在宅ワーカーのメンタルヘルス向上に ― 海外発ホームオフィスアイデア
ステイホームで増える孤独感と燃え尽き症候群
毎年10月10日は「世界メンタルヘルスデー」だ。これは、世界中でメンタルヘルスの問題についての認識を高め、精神的な健康の向上への支援を訴えるための日で、1992年に始まったこの試みは今や世界中に広まっている。そして残念ながら、メンタルヘルスの問題に苦しむ人々の数は、依然として増え続けてしまっているのも確かだ。
特に近年のコロナウイルスのパンデミックによりその数は急増している。アメリカ疾病対策センターの調査によると、鬱の症状に苦しむ患者は2020年度でアメリカに住む成人の40%にものぼっている。未だ、第三波や四波に見舞われる世界各国を加味すれば、2021年度の統計ではさらなる数の増加が予想される。鬱の原因は様々だが、やはり多く見られるのはロックダウンにより外界から隔離された状態による孤独感。そして長期にわたる家での業務から来る燃え尽き症候群によるものが多いとされる。
パンデミックが始まってから一年以上経った今も、在宅ワーカーの割合が増え続けている日本(新型コロナウイルス感染症流行下でのテレワークの実態に関する調査動向)。そのような中、在宅ワーカーが良いメンタルヘルスを保つためにどのようなことができるだろう?パンデミックが突然始まったことによって、まだまだホームオフィスを十分に整えられていない人も多いはずだ。そこで今回は世界メンタルヘルスデーにちなみ、快適でやる気を起こさせるホームオフィスのデザインアイデアを紹介したい。
燃え尽き症候群を防ぐためのホームオフィス作り
在宅ワークに関し、 SNSで多く語られるデメリットは、業務とプライベートを明確に分けられなくなるというものである。
在宅させてもらえてうれしいけど家でパソコン目に入ったとき仕事思い出しちゃうのが少し嫌
— なあに (@wow_5963) August 30, 2021
在宅の良くないところ:仕事とプライベートの境界が消える。
— yuya (@dandoZeke) September 30, 2021
そこで注目したいのが、仕事環境とリビングスペース(生活空間)をうまく区切るためのアイデアだ。
まずは、ディバイダーやオープンラックを使って1つの空間を緩やかに分ける方法だ。空間を完全に遮断する壁と違い、居住空間とのつながりが保たれているのでプライバシーを保ちつつ、在宅ワークで陥りがちな孤独感も抱かせない。固定式の家具と違い手軽に動かすことができるため、ホームオフィスの必要がなくなればいつでも違う用途で使用できるといったメリットもある。
オープンラックであれば、収納としての役割も果たす。植物を取り入れることで視覚的に楽しめ、リラックス効果を生み出してくれる。実際に空間に植物を取り入れることでストレスが軽減されるという研究結果(兵庫大学)も発表されているため、観葉植物は積極的にインテリアに取り入れていきたい。
適度に空間を仕切りつつ、自然のリラックス効果ももたせるアイデアとしてハンギングチェアやハンモックなどを取り入れるのも手だ。
植物でできた天然素材はリラックス効果を生み、遊び心もある。自由度が高いホームオフィスならではの利点を生かしたアイディアだ。適度に囲われているため、集中作業にも適しているのではないか。筆者が以前似たものを使用した際には、見た目ほどの不安定さはなく、しっかりとした座り心地が印象的だった。
海外では普通?クローゼットやデッドスペースの活用
一方で、家のなかにオフィス用のスペースを設けられない場合も当然あるだろう。そこで、既存のスペースをうまく活用した非常にクリエイティブな海外のホームオフィス例を見てみよう。
こちらはクローゼットやワードローブを改造しデスクと椅子を置いたもの。DIYの腕がなりそうだ。これなら家を走り回る子供達はこちらからは見えないし、集中力も保たれる。仕事が終わりクローゼットの扉を閉めてしまえば、生活空間からオフィスはシャットアウトされるから、つい仕事と日常生活の境目が曖昧になることもない。在宅ワーカーにとって一番危険なバーンアウト、燃え尽き症候群を防ぐことができる。
さらには、部屋の角、また階段の下などのデットスペースを活用し、オフィスを埋め込むという方法もある。扉や仕切りがない状態でも、二つ以上の方向が壁に囲まれていればある程度の密室感、プライベート感は保たれるのではないだろうか。コンパクトなオフィスであれば生活空間を圧迫することもない。
在宅ワークで乱れた体内時計を整える
さて、心地よく作業に集中できる空間を確保したところで、もう一つ重要なのは光である。ミシガン州立大学の研究で、薄暗い部屋、光があまり入らない部屋での長時間に及ぶ作業は脳にネガティブな影響を与えるということがわかっている。
一日中家から一歩も出ずに過ごしていると、時間の感覚が狂ってしまうこともあるだろう。乱れた体内時計を整えるため、部屋の中に太陽の光を模したサーカディアン照明を取り入れる方法がある。
昼間は明るく、夜は優しい光のため脳を休ませることができ、太陽と同じ波長を放出するので、屋内にこもりっきりでも体内時計が整えられ睡眠の質も向上する。睡眠は私たちの体、そして精神にも多大な影響力があり、鬱や不安障害を和らげてくれる。
外出する機会が少なくなった在宅ワーカーにとって、まるで屋外で陽の光を浴びているような開放感が得られるのではないだろうか。自然の変化やリズムを部屋の中にも取り入れるといったトレンドはおうち時間の増加に伴い上昇している。
クリエイティブな空間づくりで、メンタルヘルスを向上させる
長く続く在宅ワークは気付かないうちに私たちの身体、精神に大きな負担をかけている。本来仕事をする場所ではないところに新しく働くスペースを作るのは難しく感じるかもしれない。だが、少しの柔軟性とDIYで居心地のいいホームオフィスを手に入れることができる。緩やかなつながり、自然の取入れ、そして体内時計に注目しながら、出来る工夫から少しずつ理想に近づけていこう。以上、かつてないほど多くの人が自宅で仕事をしている時代に、快適で明るくやる気を起こさせるホームオフィス空間を作るためのアイデアを紹介した。
2021年10月7日更新
テキスト:松尾舞姫
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