オンラインでもワンチームに - コロナ禍のオフィスづくりで見つけたヤッホー流のチームビルディングとは
長野県御代田町に新拠点となる「御代田醸造所」を設立し、新たなスタートを切ったヤッホーブルーイング。オフィス移転を機に、スタッフ同士の心の距離を近くするための「ワンフロアオフィス」の新設を決めました。
すべては、同社の魅力であり、最大の武器でもあるコミュニケーションを大切にし続けるため――。
今回は、ヤッホーブルーイングとオフィス提案を担当したオカムラチームとの総勢8名での懇談会を開催。前編では、新オフィス移転の意図やデザインに込められた想いを伺いました。
後編のトークテーマは、コロナ禍での新オフィス完成までのチームビルディングや新オフィスのビジョン。ヤッホーブルーイングならではのコミュニケーション術やテレワークの実態、ヤッホーブルーイングがめざす未来についてたっぷり語っていただきました。
株式会社ヤッホーブルーイング
写真右/神代 沙紅良(ニックネーム:くるり3) 総務ユニット(ユニット名:ヤッホー盛り上げ隊)
写真中央/羽野 優衣(ニックネーム:はのちゃん) 情報システムユニット(ユニット名:システム管制塔)
写真左/児玉 ノンナ(ニックネーム:はまち) 通販受注・顧客対応ユニット(ユニット名:おもいやり隊)
株式会社オカムラ
写真右/林 昌毅(ニックネーム はやしっぺ)営業開発部 開発営業担当
写真中央/塚本 紗千(ニックネーム つかP)スペースデザイン一部 デザイナー
写真左/神山 里毅(ニックネーム リッキー)フューチャーワークスタイル戦略部 クリエイティブディレクター
オンラインでも「大丈夫」、を実感できたコロナ禍でのオフィス移転
WORK MILL:今回のオフィス移転はコロナ禍で行われましたよね。やりとりをするうえで不安はなかったのでしょうか。
くるり3:それはもちろんありました。はじめての大規模な移転プロジェクトであるうえに、なかなか直接会える機会もなかったので……。
リッキー:オカムラチームも基本は東京にいて、序盤の下見以外、現地に行ける機会がほぼなかったので、ヤッホーさんとのやりとりのほとんどはオンラインでした。とはいえ、既存の建物をオフィスにコンバージョン※1していく過程で、どうしても工事状況や今後の進め方を実際に確認する必要があったんです。
WORK MILL:現地に行けない問題はどのように解決したのでしょうか。
リッキー:実際にオフィス設備の工事を進める過程で、定期的に現状の工事状況についてオンライン生中継で共有をしていました。リアルタイムで見て、その場でヤッホーさんと細かくディレクションして詰めていったんです。
はのちゃん:つかPがパース(立体設計図)をあげてくれたときに、リアルな図面をアップしてくれたので「あ、こんなオフィスになるんだ!」とイメージしやすくて。実際に竣工したときもイメージに近かったです。
WORK MILL:パースのイメージを伝えるうえで創意工夫した点は?
つかP:CGに頼った部分はあるものの、ミーティング中「この部分にヤッホーさんのよなよなエールの超宴※2で使われている写真の雰囲気を採用したいと思っています」とか、「床面はこのように仕上げます」といったように、なるべく詳しくお話しました。直接会って説明できない分、気持ちをこめて伝えるようにしましたね。
WORK MILL:ヤッホーチームの皆さん、つかPの熱意は伝わりしたか?
ヤッホーチーム:はい、十分伝わりました。オンラインでも細やかなやり取りをしていただけたので心強かったです。
WORK MILL:その他に、オンラインでやりとりする中で苦労した点はありますか?
はやしっぺ:新オフィスのイメージを決めるうえで重要となる家具選びの際に、オカムラのショールームから生中継したことでしょうか。コロナ禍であったこともあり、対面は避けてオンラインでのやりとりを選びました。ショールームではデスクやチェアにグッとカメラを近づけて、ヤッホーさんの意見を聞きながら家具を選びました。
くるり3:大変な部分もあったのですが、今回のオフィス移転プロジェクトを経験して、オンライン上であってもある程度のコンセンサスが取れると確認できました。リアルタイムでの生中継など、お互いのコミュニケーションの創意工夫で、補えることは沢山あるんだなと。
※1既存建物の用途を変更し、全面改装を施して新しい建物へ再生させること。
※2 2015年からスタートしている「よなよなエール」ファンが集う、ヤッホーブルーイング最大規模のファンイベント。
ワンチームに導いた、アイスブレイクと雑談
WORK MILL:オンラインでのやりとりが基本でしたが、両社に信頼感や一体感が生まれたターニングポイントについてお聞かせください。
くるり3:定例ミーティングを重ねるごとに、自然と一体感が生まれていったんです。オカムラチームもパートナーとしてヤッホーに寄り添ってくれたので、私たちも安心して進められました。
はのちゃん:ミーティングの冒頭にアイスブレイクを行うスタイルも取り入れましたね。
WORK MILL:具体的にはどのような…?
はやしっぺ:雑談タイムのようなもので、1時間30分の定例ミーティングのうち半分アイスブレイクに使っていた回もありました。どうしてもミーティングは生産性の話が中心になってしまいますが、コロナ禍でのオンラインコミュニケーションにおいては、それだけでは少しさみしくて……。
アイスブレイクを挟むことでミーティング自体もスムーズに進められますし、お互いの距離も近くなるんです。
はのちゃん:どんな仕事を担当しているのかを紹介しあって、お互いにワクワクしていました。普段ヤッホー社内で行っているアイスブレイクとは違うトークテーマだったこともあり、定例ミーティングの前には「今日はどんな話を聞けるんだろう」と楽しみでした。
リッキー:今回のオフィス移転プロジェクトにおいては、雑談から発展するチームビルティングを強く意識していました。プロジェクトオリジナルTシャツを今日は全員着てきましたけど、雑談がきっかけで生まれたアイデアなんですよ。プロジェクトのTシャツをお揃いで着ることによって、ワンチームで行っている実感が湧きました。
WORK MILL:オフィス提案をする側にとっても初めての経験も多かったと思います。ヤッホーさんとのチームビルディングで学んだことはありますか。
はやしっぺ:最初のミーティングのときに自己紹介タイムがあったのですが、ヤッホーチームのメンバーは自己紹介スライドをつくられていたんです。「すごい、本気だ!」って圧倒されました(笑)。
でもこれって普段からコミュニケーションを大切にしているヤッホーさんならではですよね。素敵な文化だなと思いました。
くるり3:ヤッホーで働く中で、チームビルディングの醍醐味は一人ひとりが自然体でありながら、お互いの強みを最大限に発揮しあい、チームで成果を出せることだなと日々感じています。だからこそチームビルディングの土台として、メンバー間のコミュニケーション量の確保が欠かせないんです。
WORK MILL:ヤッホーブルーイングのチームビルディングは、スタッフ同士のコミュニケーションから発展しているんですね。
くるり3:コミュニケーションを十分に確保できた環境であれば、お互いの人となりが分かっているので意見やアドバイスも言いやすくなるんです。社内では、ワンチームとして働くうえで非常に重要な要素と捉えています。
そんなヤッホーブルーイングのスタイルをプロジェクトの中にも積極的に取り入れていただけてうれしかったです。
はやしっぺ:オンラインでのミーティングだと、それぞれのお家の様子が見えたり、子供たちが時々顔を出したりね! そういう何気ない瞬間や会話がお互いの距離を近づけてくれるきっかけにもなりました。
はのちゃん:社内外関係なくチーム全員と、自然体でお話しできました。ほとんどの時間がオンラインでのコミュニケーションでしたが、雑談を取り入れたりしてコミュニケーション量をしっかり積み重ねていけば、リモート環境であってもお互いに安心できる信頼関係を築けるのだと実感しました。
WORK MILL:オンラインでのやりとりを重ね、実際に対面されたときの第一印象はどうでしたか。
リッキー:初めてお会いした感覚ではなかったんですよ。「今さら名刺交換するのも違うなぁ」って思うくらいに。チームが完全に出来上がった状態での「はじめまして」でした(笑)。
はのちゃん:本当に、初対面という感覚は全くありませんでしたね。初めて全員で集合したプロジェクト中盤の現場打ち合わせ時、つかPと着ていたコラボTシャツの色が被ったのが印象的でした。以心伝心みたいで、とても嬉しかったです!
つかP:私も嬉しかったのでよく覚えています。その時も皆でコラボTシャツを着て集合しましたよね(笑)。
コロナ禍のテレワークで編み出した「シャッフル朝礼」で、他部署間コミュニケーションも円滑に
WORK MILL:アットホームでスタッフ同士の距離が近いヤッホーさんでは、コロナ禍でのテレワークはどのように行っているのでしょうか。
くるり3:ちょうどオフィス移転プロジェクトの山場だった4~7月は、ほとんどの部署がテレワーク体制を取っていました。背骨ユニットと呼ばれている、受注や出荷、製造担当以外は、極力テレワークで業務を進めていましたね。
テレワークの体制は各ユニットで工夫しながら調整していますが、もともとヤッホーブルーイングの文化であった「スタッフ同士雑談をする朝礼」はテレワーク下でも部署単位で継続されています。
はのちゃん:どうしてもテキストベースのやりとりが増えるテレワークだと、何気ない会話も減ってしまうんですよね。朝礼を欠かさないことでチーム内のコミュニケーション量を確保でき、オンライン上でもチームの連携が取れた業務が行えていると思います。
WORK MILL:テレワークが続く中で、課題はどのような点ですか?
くるり3:テレワークが継続する中で顕著になった課題が、部署内のコミュニケーションは十分であっても他部署の様子が分からないことでした。そんなテレワークならではの課題を解決するために始まったのが、「シャッフル雑談朝礼」です。
WORK MILL:他部署とのシャッフルということでしょうか。
くるり3:はい、おっしゃる通り、異なる部署のメンバーをシャッフルしていくつかのオンライン会議室に振り分け、そこで雑談する取り組みです。ヤッホー全体がひとつのチームとして動いていくためには、チームごとはもちろん他部署メンバーとのコミュニケーションも不可欠ですから。
さらに、もともとの文化として根付いていた各部署の定例ミーティング議事録の共有、および議事録へのコメント習慣も続けています。
リッキー:オフィス移転プロジェクトの議事録も共有されていたのですか?
はのちゃん:そうですね。オープンな状態にして、スタッフ同士で確認できる状態にしていました。
御代田醸造所で始まる、ヤッホーブルーイングのチームビルディング
WORK MILL:さまざまな創意工夫を経て完成した、御代田新オフィス。ヤッホーチームの印象はいかがでしたか。
はのちゃん:とにかく細やかな部分にまでヤッホーらしさが詰め込まれていて、わたしたちの希望が反映された空間になったと思います。
ヤッホーが毎年開催している「よなよなエールの超宴」の雰囲気がオフィスにもしっかり再現されていますしね。
WORK MILL:話は尽きませんが、最後に新オフィスでつくりだすこれからの構想やビジョンをお聞かせください。
くるり3:移転とはいっても、オフィスとしてはスタート地点に立ったばかり。今はコロナの影響で人数も制限されていますが、将来的にはより多くのメンバーが関わりながら進化させる空間になってほしいなと思います。
その時々の働き方に柔軟に合わせながら、メンバー全員が心地よく過ごせるオフィス環境をつくっていきたいですね。
はまち:自ら行動し仕事を楽しむ文化があるヤッホーブルーイングだからこそ、新オフィスを通じて、新しいプロジェクトの立ち上げや柔軟にアップデートする姿勢を身に付けていきたいです。そして「オフィス=家」という気持ちを忘れずに、みんなの心の拠り所になるようなオフィスをめざしていきます。
はのちゃん:佐久醸造所や物流倉庫といった御代田醸造所以外の拠点もあるなか、今後働き方を見直す過程で拠点の選択肢も増えていくと思っています。今回のオカムラさんとのチームビルディングを通じて、私自身はもちろんヤッホーチームのメンバーも、オンラインでのコミュニケーションに抵抗がなくなってきているはずです。
今後はインフラ面をより整備してゆくゆくはオンラインとオフラインの差なく、かつ部署間の垣根を超えてチームビルディングできる方法を探っていきたいですね。待望のワンフロアオフィスが完成したので、来期はまず、コミュニケーションにおけるインフラ面をどのように整備すべきかを考えていきたいです。
2020年12月1日更新
取材月:2020年10月