大阪・北加賀屋にシェアスタジオ「Super Studio Kitakagaya(SSK)」 造船所の跡地を芸術文化が生まれる発信拠点へ
2020年6月8日に稼働を開始した「Super Studio Kitakagaya(以下SSK)」は、千島土地株式会社が運営するアーティストやクリエイターの創作活動を多面的にサポートするシェアスタジオ。
SSKがある北加賀屋地区は、大正時代に造船業の街として栄えていたが、1970年代から撤退する造船所が増加。敷地の多くを保有していた名村造船所も佐賀県・伊万里へ移転し、跡地はしばらく手付かずのままになっていた。
2004年になり、千島土地株式会社は造船所跡地をアートの発信拠点にする取り組みを開始。クリエイティブセンター大阪(CCO)の設立や、2009年には芸術文化が集積する創造的なまちにしていく「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(KCV)構想」を提唱。多くのアーティストやクリエイターに活躍の場所を提供してきた。
さまざまなアーティストやクリエイターとのつながりができた一方で、制作場所の確保という課題も見えてきた。特に大型の作品であるほど、賃貸マンションの一室で制作も難しいうえに保管もできない。千島土地の宇野さんは次のように話す。
「特に美大・芸大を卒業したばかりの若い人は金銭面で余裕がないため、制作場所を確保することが難しいんですね。広いスペースで、音や匂いが気にならず、気兼ねなく制作に専念できる場所を作りたい。そんな想いからできたのがSSKでした」
SSKには大きく2つのスタジオがある。
1つ目は「Large Studio」。大きな倉庫スペースが4つの区画に分かれており、全体の専有面積約50㎡、天井の高さは約6m。造船所の工場跡地をフルに活かした開放的なスペースとなっている。
「道具の貸し借りをしたり、作品に必要なものを依頼したりといった交流が入居しているアーティスト、クリエイター同士で生まれています」と宇野さん。
Large Studioを契約している利用者は、制作に必要な資材や道具の収納をする場所やデスクペースに活用できる「可動式スタジオ Mobile Studio」も別途で使用可能。
2つ目は、個室スタジオ。こちらは壁で仕切られており、全9室あり、それぞれの専有面積は約25㎡。
また、1Fには制作スペースとは別に「Labo&Gallery」と呼ばれる施設がある。展覧会のデモや映像作品の投影テストなどを行える。年に1〜2回はSSKを一般公開する「Open Studio」開催し、「Labo&Gallery」で展示も行っている。
宇野さんは次のように話す。「制作した作品を展示するとどう見えるか試せる場所が欲しいというニーズがあったので、何もない白い空間の部屋を作りました。おすすめしたいポイントの1つです」。
さらに、別棟には音や匂いが出る作業を行うための「Workshop室」も。室内には、卓上丸のこや高速切断機、溶接機、工器具セットなど、本格的な工具が揃う。入居者全員が利用可能。そのほか、搬入搬出時の1.5tトラックも使用できる。
SSKは住居としての利用は禁止されているが、24時間使うことができる。契約は1ヶ月から入居できる「短期契約」と、2年定期で最長4年入居できる「長期契約」がある。
「あえて4年と期限を定めているのは、SSKをさまざまなアーティストやクリエイターが行き交う場所にしたいからです。実際に、SSKには屋台研究家、画家、タイポグラフィのデザイナーなど、ユニークな方々が集まっています。最大限にこの環境を活用してもらって、何か新しいクリエイティブが生まれる場所になれば」と宇野さん。
さらに続けて「ゆくゆくは、SSKが大阪ひいては関西のクリエイティブシーンを担う拠点になれたらと思います」と展望を語った。
●Super Studio Kitakagaya
・営業時間:24時間利用可能(会員限定)
・住所:大阪府大阪市住之江区北加賀屋5-4-64
・URL:https://ssk-chishima.info/
●料金
・長期(2年):月額34,000円
・短期(1か月~最長1年):月額36,000円
※光熱費込み
※複数名での利用可(代表者1名必須)
※映像、建築、デザイン、アートマネージメント等のオフィスとしての利用可
※別途、保証金などの初期費用が必要
●利用可能な設備・サービス
電源、Wi-Fi、シャワー室、洗濯機、共用簡易キッチン、1.5tトラック(要事前予約)、簡易木工機材、作品保管倉庫(有料)
編集:ノオト
アイキャッチ画像:増田好郎