「作業しながら通話」は本当に捗るの? 利用者が語る、作業通話のススメ
LINEやDiscordを使い、他の人と話しながら作業をする「作業通話」という文化をご存知でしょうか。元々はSkypeで行う「さぎょいぷ(作業通話+Skype)」が流行ったのがきっかけで広まり、今では作業通話専用サービスまで登場しています。
現在は、仕事や家事などひとりで作業することが多いフリーランスやクリエイター、課題のレポートを書く⼤学⽣などを中⼼に、通話相手を募集する投稿を、SNS上などでたびたび⾒かけるようになりました。
でも、通話していたら逆に作業に集中できないのでは? そもそも、どんな⼈が作業通話をしているの……? 今回は2019年にリリースされた作業通話アプリ「mocri」※を家事の時間に使っているフリーランスのライター・編集者の少年Bさんに、作業通話のコツや課題、その魅力について教えてもらいました。
※作業通話アプリ「mocri」は、2024年3月22日 15:00をもってサービス提供を終了しています
作業通話との出会いは、Twitterフォロワーとのおしゃべり
元々、人と話すのは好きなほうでした。わたしがmocriを使ったきっかけは、Twitterのフォロワーと話すため。「LINEの連絡先交換はちょっとハードルが高い相手でも、気軽に話せる」と勧められたのです。なので、最初は「作業通話」という感覚ではありませんでした。
mocriの使い方はとてもシンプル。まず、ユーザーは「フリースペース」と呼ばれる部屋を自由に立てることができ、部屋ができると「友達」に通知が飛びます。来られる人が来られるタイミングで、敷居を感じず参加できます。
そんな理由で始めたmocriでしたが、「UIが使いやすいな」と思いました。一般的な通話アプリでは、「通話の画面」と「文章や画像をやり取りする画面」は別なことが多いのですが、mocriなら通話画面を開いたまま画像や文章を送れます。そのため、たとえば電車の中など、自分が声を出せない状況でも気軽にフリースペースに入ることができるんですよね。これは手軽でいいぞ、とmocriを使うようになりました。
また、mocriでは「友達」に登録している人以外のフリースペースは表示されませんが、Twitterと連携ができるため、フォロワーであれば気軽に「友達」の登録ができるのも、使いやすいポイントでした。さすがに、まったく知らない人といきなり話すのはちょっと勇気がいりますからね……。
作業通話にルールはない
作業通話に決まったルールはありません。そのため、それぞれが自分のスタイルに合わせて気楽に始められるのがいいところです。
mocriでよく話す、漫画家の綾峰けうさんは、主に漫画を描きながら通話をしています。漫画家の中には「プロット作りや下書きの間は話せない」という人もいるそうですが、綾峰さんはどの作業をしながらでも問題なく通話でき、ひとりで仕事をするよりも集中できるそうです。他にも、ゲームをしながら繋げている人や、勉強しながら作業通話をしている学生さんも……!
仕事目的だと、「もくもく会」もおすすめです。通話を繋げながら黙々と作業をする会です。開始前には今日の目標を伝え、終了後には進捗を報告する場が多いため、仕事が捗ります。
なかには「25分仕事をして5分休む」というポモドーロ・テクニックを活用したもくもく会もあり、より集中しやすいと評判になっているようです。ポモドーロ・テクニックはmocriだと「集中モード」という名前で実装されています。
他の人が仕事をしている環境音を聞きながら、休憩時間は雑談をして気分転換。他の人もがんばっていると思えばサボりづらいですし、休憩時間にはお互いに励まし合ったり、時には傷をなめ合ったりと(笑)、やる気を出すための方法としても活用ができます。
ちなみに、わたしは話しながら仕事をすると、会話に集中してしまい、気が付くと手が止まってしまうので、仕事中はmocriを使わず、料理中や散歩をしながら日常の話題やニュースについて話していることが多いです。いわゆる雑談ってやつですね。
はたして、これを「作業通話」と呼んでいいのか?という疑問はあるんですが、まぁ何かしらの作業をしながら話しているってことで……。
作業通話にハマった理由
わたしはひとり暮らしのフリーランスです。仕事も家のなかですることが多いので、人との会話に飢えている部分はあるんですよね。
作業通話で気に入っているのは、会話のハードルの低さです。特定の個人やグループでする一般的な通話は、事前に参加者の予定を合わせて、決まった時間にかけなくてはいけません。誰かと約束して、時間を取って話すって、けっこうハードルが高くありませんか?
その点、mocriの作業通話であれば、自分の暇な時にフリースペースを立てれば、予定が合う友達が来てくれるし、友達が立てたフリースペースがあればそこに入ればいいわけです。
この「勝手にやってるから来られる人はどうぞ~」ってスタイルが気楽でいいんですよ。誘う側も誘われる側も、「特定の誰か」をピンポイントで求めているわけじゃないから、とにかくハードルが低いんです。どのサービスでも共通する「作業通話のメリット」だと思います。
作業通話が「新しい出会い」をつくる
mocriのユーザー層は、主にイラストレーターや漫画家、同人作品を作っている人が多い印象があり、同じ仕事をしている人同士であれば、情報交換の場としても活用できます。ライターにはまだ会ったことがないですね……。
ほかにも、mocriで知り合った人に原稿のアシスタントを頼んだ……なんて話も聞いたことがありますし、わたしも編集者として関わっているメディアで、mocriで知り合った人にお仕事を依頼したことがあります。そういった「横のつながり」を作りやすいのも、作業通話のメリットです。知らない人にいきなり仕事を頼むのは勇気がいりますが、相手の人柄や実績、能力を知っていれば、仕事の依頼もしやすいですよね。
あと、これはmocri特有ですが、個人的には「友達の友達と知り合える」という楽しさもあります。
mocriには友達になった人が立てたフリースペースが表示されるのですが、これ「立てた人の友達全員」に表示されるんですよね。なので、友達のフリースペースに入った場合、自分がまだ知らない「友達の友達」が入ってくる可能性もあるわけです。
会話はSNSなどの文章ベースのやり取りよりも情報量が多く、ニュアンスも伝わりやすいため、人となりをより深く知ることができます。
作業通話のコツ・課題
「会話を楽しみたい」「人の声を聞いていたい」など、人によって作業通話のスタイルはさまざまです。
たとえば、みんなで音声を繋げながら、黙って仕事をする「もくもく会」スタイルのフリースペースに、「わたしのような“しゃべりたい人”が来てしまったら、ちょっと迷惑かな……」と心配になりますよね。屋外や、洗い物をしながらだと、雑音が入ってしまう場合もあります。
しかし、mocriでは、フリースペースの名前や概要(部屋のしおり)に「どういう目的のフリースペースなのか」を明示できる機能があり、積極的に活用しています。
また、屋外にいる時や洗い物をしながらだと、雑音が入ってしまう場合もあります。そんなときは友達のスペースに入るのではなく、雑音が入る環境であることがわかる名前のフリースペースを自分から立てるようにしています。ある程度、そういった配慮は必要かな、と思います。
健やかな在宅生活のおともに作業通話はいかが?
フリーランスはもちろん、コロナ禍に伴うリモートワークによって人との会話が減った……という人も多いでしょう。わたしもそういった状況ですが、メンタルを病むことなく、在宅で仕事ができるようになったのは、間違いなくmocriの作業通話のおかげだと思います。
居住地域や仕事を問わず、気軽に人と話すことができる作業通話という文化。おかげで、これまで話したことのなかったTwitterのフォロワーと話すこともできたし、新しい友達も増えました。ありがたいことに仕事にも繋がっています。
「普段はリモートワークだけど、人の存在を感じながら働いてみたい」「フリーランスで一人になりがちだけど、誰かとコミュニケーションを取りたい」と考えている人は、ぜひとも作業通話を始めてみてはいかがでしょうか。
執筆:少年B
編集:桒田萌(ノオト)