リモート疲れに 企業向け・福利厚生に使えるウェルビーイング系サービス
コロナという終わりの見えない不安要素、リモートという全く新しいワークスタイル、外に出られないことで溜まる不満。あらゆる要因が積み重なり、我々のストレスは日々膨れ上がっていく。ストレスが多ければ多いほど、作業効率が停滞し、生産性が下がってしまう。そんな中、昨今ではリモートワーカーのモチベーション、および生産性維持のため、いかにウェルビーイングを向上させるかが企業にとっての重要な課題になりはじめた。この記事では、従業員のウェルビーイング向上に役立つサービスを紹介する。
ビジネスにおけるウェルビーイングの効果とは
はじめに、CDC (アメリカ疾病予防管理センター ) はウェルビーイングについて、「満足感、充実感、幸福感などを含むポジティブな感情を抱いている状態を指す」と定義している。ウェルビーイングには精神的、肉体的、知的、社会的など様々なジャンルが存在し、そのいずれものが個人の仕事におけるコンディションと密に関係している。ウェルビーイングの向上が具体的にビジネスに及ぼす影響について、次のようなことが統計(insync)で分かっている。
- 最大八倍のエンゲージメントの向上
- 最大三倍の生産性
- 個人のパフォーマンスのアップ
従業員の健康状態や精神状態は彼らの仕事ぶりに直接大きな影響を与える。生産性や作業効率には従業員一人ひとりの健康状態や精神状態が顕著に現れる。ウェルビーイングを向上させると言うことは、彼らの健康や感情に気を配り、彼らがベストを尽くせる環境を構築することと同義であると言える。特にコロナ禍で甚大なストレスが溜まる現在、ネガティブな感情の軽減、快適に働ける環境づくりの必要性が高まっている。自宅でできるウェルビーイング向上のためのサービス、並びにどのような企業がそれらを利用しているのかを紹介していく。
① 運動不足解消のための自宅フィットネス・ヨガサービス
運動は、ダイエットなどの効果だけでなく、ストレス解消にも有効であり、ウェルビーイングの向上に非常に大きな役割を担う。
企業も利用するフィットネスポータル:Motivation Alliance
アメリカの企業BSDIはMotivation Allianceという、個人だけでなく、企業全体のウェルビーイングのためのフィットネスポータルを提供している。使用者の目標達成にむけて進捗状況の記録および分析をリアルタイムで行うサービスで、社内でのデータの共有も可能。リモートで働く従業員の健康状態チェックに最適である。プラットフォーム内でのコミュニケーションツールが発達しており、企業全体で使用する際の連携や目標の共有、トレーナーとのやりとりもできる。米国政府機関、大学、病院システムなど、様々な団体、企業が使用している。
日本上陸を果たした、在宅フィットネスサービス:Fitness Mirror
Fitness Mirrorは株式会社One Third Residenceが提供する鏡型デバイスを通じて行われる、オンライン・フィットネスプログラムである。最近日本でもサービスを展開、既に400本を超える動画ラインナップがある。専用の姿見で自分のフォームを確認しながら、同時にインストラクターの姿も見ることが出来る画期的なサービスで、トレーニングの効率も上がる。筋トレやボクシング、ピラティスなど豊富なジャンルのインストラクターが揃っている。仕事などで常に俯きがちで凝り固まった肩も、視線を上げ、鏡を見ることで姿勢の改善にもつながる。
運動の中でもヨガには、ストレスの軽減や精神を落ち着かせる効果があり、毎日行う事で、姿勢を正し、自律神経も整うと言われている。
ヨガ中心のフィットネスプラットフォーム:Alo Moves
Alo Movesはヨガを中心にフィットネス、瞑想など様々なジャンルのコンテンツを配信するフィットネスプラットフォームである。リアルタイムのライブではないから個人に合った時間にでき、移動する必要がないため、在宅勤務をする人々の人気が高まりつつある。アメリカで運営されている為コンテンツは英語のみであるが、エリア制限がないため日本からもサービスを受けることが出来る。
日本の企業向けヨガアプリ:SOELU
法人向けの類似したサービスとして、日本のSOELUというアプリを紹介する。自宅でヨガやトレーニングのレッスンを受けられ、コンテンツはライブと録画の両方があることから自分にあったタイミングで受講できる。ライブでは、他の受講生から自分の姿を見られることはなく、またインストラクターから直接ポーズ指導も受ることができる。二十代から六十代までの幅広い世代に利用されており、ミクシィや新生銀行グループ、ラクスルなどが導入している。
② 食生活の改善を支援するアプリ
バランスのとれた食生活は体に必要な栄養素を補うだけでなく脳の働きにも重要な役割を果たしている。偏りのない食事を心がけることにより、ストレスの軽減および脳が活性化され、作業効率の向上が期待できる。
NY発の、栄養パーソナルコーチング:Wellory
一昨年ニューヨークで作られたWelloryは一対一の栄養コーチングプログラムである。栄養士などの資格を持ったコーチたちが、一対一で食事ごとに最適な栄養プランを提示、また毎日最低一回メールでコーチングチェックインなどを行う。同プログラムでは「Together is the way we do it.」(一緒に、が私たちのやり方)をモットーに掲げており、サブスクリプション開始時にコーチとの対面での面接を義務とするなど、利用者が快適に、長く続けられるような工夫がみられる。Welloryには個人向けの他に、企業向けプランもある。
日本の企業向け食生活改善アプリ:あすけん
あすけんは企業向けの食生活改善アプリで、利用者は食事の写真を撮り、アップロードするだけでAIが解析し合計カロリーを計算し、食事改善アドバイスを受け取ることができる。公式ウェブサイトによると、あすけんのサービスを利用したある企業では、400名を超える利用者が平均で-2.9kg痩せたという結果や、また他の企業では従業員のモチベーションやパフォーマンスにおいて改善傾向が見られるなどの結果がでている。あすけんは、法人内でのサービス利用に伴い、栄養士によるセミナーや個別のサポート、経過に関するアンケートなどの様々なサポートが充実している。実際にコニカミノルタ健康保険組合やヤマトロジスティックなどがサービスを利用している。
③ 心地よい睡眠のサポート
質の良い睡眠は体の疲労回復だけでなく、肥満や鬱の防止、更に集中力アップやストレスの軽減免疫力の向上にも効果があり、ウェルビーイングにおいて、非常に大きな役割を担う。
指輪型スマートデバイス:Oura Ring
Oura Ringはフィンランドの会社Ouraが開発した睡眠に特化したヘルストラッカーである。小さな指輪型のデバイスは、時の心拍数や体温などの要因を分析し、使用者の健康を測る。携帯とBluetoothで繋ぐことでデータを見ることができる。企業で使われる場合には、他のユーザーのデータをモニターすることも可能。リングが使用者の病気の兆候を察知した場合、直ぐにメールなどを介して利用者に通知が行き、リスクマネジメントの面でも非常に有効である。NBAやNASCARなどの団体にすでに利用されており、そのほかにも様々な研究機関、スポーツチームと提携している。
企業向け睡眠改善プログラム:lee BIZ
日本企業NeuroSpaceは自社が開発した睡眠センサー、lee BIZを使用し、企業向け睡眠改善プログラムを展開している。クライアント企業内での従業員の睡眠実態調査や、個人に合った睡眠習慣のデザインなどを行い、全体での睡眠環境の改善を目指す。アンケートを元に改善するべき問題を特定し、ニーズに合わせたフレキシブルな内容の研修で睡眠に対する意識を高める。また、lee BIZで睡眠時のデータを可視化した上で、アプリを通してアドバイスを提供し、個々の睡眠の質の向上を図る。更にプログラムの開始前と終了後にアンケートを実施し、集中度や日中の眠気など、生産性に繋がる指標の変化を分析してクライアントと共有しており、効果をわかりやすく提示している。
④ 心と体の健康を支えるヘルスケア
コロナ禍の中、病院へ行くのを臆する方も少なくない。しかしながら、いつでも医療的なケアが受けられる手段を確保しておく必要がある。
企業向け遠隔医療サービスを提供:ココクリニック
企業向けの遠隔医療サービスを提供している病院としてココクリニックを紹介する。ここではオンラインでの診療や健康診断などのサービスを提供している。更に、健康診断の結果を無駄にしないための二次検診の推奨しており、従業員における健康上の理由での離職率などの低減策にもなる。新型コロナ感染拡大による特例措置として新たに制定された政府のガイドラインに則ったサービスであるため、信頼もおける。内科だけでなく、心療内科、精神科もあるため、ストレスで精神的な負担が大きいリモートワーカーに非常に適しているといえる。
スマホで診療や処方箋受け取りも:CLINICS
CLINICSは、医療機関の検索からオンライン診療、処方箋の受け取りまでをすべてスマホ上で済ませることができるオンライン診療・服薬指導アプリである。アプリ上で問診票の回答後、予約時間内にアプリ内で医師から呼び出され診察が始まる流れになっている。その後、病院側から処方箋のデータがアップロードされ、それを更にアプリ上で調剤薬局に転送することで服薬指導もオンラインで受けることができる。薬は後日、アプリに登録されている住所に届けられる。
変化し続けるニーズ
以上、現在在宅ワーカーを多数抱える企業向けのウェルビーイング向上に関するサービスを紹介した。コロナ禍で溜まる甚大なストレス。それらを軽減し、個々が心身ともに健康にあることが、仕事上での生産性を高め、結果的に企業にとっての利益につながる。
ウェルビーイング系のサービスは多岐にわたるが、共通していることは、どれもユーザーが無理せずに持続できるようデザインされていることである。ウェルビーイングは一時的なものではなく、恒久的な改善でなければ意味がないのだ。社会情勢の変化によるニーズの流動に伴い、ウェルビーイング系サービスは今後も逐一アップデートされていくだろう。家から出ることなく受けられるこれらのサービスは、今後デジタル化が更に進むであろう社会において重宝されるのでないだろうか。今回紹介したサービスだけでなく、この先どのような新しいサービスが生まれていくのか注目していきたい。
2021年5月19日更新
テキスト:松尾舞姫