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大阪・関西万博を舞台に、これからの働き方とユニークなコミュニケーションを提示!「オカムラ×万博」を体験リポート

各国の文化や英知、アイデアが集結する世界的イベント「大阪・関西万博」が満を持して開幕しました。

各メディアやSNSでは、来場者による感想で日々盛り上がっていますが、「万博って、結局何をやっているの?」「自分には関係なさそう」と、他人事と捉えてしまう人もまだまだ多いのではないでしょうか?

その一方、万博をきっかけに続々とたくさんの人を巻き込み、共創の渦を生み出している企業・人々がいます。

本連載では、大阪・関西万博に同調するように「勝手に」生み出されたムーブメントに着目し、その仕掛け人たちの胸の内を取材していきます。

株式会社オカムラは「人が活きる社会の実現」を目指し、オフィス環境事業、商環境事業を通して組織の枠組みを超えた共創空間づくりなどにも力を入れています。2021年からは、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会とタッグを組み、万博の機運を高める活動を実施。そんな縁から万博会場での出展が決定しました。

万博を「社内の部門や立場を超えて参画できるチャンス」と位置づけた同社では、全社を挙げたプロジェクトとして「オカムラ×万博」を打ち出し、2軸の企画を進めていきました。

劇団「ザ・オカムラ座」では、オーディションで選ばれた12人の社員たちが俳優となり、理想の働き方を表現。体験型コンテンツ「キモチキオスク」は、コンビニエンスストアを模した空間で本音を贈り合う、ユニークなコミュニケーションの場を提供しました。

今回は、大学生の柴田菫さんが夢洲を訪れ、オカムラ×万博をリポート。「万博は未来の技術や生活を想像できる場。海外旅行が好きなのもあり、楽しみにしていました!」と語る柴田さん。就職を来春に控えたその目に、万博の舞台で活躍する社会人たちはどのように映ったのでしょうか。

柴田菫さん 京都市立芸術大学 美術学部 デザイン科プロダクトデザイン専攻 4年

社員が劇団員になり躍動! これからの働き方を提案・発信した「ザ・オカムラ座」の旗揚げ公演

最初に訪れたのは、ザ・オカムラ座による演劇『12人のとびだす会社員』の公演会場です。劇団員は社内公募で手を挙げた108人の中から選ばれ、演者だけでなく、衣装や運営など裏方の役割も社員が担います。普段は働く環境や人をサポートするオカムラ社員が、自分たちで舞台を創り「働く喜び」を表現しました。

会場は東ゲートからほど近い「ポップアップステージ東内」。足を止めて見入ったり、エスカレーターから興味深そうに眺めたりする人も多く見られました

公演は三幕構成になっており、一幕につき4人が「主役」として登場します。日本をはじめ、世界各国の来場者が集まる万博が会場ということもあり、基本的にセリフなどの言語を介さない「ノンバーバル演劇」のスタイルを採用。13:30の回と19:00の回で2公演実施しました。

出演者は12人全員が「自分役」。各幕の序盤では営業、デザイン、製造など各持ち場の仕事をダンスで表現しました。

効果音やリズムに合わせた規則的な動きで「働く」を演じます

振り付けは次第に、それぞれが抱えていたストレスやモヤモヤにフォーカス。仕事や働き方に関する疑問や違和感、過去の失敗などを盛り込んだ動きと表情は、観客を劇中の世界に引き込みます。

赤いテープでがんじがらめになった演者たち。ついに限界を迎え、爆発してしまいました
 

この公演の脚本は、オーディションやその後のインタビューで聞き取った内容を元に制作されています。ステージ終盤では、12人それぞれが夢見る働き方を演技に落とし込み、「こんな職場ってどう?」というメッセージを舞台上から届けました。

得意のラップを披露する営業のエース(自称)の廣江建太朗さんが会場を沸かせます
パジャマ姿で「出社」して……
オフィスカジュアルへの早着替えもそつなくこなす岩﨑史歩さん。 衣装部のクリエイティビティも存分に発揮されました
自身のルーツを見つめ直し「殻を破りたい!」と自己表現に挑んだのは田村京介さん
フィナーレは衣装もカラフルに! 約400人の観客から手拍子が沸き起こる中、大団円を迎えました

「いち社員が三幕のダンスをやりきったのはすごい」と感激していたのは、ザ・オカムラ座を統括した岡本栄理さん。自らも幕間にステージに立ち、演目の解説や案内を行いました。「今日はオカムラ社員のいきいきとした姿を届けられたのでは。登場したみんなの思いが詰まった公式Instagramも、あらためて見てほしいです」と笑顔を浮かべました。

観劇した感想を教えてください。

柴田

ほとんどの出演者がダンス未経験だったと知り驚きました! 前半と後半では、みなさんの動きも衣装も全く違ったのが印象的でしたね。ノンバーバルでも、表現したいことがすごく伝わってきました。私と年齢が近い人も出演されていましたよね。「社会に出て、私も輝けるかも!」と明るい希望が湧いてきました。

思い描く職場環境を表現でき、オカムラのユニークさも伝わったはず

13:30からの公演終了直後、出演者のうち3人に集まってもらい、お話を聞きました。

写真左から、山本洋輔さん(株式会社オカムラ/オフィス環境事業本部 営業支援部)、角井彩菜さん(株式会社オカムラ/商環境事業本部 店舗デザイン部)、田村結さん(株式会社オカムラ/商環境事業本部 エンジニアリング部)
 

山本さんは「今までにない達成感! ずっと高揚しています」と興奮冷めやらぬ様子。劇団員は会社の部署が異なるため、「本番直前まで全体練習の回数が限られていた」と苦労も明かしつつ「踊りながら、メンバーみんなの気持ちが高まっていくのを感じ、良い公演になったのでは」と充実感を噛み締めていました。

山本さんは、中途採用で入社したころの失敗続きの日々と、そこからの変化・成長を表現しました

「オカムラを知らなかった人にも、この会社の面白さが伝わったと思います」と角井さん。満員の観客席には、同僚や先輩社員の姿もあり心強かったようです。

「好き」を躊躇せず表現して働ける職場をテーマに、アイドル衣装でパフォーマンスを披露
 

ろう者である田村さんは、就職して初めて聞こえる人たちの世界に入ったそう。ステージ上では、コミュニケーションで苦労した様子を表現しました。 

「手話を取り入れたダンスを、みんな見てくれていました。違う特性を持つ人が、それを隠すことなく一緒に働くという環境を伝えられたと思う」と話しました。

人の思いや音が見えるツールを提案した田村さん。心の動きをよりシェアしやすくなる、そんな未来は近いかも?
 

みなさんにとって、オカムラってどんな会社ですか? という問いに、角井さんは「入社して1年が経ちましたが、今回のチャレンジを通じて、社内にいろいろな才能を持つ人がいるんだ! と知ることができました」と振り返りました。一歩踏み出したことが、思わぬ発見につながったようです。

「挑戦に対して背中を押してくれる社風があるし、熱量もすごいんですよ」と力を込める山本さんに対し、田村さんも「若手も意見を言いやすくて、部署の隔たりがなく、つながりやすいのも特徴ですね」と応えていました。

素直な思いを交換できるコンビニ!? ダジャレフードが絆を深めるキモチキオスク

続いては万博会場の西側「フューチャーライフヴィレッジ」に移動して「キモチキオスク」に“入店”。複数人で楽しむプログラムなので、柴田さんの友人にも参加してもらいました。

大学で出会ってすぐに仲良くなったという2人。スタッフから体験方法の説明を受けます
 

キモチキオスクは4月22日(火)〜4月28日(月)の7日間限定で開かれた“お店”です。本物かと思うほどリアルにコンビニを再現した店内には46種類の商品が陳列されています。「スナオなキモチップス」「オツカレライス」「お世話になってマス寿司」など──お菓子やお弁当を模したアイテムを1〜3点選び、レジで交換することで、普段は伝えるのがちょっぴり恥ずかしい気持ちを贈り合うことができるのです。

謝罪の気持ちを伝えるなら「この前はご麺」や「失礼しましタンメン」を
「スナオなキモチップス」は、フレーバーによって思いも異なります

商品を次々とカゴに入れていく友人に対し、柴田さんはじっくり吟味している様子。

店内の歩き方には、参加者の性格も表れているかもしれません

商品を選び終わったらレジで合流し「告白」タイムへ。パッケージのバーコードを読み込むと、アイテムに込められた「キモチ」がディスプレイに表示されます。柴田さんが受け取ったのは、褒めたいキモチを込めたカップスープ「オウサム!ゲタン」など。「こんなに褒められるなんて」と少し照れくさそうでした。

最後は受け取った商品を手に記念撮影を行い、印刷されたレシートと一緒に思い出を持ち帰ります。

キモチキオスクを体験した感想を聞かせてください。

柴田

友人には叱られると思っていたので、自分の予想と違う結果でした(笑)。普段、レシートは捨ててしまうけれど、これは机の目の前に貼っておきます。このキモチキオスクのように、気持ちを交換できるお店が本当にできたら、すごく素敵だなと思いました。

「商品化してほしい」との声も。国内外からの“来店者”の笑顔に手応え

キモチキオスクのスタッフを担当した甲斐蓉子さんは期間中、たくさんの人のキモチ交換をサポートしました。「明るくポジティブなキモチを手渡しすると、みんな笑顔になるんですよね。新しいコミュニケーションの取り組みとして、成功といえるのではないでしょうか」と自らも顔をほころばせました。

甲斐蓉子さん (株式会社オカムラ 事業戦略部 CXデザイナー/共創アンバサダー)

また国内外からの来場者を接客する中で、思いをストレートに伝える機会が少ないといわれる日本人の特徴をあらためて実感したそう。「とある日本人夫婦の奥様は、普段あまり言われない夫からの感謝を受け取り、レジでうれしそうに笑顔を浮かべていました。あと、『商品化してほしい』という声も多数いただきましたね」と振り返りました。

オカムラの万博は、明るい未来をつくる“新しいアイデアの展示会場”だった

「働く」を通じて発揮される個性の輝きを発信し、観衆を沸かせたザ・オカムラ座。一方、キモチキオスクでは、コミュニケーションに仕掛けを加えると、ポジティブな変化が起こることが実証されました。

万博を振り返ってみて、どんな感想を持ちましたか?

柴田

万博は世界最先端の技術を展示する場のイメージがありました。オカムラが出展したふたつのプログラムを体験して、未来の働き方や、ユニークな気持ちの伝え方のように「新しいアイデア」を知ることができるのも万博なのだと分かりました! 社会に出るのは不安な気持ちの方が大きかったけれど、前向きな思いが少しずつ芽生えてきた気がします。

めまぐるしく変化を続ける国際社会において、その先行きを案じる人は少なくないはずです。しかし、オカムラのメンバーや来場者が表現・体験したように、身近な環境や大切な人との関わり方は少しずつ変えられるはず。小さな変化が大きな輪をつくり、社会にインパクトを与えることだってできる──オカムラ×万博は、そんな“いのち輝く未来”を独自の方法論で提示する祭典でした。

2025年4月取材

取材・執筆:山瀬龍一
撮影:牛久保賢二
編集:人間編集舎/南野義哉(プレスラボ)