シナリオ・プランニングで描く「未来の働き方とオフィス 2030」
Future2:Tech based Working(AI/ロボットが中心に働く)×サステナビリティファースト(持続可能性主義)
自分の価値観が試される、選択型 ハイパー自律社会
AI・ロボットによって人間の可処分時間が増加、その結果、一人ひとりの「働く意義」が問われる社会へ
2020年のパンデミックをバネにしてDXに成功するとともに、経済成長よりもサステナビリティを重視した世界に向かう。SDGs関連領域における起業を促進する失業保険やリカレント教育制度、志のある人材と企業のマッチングをおこなう仕組みなど、制度やインフラの整備が進む。その流れのなかで、環境問題や生き方に対する意識の高まりからエコなライフスタイルやプロダクト・サービスも浸透し、地球環境やウェルビーイングに配慮した社会を実現している。
企業は、AIやロボットを労働力として積極的に取り入れ、人口減少に伴う労働力不足がテクノロジーによって解決される。ワーカーは意思決定や企画構想などの高付加価値労働に専念できるよう、情報収集や資料作成などの作業をAIがおこない、結果としてワーカーは短時間の労働で生活ができるようになる。
このようにして生まれた可処分時間をどう使うのか、一人ひとりが考えることが多くなり、個人の価値観が今まで以上に行動に反映される。仕事の面ではやりがいを感じる「意義ある仕事」を求める人が多くなり、社会課題の解決に取る組むために起業したり、共感する価値観を持つ企業やNGOに複数所属して活動する兼業・副業が当たり前となる。一方で余暇を楽しむ人も増え、育児、教育、娯楽などの産業が大きく伸びる。
そして社会では、企業は自分たちの価値観とその取り組みを社会に対してオープンにして、価値観に共感して、やりがいを実感してくれる人材を集めるようになる。雇用の中心は役割を明確化したジョブ型となり、プロジェクトごとに社外からも有能な人材をアサインする働き方が主流となる。
自由で何事にも挑戦できる社会だが、自分にとっての「意義」がわからない人々にとっては、“自律”することが今まで以上に求められ、時間の使い方を自分で考えることが新たなストレスにもなる社会でもある。
究極のリモートワーク技術を活用、リアルと遜色ないVRオフィス「ワークカプセル」が主流に
テクノロジーを最大限に取り入れた企業では、働く場はバーチャル空間に完全に移行する。現実世界でホワイトワーカーたちがわざわざ集まる物理的スペースは存在しなくなる。
ワーカーは、「ワークカプセル」と呼ばれる映像や音、匂いなど場の臨場感を創り出すカプセルに入って仕事をするようになる。ヘッドマウントディスプレイを装着することで、リアルな職場と同様の感覚で働くことができるバーチャルオフィス空間への没入が可能となる。バーチャルキーボードや音声入力などの機能を駆使しながら、アバターとして存在するアシスタントAIと、まるで人間同士でコミュニケーションをとるかのようにスムーズに仕事をこなしている。
物理的な作業を伴う場合でも、ワークカプセルからロボットを遠隔操作して行う。工場や建設現場、研究施設、農作業では、安全・安心と生産性を担保しながら少ない人数で遠隔から作業できるようになっている。
ワークカプセルは、もはや個人用のオフィスのような存在となり、自宅をはじめ、集合住宅の共用部や娯楽施設・ホテルの一画、また飛行機や鉄道、バスといった公共交通機関とさまざまな場所に設けられ、バーチャルオフィスにつながる労働システムのプラットホームとなる。