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海外企業の最先端のSDGsへ向けた取り組みとは? アジア諸国編 後編

アジア諸国前編ではアジア各国の企業がどのように貧困や飢餓に取り組んでいるのか紹介した。今回の後編ではアジア各国の企業がどのようにして環境問題に向き合っているかについてフォーカスを当てる。具体的にはSGDsの中から「安全な水とトイレを世界中に」、「住み続けられるまちづくりを」、「気候変動に具体的な対策を」の3つのゴールをピックアップし、企業がどのようなポリシーを掲げ、問題解決に取り組んでいるのかを見ていく。

Clean Water and Sanitation 「安全な水とトイレを世界中に」

国連は2030年までに世界中の人々が地理的、金銭的な障壁に関わらず安全な水を使えるようにすることを目的としている。SDGsが初めて提唱された2015年から現在までに1億人以上の人々が新たにきれいな飲み水と屋内のトイレが使えるようになった。一方で未だ世界の人口の約3割の人々が、家庭で安全な飲料水を利用できない状況にある。

Coway (韓国 ※マレーシアにて活動)

マレーシアの一部の地域では未だ安全とは限らない水の使用を日常的に強いられる人々がいる。そのひとつのグループがマレー半島の先住民族、オラン・アスリの人々だ。近年、マレーシアでは河川汚染が問題視されているが、都会から離れた森の中で暮らしている彼らの多くが、未だ多くが水源として川に頼っている。

韓国発の世界的な家電メーカー、Cowayでは「ハッピーウォータープロジェクト」と題して、携帯式浄水器を無償で提供、使い方の講習などを行なっている。また、より衛生的な生活ができるようにと、村の子どもたちを対象に手の洗い方、歯磨きの仕方の講習なども実施。2020年までに700世帯ものオラン・アスリの家族の生活に貢献している。

Smart Paani (ネパール)

ネパールでは行政管理の水道水に日常的なアクセスのある人が人口のおよそ半分、残りの半分は施設の井戸など、民間で管理されているシステムに頼っている 。そんな現状の中、水処理業者SmartPaaniは施設や企業向けに持続可能な水道システムを開発し、住民が購入しやすい安い価格帯で提供している。

例えば、流し台などから排出される排水をトイレの水に再利用するシステム。流されたトイレの水は、その後処理され造園などに再利用され、飲用に適さない水も無駄にせず様々な用途に使えるようにすることで、水不足を解消している。水不足と環境への配慮と、2つのSDGsに同時対応している画期的なシステムだ。

Smartpaani ウェブサイトより

Sustainable Cities and Communities 「住み続けられるまちづくりを」

国連は文字どおり持続可能な街づくりを目指すのと同時に、貧富の差によって生じる生活の差の改善も含まれている。国連は、2030年までにスラムなど、都市の特に貧しい人々が住む地域の改善の実現に働きかけている。

Turenscape (中国

中国は世界で最も洪水の多い国の一つである(参考)。原因として挙げられるのは、気候変動、そして都市化が招いた人為的な自然環境の破壊だ。

中国の建築事務所Turenscapeは自然に元からあった水循環システムを取り戻すことをビジョンとして掲げており、代表的な例として北京に位置する永興川の緑道がある。

写真にある自然公園では、元からあったコンクリートを取り除き川床を拡大。乾季の間は、雨水は周りの植物などに濾過されながら地下へ降りていき、雨水量が圧倒的に多くなるモンスーンの季節には、水路に流れた排水は工業的に濾過され処理される。洪水は行き場を失った水によって引き起こされることから、雨水や川水にゆとりのある空間を与えることで、都市の水害を削減する狙いだ。

Kumar Urban Development Limited (インド)

Asia Development Bank 開発計画白書より

現在、インドでは約9,300万人がスラム地域に住んでいると言われている(参考)。インドの建設会社、Kumar Urban Development Limited では、スラム住民の生活改善への根本的な解決策として、住民の退去、居住区の提供を行なっている。

代表的なのはNirvana地区のスラム復興支援プロジェクト。これは既存のスラム復興と住民の支援と、スラムを撤去したことで開発可能となった土地の商業及び住宅販売のためのプロジェクトである。提案されている開発計画では、約39棟の商業ビル、アパートが建設され、内約5000戸がスラム住民に提供される。

Climate Action 「気候変動に具体的な対策を」

国連は、各国に対し、気候変動による災害が発生した際の対応力の積極的な増幅などの対策を呼びかけている。また、開発途上国や、海面上昇の被害を真っ先に受ける小さな島国のサポートも推奨している。刻一刻と気候が変化していく中で、いかに素早い処置を取れるかが重要である。

Malchin (モンゴル)

モンゴルでは未だ人口の3分の1が遊牧民として生活しているが、都市部の現代化が進む今、利便性を求めて都市生活を選択する者も増え始めている。移民の多くは仮設住宅に住み、石炭や薪を使用するため、毎年寒い季節には世界でも例を見ないほどの大気汚染に見舞われる(参考) 。

家電流通大手Malchinは、遊牧民に風力、太陽光発電で動く家電製品を提供することで、彼らが自分達の文化を手放すことなく暮らしていけるようにし、また都市部の空気質の改善にも貢献している。生活必需品であるバッテリーや冷蔵庫、洗濯機、LEDテレビなど、豊富なラインナップがある(参考) 。

Taru Leading Edge (インド)

Taru Leading Edge ウェブサイトより

インドはバングラデシュについで世界有数の洪水大国であり、毎年多数の被害が出ている。いかに自然界に害のないアプローチで洪水管理を実現させるかが国家の課題となっている。

有限会社 Taru Leading Edgeは、都市部の洪水問題に対処するため、コルカッタでの包括的な洪水早期警報システム、Taruの開発を主導している。洪水時に浸水しやすい場所、運河や交差点など市内の要所に設置された超音波センサーが異変を感知し、モバイルアラートを通じて市民へと共有する。

これにより迅速な現状把握、避難が可能になり、日常的に洪水の起こりやすい地域では特に日々の生活のプランニングに役に立つ。また、蓄積されたデータは、都市開発や設計の改善にも貢献し、都市の自然災害からの回復力を強化する。

企業による活動の重要性

紹介した企業主導のプロジェクトやサービスを通して、民間からのアプローチの重要性がわかる。如何に国家がSDGs実現に向けた政策やスローガンを打ち出したとしても、同時にローカルに活動していかなければ問題の根本には辿り着かなく、解決へのアクションも生まれにくい。

今回はアジア諸国におけるSDGsの取り組みをまとめた。このSDGs特集は、次回は中南米編へと続く。各国の最新の取り組みと、地域ごとにどのような差異があるのか、考え方の違いなどにも注目したい。

テキスト:松尾舞姫