、この先身にふりかかるかもしれない不幸を案ずるのに使うより、現にわが身にふりかかっている不幸に耐えるために使うほうがよい。

ラ・ロシュフコー箴言集(岩波文庫)

これぞ箴言!って感じですね~。1600年代から、未来に不安を持っている人がたくさんいたことが垣間見られますね。今の時代よりも、病気や災害に対する恐怖は大きかったでしょうし、人権に関してもまだ成熟していないなかったでしょう。

そんな中で不安を感じるのは無理もないことだと思いますが、「それよりも今に集中しようよ」っていう考え方をロシュフコーさんは提案していたわけですね。

他にも、こんな箴言があります。

自分の内に安らぎを見出せない時は、外にそれを求めても無駄である。

ラ・ロシュフコー箴言集(岩波文庫)

これも、現代にも通じる言葉だと思います。特にSNSが日常に深く入り込んでいる現代人は、ついつい答えを外に求めがちになっている気がします。

「あの人は立派な会社に勤めている」
「あの人はとても勉強をしている」
「あの人は素敵な家に住んでいる」

他の人たちのキラキラした一面を見せられると、ついつい「自分はあんな世界に行けるんだろうか……」って不安になるのは無理もないでしょう。

でも、自分を幸せにするのは自分だし、幸せは自分がコントロールできることに集中することで得られるのではないかなと思います。コントロールしようがない他人の人生に振り回されるのは、この際やめちゃいましょう。

なーんてえらそうに言ってるボク自身、30代前半までは人と比較ばかりして落ち込む生き方をしていました。そして、未来永劫こんなふうに冴えない生活をするのかな……と不安に思っていました。

しかし、どんどん仕事が忙しくなってきて、そして周囲の人に恵まれ運も味方して結果が出るようになったおかげで、随分と生きるのが楽になりました。

自分にまさかそんな日が来るとは思っていませんでしたが、大した才能もなく学歴も資格も何もないボクは「今を愚直に生きる」ことで、いい流れに乗ることができたようです。未来を心配することに脳みそを使いすぎていたら、こうはなってなかったように思います。

そして、ピーター・ドラッカーさんの言葉も響く

ラ・ロシュフコーさん同様に、数々の名言を残しているピーター・ドラッカーさんの大好きな名言も紹介させてください。

未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。

ほんとこれ、と思います。結局、予測だの予想だのって当てにならないものですし、当たったところで別に自分の人生がメチャクチャ豊かになるとは限らないと思います。

それよりも、まず目の前のことを一生懸命やるのと、「こうなるといいなぁ」とのんびり考えながら生きる方が、幸福な気がするんですよね。

人によっては、しっかり計画を立ててその通りに行動し、結果に繋げるのが得意なタイプもいるでしょう。それはそれで素晴らしいことですし、尊敬します。(自分は全くできないので……)

ただ、「そうしなくてはならない」と考えちゃうのは、自分に呪いをかけることだと思うんですよね。それより、もうちょっと気軽に、「こんな風になれたらいいなぁ」と考えるくらいがちょうどいいのかなと思います。

未来を案じすぎず、とにかく今できることに集中する。そして、ほんのちょっとしたチャレンジの種があれば、手を出してみる。

大変そうな仕事をとりあえず安請け合いしてみたり、今まで使ったことのないITツールを試してみたり。自分ができることをちょっと増やすためのチャレンジをすることが、未来を作ることにつながるかもしれません。

今できることだけで全てをすませてしまうのではなく、できないかもしれないことに手を出してみる。恥をかくかもしれないし、失敗するかもしれない。でも、その積み重ねこそが未来を作ることにつながるのではないでしょうか。

チャレンジするかどうかを決めることも、自分でコントロールできることです。この記事を読み終わったら、未来を心配しすぎるのをやめて、ぜひ「ほんのちょっとのチャレンジ」をしてみてくださいね。

編集:ノオト