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日本の出島組織とオランダのスタートアップに架け橋を。『出島組織サミット x StartNL Japan in オランダ大使館』イベントレポート

江戸時代、日本は鎖国政策で海外との交流を厳しく制限していました。そんな中、外交を許された数少ない国の一つがオランダです。

長い年月をかけて信頼関係を育ててきた日本とオランダは、2025年で友好425周年を迎えます。それを記念して、オランダ王国大使館と出島組織サミット実行委員会がコラボレーション。「サステナビリティ」をテーマに、オランダのスタートアップと日本企業をつなぐイベントが開催されました。

集まった日本企業は、本体組織から少し離れた「出島組織」。本体から離れているからこそ、新しいチャレンジやコラボレーションを生み出すことができます。

オランダから招聘されたのは、サステナビリティやサーキュラーエコノミー(循環型経済)、再生エネルギー、トレーサビリティ(追跡可能性)に関するスタートアップ。オランダスタートアップの海外進出を支援する大使館における出島組織「StartNL Japan」が声かけをしました。新たな共創の可能性が詰まったイベント当日の様子をお届けします。

425年続く、日本とオランダの絆

オランダ王国大使館の中にある「大使公邸」という特別な空間で、リラックスしたムードで開催されました。(提供写真:Ryo Nagata)

イベントの冒頭で印象的だったのは、Gilles Beschoor Plug(ヒルス ベスホー・プルッフ)大使が「いち地球市民」としてスピーチを始めたことです。

大使

今日は一人の人間、地球市民として皆さまにお話します。

率直に言えば、私は将来についてかなり悲観的です。気候変動、ライフサイエンスや健康、エネルギーや水資源……。問題を挙げたらきりがありません。ヨーロッパ大陸における戦争や紛争が、人々の協力と解決策の模索をさらに難しくしています。

私の世代がこれらの問題を解決できなかったことを非常に恥ずかしく思っています。次の世代へ課題を差し出し、緊急に取り組んでほしいとお願いするしかありません。

オランダ王国大使Gilles Beschoor Plug(ヒルス ベスホー・プルッフ)氏(提供写真:Ryo Nagata)

大使

そして、425周年を迎えるオランダと日本は、そうした問題の解決策を見出すために特別な関係を持っています。

日本のどこへ行っても、絆や信頼、安心感のようなものを常に感じます。サステナビリティはオランダ人の心に深く根ざした価値観であり、循環型経済においてはEUをリードしています。

日本とオランダは、長きにわたって互いを知ってきたからこそ、一緒に解決策を見出せる可能性があるのではないでしょうか。

オランダ企業と日本をつなぐ、大使館の出島チーム「StartNL Japan」

そんなオランダとはどのような国なのでしょうか? StartNL Japanの高橋 園子さんがプレゼンテーションを行いました。

StartNL Japanの高橋園子さん。ちなみにStartNLの「NL」は、Netherlands=オランダを意味する。

<キャプション>

高橋

オランダの面積は九州と同じくらい、人口は約1800万人です。6人に1人は国外で生まれています。多様性と国際性に富んでおり、93%の人が英語を話し、ドイツ語やフランス語など他の外国語を話せる人も多いです。

そして、世界幸福度ランキングで第6位に入っている。とても幸せな国民でもあります。

他にも、国民一人あたり年間約17キロのチーズを食べている、国民一人あたり平均1.3台を所有しており国民の数より自転車の数の方が多いなど、オランダの特徴的なデータが紹介されました。

高橋

オランダはイノベーティブな国でもあります。GDPの2.3%を研究開発に投じており、世界のデジタル競争力ランキングでは第8位に入っています。

また、世界的に評価される大学が12校あり、大学都市には少なくとも1つのインキュベーターが設置され、学生たちはそこでイノベーションを学び、スタートアップを立ち上げています。

2024年だけでベンチャーキャピタルから30〜37億ユーロが投資され、現在10社のユニコーン企業が活躍しているそう。

高橋

2023年に始まった「StartNL Japan」は、オランダのスタートアップ企業と日本をつなぎ、オランダ企業の日本での成功を拡大できるように支援する組織です。

私たちは特定の業界の専門家ではありませんが、スタートアップの創業者、JETROやTokyo Innovation Baseといった企業支援機関、さらには法務や行政サポートを行う組織ともつながっています。そうしたネットワークを通じて、必要な人や組織につなぎ、アドバイスを提供しています。

国を超えた「出島」のつながりが化学反応を生む

続いて、共催者である出島組織サミット実行委員会の倉成英俊さん、鳥巣智行さんが出島と出島組織サミットを立ち上げた理由、そして今日のイベントへ期待することを紹介します。

出島組織サミット実行委員会の倉成英俊さん(提供写真:Ryo Nagata)

倉成

出島は日本が鎖国していた江戸時代に、唯一西洋の国との窓口となっていた場所です。

銀、工芸品、美術品、砂糖、動物、技術など、さまざまなものがこの小さな島を通じて行き来しました。

長崎にある出島。小さな島ながら、日本だけでなく世界にも大きな影響を与えた。

倉成

時代は変わり、大企業が新しいイノベーションやコラボレーションを生み出そうとするとき、本体から分離した小さなチームを作るようになりました。

その姿は出島の構造に似ていますよね。1980年代から、一部のメディアがそれを『出島組織』と呼ぶようになりました。

私自身は2014年に電通という大きな広告会社で、鳥巣さんや同僚たちと一緒に『電通Bチーム』というチームを立ち上げ、それも『出島組織』と呼ばれました。

倉成

その後、当時の長崎市長の田上富久さんにお会いする機会に恵まれました。

『多くの企業が“出島組織”を持っているので、長崎の出島を貸していただけないでしょうか? 彼らを招待してカンファレンスを開きたいのです』とお願いしたとろから、出島組織サミットが始まったのです。

出島組織サミット実行委員会の鳥巣智行さん(提供写真:Ryo Nagata)

鳥巣

出島組織サミットは2022年から始まり、初回は30社52名、2回目には45社84名が参加。3回目は東京で開催し200名が集まりました。

そして今日は4回目のサミットです。これまで、本当に素晴らしいコラボレーションが生まれてきました。今回も新しい化学反応が生まれることを楽しみにしています。

今日の会場になったオランダ王国大使館を上空から見た写真。出島のような地形になっており、出島組織サミットにピッタリの場所になっています

太陽・風・海流。再生可能エネルギーで課題解決に挑む企業

第一グループで登壇したのは、太陽・風・水・バイオマス・海流など、地球上で自然に再生される「再生可能エネルギー」に関わる企業です。

各社が事業内容のプレゼンテーションをした後に、パネルディスカッションを行いました。

1問目として投げかけられたのは、日本とオランダの「相手の国の、羨ましいところ」という問いでした。

自然電力株式会社のIrina Blumenfeld(イリーナ・ブルーメンフェルト)さん。「青い地球を未来につなぐ」をパーパスに掲げ、自然エネルギー100%の世界を目指す。国内外で太陽光や風力など再生可能エネルギーの発電・開発・運営を行う。(提供写真:Ryo Nagata)

イリーナ

オランダを何度も訪れたことがありますが、誰もが自転車で移動していて、自然を大切にしている姿勢が伝わってきました。

もう一つは再生可能エネルギーです。オランダはヨーロッパでも先進的な国の一つで、特に風力発電を中心に再生エネルギーの導入が進んでいます。

オランダのスタートアップについては、上下関係が少なくフラットな組織文化があるという点も魅力的です。

水素を活用したスタートアップ・HyER PowerのCEO・Saul Oost(サウル・オースト)さん。水素を活用した高効率の発電・熱供給システムを開発。2023年にデルフト工科大学(TU Delft)発のスタートアップとして設立された(提供写真:Ryo Nagata)

サウル

私は日本の『完璧を追求する姿勢』がとても好きです。優れた燃料電池の多くは日本で作られているのは、まさに『完璧を追求する姿勢』があるからだと思います。シンプルなのに考え抜かれていて本当に素晴らしい。

日本では街並みさえも清潔で整然としていますよね。その姿勢を自分のビジネスにも取り入れていきたいと強く思います。

次の質問は「自分の会社を動物に例えるなら?」というもの。

MOL PLUS・CEO 阪本 拓也さん。商船三井のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)部門。海運と物流の高度化ブルーエコノミーディープテックの3つの分野に注力。(提供写真:Ryo Nagata)

阪本

私は夏によく見られる鳥「エトピリカ」を選びました。冬は灰色と黒ですが、夏になると鮮やかで明るい色に変わります。

海運業界は非常に古く歴史ある産業で、本社や私自身の背景は常にその伝統の上にあります。しかし、スタートアップのエコシステムでは、みんなが自由にクリエイティブな議論をしています。

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)である私たちは、エトピリカが夏に色鮮やかになるように、自分自身の色もより鮮明にしていかなければなりません。困難が待ち受けているとしても、CVCは常に2つの異なるキャラクターを持ち合わせる必要があります。

次のテーマは、「サステナビリティについて気になっている課題」についてです。

Equinox Ocean TurbinesのCCO・Bart Velthuizen (バート・フェルトハウゼン)。「第3の再生可能エネルギー」である海流発電のスタートアップ。2024年、240万ユーロの資金調達に成功し期待を集める。(提供写真:Ryo Nagata)

バート

私たちは、次の世代に課題を残してしまいました。

私には愛する孫がいます。彼が自由に生き、美しいものを楽しめる『公正な世界』を作りたい、という思いが、私の大きな原動力になっています。未来を少しでも良いものにしたい。そう強く思っています。

TouchWindの副ディレクター・Dirk Pulles (ディルク・プルス)オランダ発の洋上風力発電スタートアップ。洋上風力の中でも「浮体式風力発電」に取り組み、傾斜型のローターが注目を集める。MOL PLUSが出資・共同開発パートナー。(提供写真:Ryo Nagata)

ディルク

近年、残念ながら多くの紛争が起こり、世界的なエネルギー課題があります。

再生可能な方向に移行する過程でコストは上下します。しかし、とくにコストが上がるときこそ、易きに流れ不平を言うのではなく、正しい一歩を踏み出す勇気を持つことが重要です。

長期的な視点は、日本には強く根付いていると思います。未来を見据え、勇気を持って行動し続けることで、より良い未来に向かっていけるのではないでしょうか。

循環性、追跡可能性。自然資本の成長を狙う企業

第二グループは「循環性(サーキュラシティ)と追跡可能性(トレーサビリティ)」に関わる企業です。

循環性を高めるためには、素材がどこから来たのかを明らかにするトレーサビリティが欠かせません。それぞれの会社に共通する信念を感じるような発表が続きました。

パネルディスカッションで投げかけられた、「相手の国でうらやましいところ」に関しては、上記のような回答が出ました。いくつかピックアップします。

Câpsulaのマネージャー・Pieternel Kroes (ピーテルネル・クルース)オランダ発「プレミアム・タイニーハウス」ブランド。建築・インテリアデザインで国際的に評価を受けている建築事務所 i29がデザイン。「少ないもので豊かに暮らす(Live Large with Less)」を掲げる。(提供写真:Ryo Nagata)

ピーテルネル

私は15年前に4年間、日本で暮らす機会に恵まれました。その時、日本社会では人々が本当によく協力し合っている点に感銘を受けました。

目標を掲げると、全員がその達成に向かって本気で取り組む姿勢がある。これはさまざまな場所で明確に表れていると思います。

「自分の会社を動物にたとえる」質問では、Goldwin Venture Partners キャピタリストの竹岡 紫陽さんは、「ビーバー」と回答しました。その意図は?

Goldwin Venture Partners・キャピタリスト・竹岡 紫陽。スポーツアパレルを中心とした株式会社ゴールドウインが設立したコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)ファンド。サステナブル素材やファッションテックなど革新的スタートアップへの投資を行う。(提供写真:Ryo Nagata)

竹岡

ビーバーは自然の素材を使って美しい構造物をつくり上げる生き物ですよね。私たちも同じように、自然への敬意を持ちながら多くのバイオベース素材を活用しています。場合によっては合成生物学由来の素材を使うこともあります。

ビーバーがつくる構造物はとても美しく、洗練されていて、クラフトマンシップを感じさせるものです。製造のコンセプトのひとつは、細部へのこだわりです。こういった点も弊社と共通していると思い、ビーバーを選びました。

Q3のパネルディスカッションのテーマは、「サステナビリティについて、いま気になっている1番の課題は?」です。

まずは、日本で「自然資本の成長」を掲げるスタートアップ・青葉組の中井さんの回答が紹介されました。

中井

日本には非常に多くの森林があります。特に人工林が多く、その面積は世界で7番目。しかし、これらの森林は適切に管理されていないという大きな問題を抱えています。『過剰利用(overuse)』ではなく、『未利用(underuse)』なのです。

青葉組株式会社の創業者・中井 照大郎。「自然資本の成長」を掲げるスタートアップ。木や森だけでなく、水や土、生き物なども含めて育て、企業や国と協業。既に約1億3,000万円の受注を達成し、林業のビジネスモデルの変革に挑む。(提供写真:Ryo Nagata)

中井

手入れがされていない森林は地滑りのリスクが高まり、山火事も広がりやすくなります。クマなど野生動物による被害も過去最高を記録。スギ花粉の量はこの20年間で2倍になりました。

この140年間で日本の農業従事者や林業従事者の数は92%も減少しました。他の先進国でも同じような傾向かもしれませんが、その結果、湿地や草原の多くが失われてしまいました。カエルのような両生類や、その他の昆虫たちが絶滅の危機に瀕しています。

Circulariseの創業者・Jordi de Vos (ヨルディ・デ・フォス)オランダ発のサプライチェーン透明化プラットフォーム企業。資源の出所を明確化し、リサイクル可能性を高める仕組みを提供。競争力に関わるデータを守りつつ必要な情報を共有。(提供写真:Ryo Nagata)

ヨルディ

世界中に素晴らしい取り組みが数多くありますが、ローカルで限定的なものにとどまっています。自分の範囲で少し改善することはできても、本当の意味で課題を解決しているわけではないのです。

他のサプライチェーンから原料を調達する必要があるため、自分たちの循環の外へ出てしまう製品も出てしまう。こうした点こそが本当の課題であり、もしそれを解決できれば、真のサーキュラーエコノミーを実現することができるでしょう。

3Dプリント、高速道路、海運。社会をサステナブルにする技術開発

最後のラウンドでは、「サステナブルな技術開発」に関わる5つの企業が登場しました。

パネルディスカッションテーマである、「相手の国でうらやましいところ」に関する回答は上記のようなものが集まりました。

構造計画研究所のプロダクトマネージャー大川 瑞葉。1956年に創業された日本のエンジニアリング・コンサルティング企業。建築・防災・情報通信など多分野でシミュレーション技術と数理工学を活用し、社会や産業の課題解決に取り組む。(提供写真:Ryo Nagata)

大川

幸福度ランキングにおいて、オランダが非常に上位であることに驚きました。日本は残念ながら、50〜60位あたり。理由のひとつは、長時間労働など時間に追われる生活スタイルが影響しているのではないかと考えています。

“幸福の秘訣”をぜひオランダの皆さんから教えていただきたいです。

Zavhyの創業者・Zeeshan Ahmed (ジーシャン・アフメド)。 :オランダに拠点を置く3Dコンクリートプリンティングのスタートアップ。革新的な3Dコンクリートプリンティング技術によって、建設業の脱炭素化・自動化・資源循環を推進し、持続可能な建築の未来を目指す。(提供写真:Ryo Nagata)

ジーシャン・アフメド

未来を見据えて前へ進もうとする姿勢を持つ一方で、『敬意・思いやり・謙虚さ』といった価値観を決して手放さないと、来日して感じました。

それは私にとって本当に大切にしたいものであり、尊敬しています。ぜひ自国に持ち帰りたいと思います。

続く、「自分の会社を動物にたとえるなら?」の質問では、日本ではあまり馴染みのない「Grutto」という鳥を選んだ方が。その理由は?

※写真

<キャプション>SeaHiker CFO・共同創業者のJan Hoefnagels(ヤン・フーフナヘルス)。オランダを拠点とする洋上エネルギー・海洋技術のエンジニアリング企業。特に洋上風力発電向けの建設・設置支援技術 に強みを持つ。WTIV(風力タービン設置船)の作業効率を飛躍的に高める特許技術を持ち、洋上風力を中心にオフショア産業の効率化と安全性向上を支援。(提供写真:Ryo Nagata)

ヤン

私が選んだのは、オランダの国鳥・Grutto。北ヨーロッパからアフリカまで飛んで戻ってくるというたくましい鳥です。

私たちにとってこの鳥は、環境状況を象徴する存在でもあります。かつてはたくさん見られましたが、今ではその数が大きく減ってしまいました。

この現実は、私たちが生態系の現状や未来の環境についてもっと高い意識を持たなければならないことを示していると思います。

続いては「サステナビリティについて、いま気になっている1番の課題は?」という問いかけです。

NEXCO東日本 新規事業推進部部付部長の瀬川 祥子さん。NEXCO東日本は、日本の高速道路インフラの一角を担い、主に新潟県および長野県の一部を含む関東以北から北海道までの高速道路の建設・維持・管理・運営を行う。瀬川さんは、NEXCO東日本のアセットを活用し、オープンイノベーションで新たな価値の創出を目指すドラぷらイノベーションラボを運営する。(提供写真:Ryo Nagata)

瀬川

会社としては、『NEXCO東日本グループ カーボンニュートラル推進戦略』にそって推進することとなります。

私としては、高速道路空間を『新しい再生可能エネルギーを生み出すプラットフォーム』に変革することに取り組みたいと考えます。高速道路空間には、太陽光発電や風力発電、さらには小規模な水力発電のポテンシャルが秘められており、地域との共創で、その可能性はさらに広がります。

そのため、私たちは新しいアイデアや大胆な発想を持つ協働パートナーを探しています。高速道路がエネルギーの『消費者』から『生産者』へと転換したら素晴らしいと思いませんか。もしかすると、次のグリーン革命は高速道路から始まるかもしれません。

Ocean Network Express(ONE)広報チームの小堺 祐樹さん。日本の海運大手3社がコンテナ輸送事業を統合して2017年に設立されたコンテナ海運会社。「AS ONE, WE CAN.」のスローガンのもと、グローバルな定期コンテナ輸送サービスを提供。(提供写真:Ryo Nagata)

小堺

私たち海運業界にとって最大の課題は、2050年までに温室効果ガス排出ネットゼロを達成すること。

より環境に優しい次世代燃料としてさまざまな候補となる燃料がありますが、供給量やコスト、安全性などそれぞれ課題があり、現時点では決定的な選択肢はまだ見えていません。しかし、次世代燃料の活用を着実に拡大していくことで、2050年のネットゼロ達成に着実に取り組んでいきます。

一方、環境対応は非常に大きな社会課題であり、一社単独で解決できる問題ではありません。多くのステークホルダーと力を合わせて取り組むことが不可欠です。

サステナビリティの未来への架け橋

全てのセッションが終了後、出島チームの鳥巣さん、倉成さんから最後にコメントがありました。

鳥巣

本当にワクワクする時間を過ごすことができました。約425年前、出島はまさに今日と同じようなエネルギーに満ちていたでしょう。

私たちは皆、『出島』のような存在です。互いをつなぎ合い、新しいアイデアを生み出すという共通点を持っています。今日、サステナビリティを実現するためのたくさんの“かけ橋”が生まれたことを願っています。

倉成

実は出島は将軍が「作れ」と命じたものの、資金は出さなかったそうです。その代わり、長崎の25人の商人たちが自ら投資し、リスクを背負って建設しました。

当時から、出島にはアントレプレナーシップが満ちていたのです。そして今、その精神を皆さん一人ひとりへと引き継ごうとしています。

ぜひ、実際に長崎の出島を訪れてみてください。そして、ここから始まった良い関係がこれからも続いていくことを願っています。

出島の精神が、425年の時を超えて再び息づいた一日。

それぞれの想いとアイデアが交わり、新たな「橋」が築かれたこの時間は、これからの未来を形づくる原点となるはずです。

(提供写真:Ryo Nagata)

2025年9月取材

取材・執筆・撮影=佐藤まり子
撮影・編集=鬼頭佳代/ノオト