コロナ時代におけるイベントのリアルとリモートを考える
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、早い段階で開催や参加の自粛が求められたのが、人が集まる場としてのイベントでした。そのため、個人作業や会議に先んじてオンライン化が進み、ICTツールを使ったイベントが数多く開催されています。
リアルな場ではなくリモートでイベント開催・参加する中で見えてくる気づきや今後の展望についてお伝えします。
オカムラの共創空間とその役割
2015年から、「働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変える」をキャッチフレーズに、WORK MILLの活動を始めました。メディア発信をはじめとして、全国4ヶ所で共創空間を運営し、社外の個人・組織や顧客とさまざまなプロジェクトも行っています。共創空間の役割は、組織の壁を超えて多様な人材を集め、価値創造を目指す共創の種を生み出したり、実際に共創活動を行う場を提供することです。そのために社会・顧客にとって新しい価値をつくりだすセミナー・イベント・ワークショップを数多く実施してきました。
リモートイベントの企画と実施
WORK MILLとしては新型コロナウイルス感染が拡大してきた2月中旬からイベントの実施について検討を始め、2月25日には3月までのイベントの中止・延期を決定しました。その後5月末現在でも実際に人を共創空間に集めてのイベントは行わず、オンラインを活用したイベントを実施しています。ここではリモートイベントならではのメリットと、リアルに人を集めた時との違い・課題についてまとめていきます。
リモートイベントの3つのメリット
1.遠隔地からでも参加・集客可能
4月22日に東京主催で実施したリモートイベントには、東北から九州までの幅広い地域から申し込みがありました。また大阪や福岡で主催したイベントの参加者の約半数が首都圏からという状況も起きています。4つの共創空間それぞれの人脈を生かしたコンテンツを、全国の方にご紹介することができています。
2.プレゼン資料や登壇者の表情が見やすい
PCやタブレット端末で参加している場合、プレゼン資料や登壇者の表情を画面に大きく表示できるため、細かい内容や反応までよくわかります。2月20日にリモートで実施された「at Will Work Conference 2020」において日比谷尚武氏(一般社団法人at Will Work/一般社団法人Public Meets Innovation/渋谷をつなげる30人等 コネクタ)は、「データを扱うプレゼンだとグラフがよく見えるのでオンラインの方が向いているかも」という発言をされていましたが、参加していてまさにその通りと強く実感しました。
― 投影される資料の数字やグラフは、リアルイベントよりもリモートイベントの方が見やすい
3.登壇者と参加者のリアルタイムでのやり取りが容易
ZoomやSlidoなどのオンラインツールのチャットを利用すれば、登壇者の話の最中に参加者が質問や意見を容易に投稿できます。参加者にとっては話を聞いた直後に反応することができるとともに、登壇者にとっても聴衆の反応が見える化されます。リアルなイベントでもSlidoを活用して質問を受け付けることは可能ですが、オンラインですと投稿のハードルが下がり、登壇者も反応に注目しやすいと感じています。
リアルな共創空間 に人を集めたイベントとの3つの違い・課題
1.登壇者と参加者、参加者同士の交流が難しい
イベント終了後に名刺交換をしたり、追加で質問を行うといったことが、現状のオンラインイベントツールだと難しいものが多いです。主催者・登壇者側からは工夫すれば行えなくはないですが、参加者が主体的に実施することは困難です。次の共創につながる「種」を生むことが難しくなっています。
2.大人数のワークショップが難しい
リモートでのワークショップを実施した方に話を伺うと、20名を超える人数でのワークショップはオンラインでは困難とのことです。ファシリテーターが個人やグループの様子をリアルな場以上に気に掛ける必要があるためでした。実際の共創活動をどう行うかということが課題になっています。
3.イベントの告知期間が短い
実際に人を集めるイベントは開催日の1ヶ月前に告知することがセオリーでしたが、リモートイベントは1週間前の告知が多く、それでもたくさんの参加者が集まっています。コロナ影響下では特に、1ヶ月先の状況が見通せないということもありますが、前後の移動時間が不要だったり、別のことをしながらラジオ感覚で聞けることが、参加のハードルを下げていると考えられます。
これからのイベント・セミナーの考察
リモートイベントを自ら企画・運営したり、他者主催のものに参加してきた立場から、現時点でこれからのイベント・セミナーのあり方 働き方につながる点を3つ考察してみました。
1.リモートにはリモートの作法がある
リモートイベントのメリットとして「登壇者の表情が見やすい」という点を挙げましたが、裏を返せば細かい動作まで見えてしまうということです。私が参加したあるイベントでは、登壇者が手元のメモを読んでいるのがわかってしまい、自分の言葉で答えている他の登壇者と比べると印象が少し下がってしまいました。リモート上で好印象を与える立ち振る舞い・表情などは、リアルな場とは少し異なったものが求められると考えます。
2.企画段階で終了後を設計することが重要
リモートイベントでは、終了後に偶発的に共創の種を生むことが難しい分、企画の段階からイベント後に何を目標にしてどのように実施するのかを設計しておくことが重要だと痛感しています。オンライン上での会議やコミュニケーションにおいても、リアルな場以上に目的や目標が大事になってくるのではないでしょうか。
3.リアルな場に求められる「余韻」「余白」
新型コロナウィルスのワクチン・特効薬が開発、普及された「アフター・コロナ」の時期になった時、リアルな共創空間に求められるものは何でしょうか。それはイベントの「余韻」を残した中で、参加者が主体的に質問したり交流したりといった行動をとれる「余白」を設計することだと考えます。
これらはオフィスなどの人が集まる空間においても、必要な要素の一つになるのではないでしょうか。
おわりに
この記事を執筆している途中に緊急事態宣言が解除され、ウィズコロナのステージへ突入しました。リアルなイベントをどこまで許容すべきか、ガイドラインの作成を行っています。こうした中でも、そして今後も、オカムラの共創空間はさまざまなイベントを企画します。皆さんのご参加をお待ちしております!
オカムラの各共創空間について
組織の壁を超えて多様な人材を集め、価値創造を目指す「共創」。WORK MILLはこれからの「はたらく」に必要な共創活動を、東京・名古屋・大阪・福岡の4拠点からサポートしています。
組織や社会のかかえる課題が複雑化する中で、多様なステークホルダーをオープンに受け入れ、対話を通じ未来を目指していくような課題解決のサイクルを回すための活動を育む場です。WORK MILLのウェブマガジンや雑誌と連動して新しい価値を作り出す「WORK MILL Event」や、社内外の先進的な知見を共有する「Sea Academy」を実施しています。
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自動車関連産業をはじめ、古くから繊維、陶磁器、工作機械などのモノづくりで栄えてきた名古屋から、業種や組織の枠をこえた多様なステークホルダーの方々と、これからの「はたらく」を未来志向で探究し、描き、共有しています。特定の分野やメンバーだけでなく、情熱や当事者意識のある人たちのゆるやかなつながりをデザインし、コミュニティやプロジェクトを育んでいます。
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古くからの伝統・文化の根付く関西の地から、自然にリラックスしながら新たなおもしろい発見が生まれる場を目指して展開していきます。企業や自治体、大学などいろんな組織と共創しながら「働き方」「女性活躍」「学び直し」にまつわるさまざまなコンテンツを発信しています!
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オープンで祭り好き、ときにはおせっかいな福岡で、多様な方々と出会い、繋がり(Tie)、次のアクションへ挑戦する場づくりを目指しています。 「学ぶ」「働く」「学びなおし(リカレント)」をテーマにさまざまな共創活動を行っています。
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2020年6月2日更新
テキスト:垣屋 譲治(株式会社 オカムラ)