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アフターコロナ時代の働き方、働く場に起こる変化とは?

全国的に緊急事態宣言が解除され、ウイルスの感染に注意しながら経済活動を再開していくウィズコロナの期間に入りました。時差出社、ソーシャルディスタンシングの確保などまだまだ通常の生活とは異なる不便な点もありますが、アフターコロナに向けて着実に進んでいます。オカムラでは新型コロナウイルス感染症対策としての在宅勤務に関する実態調査をおこない、「慣れない在宅勤務 どんなことが起こっているのか緊急調査」、ウィズコロナの期間のオフィスを考えるレポートを公開してきました。

今回は、現在のウィズコロナ、そして特効薬やワクチンが開発されたアフターコロナの時期にどのように働いていくのかについてのレポートを2回にわたってお届けします。前回はウィズコロナ、アフターコロナにおこないたい働き方や選ばれる働く場のあり方についてご紹介しましたが、2回目はアフターコロナの時代に働き方、働く場に起こる変化について見ていきたいと思います。

あなたの意識はかわりましたか

2月末に政府がテレワークの推奨を呼びかけた時から数えると、すでに4か月以上私たちは窮屈な状態で働いてきています。今まで普通に通えていた会社に行くことができない、顔をあわせて働いていた人に会えない。経験したことがない数々の困難に直面しつつも、何とかそれを乗り越えて働くためのスキルを身につけていった人も多いのではないでしょうか。以前はあまり使わなかったオンライン会議を気軽に開催できるようになった。チャットで同僚と雑談するようになった。勤務時間を自由に設定して、家事や育児と両立した。ウイルス感染に関するネガティブな情報が多い中、前向きに状況に対応する姿もまたメディアを通して共有されました。

では、今回の事態を経て、アフターコロナの時代に移ったとき、私たちの仕事やオフィスに変化は訪れるのでしょうか。少し抽象的な質問ですが、直球で「新型コロナウイルス感染症収束後に働き方や働く場は変化すると思うか」という質問をしてみたところ、下図のような結果になりました。

なんと9割以上の人が「非常にそう思う」「ややそう思う」と答えており、働き方や働く場に対して見直すべきことがあると感じている人が多いことがわかります。今でこそ「テレワーク」や「在宅勤務」といった言葉は一般的になりましたが、今回の事態以前には多くの人にとってなじみがないものであり、実際に体験したことがある人もごく一部にとどまっていました。多くの人が強制的とは言え、今回これらを経験したことによって、働き方の選択肢に気づいたのではないかと思われます。

集積型大規模オフィスからの脱却

では、具体的に働き方や働く場にどのような変化が起こると感じているのでしょうか。まず、働き方の訪れるであろう変化について聞いてみると、「テレワークが広く浸透する」と答えている人が多くいることがわかります(下図)。

以前にもお伝えしましたが、今回の事態は非常に特異であり「強制的な実施」や「在宅勤務のみ」といった条件のもとおこなわれました。そんな中でも離れていてもできる仕事や在宅勤務ならではのメリットを感じた人が多く、ウイルス感染対策ではない本来のテレワークがおこなえるようになれば、さらなる効果を享受できるのではないでしょうか。

次に働く場に訪れるであろう変化について聞いてみたところ、「オフィス規模、床面積が縮小する」という意見と「オフィスの存在意義が変化する」といった意見が多く寄せられました(下図)。

多くの企業でウイルス感染を避けるために出社率を制限し、オフィス内の人口密度を下げながらの運用がおこなわれています。そのような状況では、オフィスがとても広く感じられますし、テレワークができるのであれば、オフィスの面積を削減したほうがいいのではと考えるのは当然のことだと思います。ただ、先ほどもお伝えしたように、今回の事態は特異なものであり、今後感染の危機が去った後にどれくらいの出社率を設定するのかによってオフィスの風景も変わってくるでしょう。

「オフィスの存在意義が変化する」というと、とても堅い雰囲気がしますが「なんのためにオフィスに行くのか考えるようになった」という意見がとても多く寄せられました。これについてはとても良い傾向だなと感じています。「オフィスに行くのが当たり前」「いつもの習慣で行ってしまう」のではなく、「この仕事はどこでやったらはかどるのか」「○○さんに会うためにオフィスに行く」といったしっかりした目的意識をもって出社するようになるからです。大勢の人が同じ時間に同じ場所に集まって働く「集積が生み出す価値」がある一方で、ネットワーク上でつながれる「分散が生み出す価値」の恩恵も受けられる現代。オフィスに行く意味を考えることはとても重要になると思います。

タスクと場所のマッチングを意識

今回は在宅勤務に限られた状況になりましたが、先の回答のように今後テレワークが広く浸透していくとしたら、働く場所の選択肢はどのようにあるべきなのでしょうか。オフィスと自宅以外に働く場所の選択肢を持つ必要があるか聞いてみたところ、9割を超える人が「非常にそう思う」「ややそう思う」と答えました(下図)。

次になぜそう思うのかという理由について聞いてみたところ、「通勤時間を削減するため」と「集中して仕事をするため」のふたつの意見が多く寄せられました(下図)。今回の在宅勤務では通勤時間が無くなり、その分の時間を家事や休憩などほかの行為にあてがうことができました。そのことから毎日長時間かけて通勤することに対する「無駄」という意識が高まったと思われます。アフターコロナの時代には在宅勤務だけでなく、通勤途中や郊外にあるシェアオフィスを使ったり、客先近くの社内サテライト拠点を使ったりと、いかに移動時間を減らして効率よく働くかということに焦点が移っていきます。

 

また、在宅勤務をしてみると、個人で集中しておこなう仕事の効率が非常に高まります。オフィスにいると話しかけられたり、電話に出なければいけなかったりで集中が途切れがちであっても、テレワークであればそうしたことが起こりにくい。コミュニケーションをとりながらの作業はオフィス、個人で集中するときにはテレワークというタスクと場所のマッチングが今後おこなわれていくと、効率を上げて働けそうです。

この危機は転換点になるか

「戦後最大の危機」「リーマンショック以上の不況」といったことがマスコミで報じられている新型コロナウイルスの世界的な流行。強制的に在宅勤務がおこなわれる状況を経て、私たちの意識にも「ここで大きな変化が起こる」という方向に傾きつつあります。変化を実現していくには、まず、自分が今後どう働きたいのかを具体的に描いていく必要があります。決められた場所で決められた時間、決められた仕事をするのが幸せなのか。そこから新しいものやサービスが生まれるのか。

他人が書いたシナリオで働くのではなく、自分の描いた道筋をたどっていきたいですね。

2020年7月2日更新

テキスト: 池田晃一(株式会社オカムラ)
調査:オカムラ ワークデザイン研究所 2020年
データ参照元:新型コロナウイルス感染症対策としての在宅勤務調査 緊急事態宣言前後の変化版