編集部がミル ― イノベーションの次に来るもの -THE AGE OF POST INNOVATIONALISM- 北京編
WORK MILLメディア編集部が日々の取材で掲載しきれなかった内容や、気になっている場所や物などをコラムとしてこれからお伝えしていきます!
2018年10月2日発売予定のペーパーマガジン「WORK MILL with ForbesJAPAN ISSUE03」。テーマは、「イノベーションの次に来るもの The Age of Post Innovationalism 」です。
テクノロジーが主導するシリコンバレー式のイノベーションが席巻する近年において、これからの時代、私たちの暮らしをより幸せにするのはテクノロジーだけでしょうか。ペーパーマガジンでは、イノベーションの次に来る、新しい経済のかたちをロンドン、北京、東京に訪れ探りました。「クリエィティブ」、「インクルーシブ」、「リ・インベンション」をキーワードに新しい価値創造の可能性を紹介します。
今回は、中国の北京を取材をする中で感じたそれぞれの都市の様子や感じたこと、ダイジェストでご紹介します。
空港から北京市内へ向かうタクシーの中から、街の景色を見て驚いたのは高層ビルの窓が空いていることでした。日本では、高層ビルの窓が空くなんて考えられない…!なんて到着早々、驚きを感じました。そんな驚きを感じつつも初めに訪れたのは、天安門広場の周辺にある「胡同(フートン)」とよばれる細い路地と伝統的な様式の住宅街。
その胡同内に事務所を構えるPeople’s Architect Office(PAO)という建築事務所を訪れました。PAOは、古いものを良い形で残すといったプロジェクトを行っていたりと、サスティナブルなモノづくりを目指している建築事務所です。その代表作のひとつが「プラグイン・ハウス」と名づけられたPAOの代表的なプロジェクト。彼らのオフィスも胡同内の四合院(北京の伝統的住宅)をリノベーションしており、「プラグイン・ハウス」を使った開放的なオフィスになっていました。しかも、そのリノベーションにかかった時間は約1週間という期間の短さ。詳しい彼らの取り組みについては、ペーパーマガジンでご紹介しておりますので是非ご覧ください。
この事務所を訪れるまでの街並みでの初めの衝撃は、お手洗いが共同であることでした。街の一区画ごとに共同のお手洗いが設置されており、中に入ってみると個室でもなく便器が数個並んでいるような場所でした。お手洗いが家にあることが当然な感覚のわたしとしては、「さぞ、不便な生活だろうな…」と勝手に想像をしていました。しかしながら、その生活に慣れている方にとっては、不便ではなくお手洗いの面積を家の中に確保することに抵抗がある方もいらっしゃる様子。愛着を持ち、工夫を凝らして暮らされているようです。固定概念満載でモノを見ている自分を再実感しました。 ただ、このような生活スタイルは若者はなじみが薄く、街の高齢化が進んでいることが課題でもあるようです。
この街の風景は、ものすごい勢いで電線が絡まっていたり(綺麗に整えたら、いったい何本になるのだろうか…)、シャツを着ているにも関わらずお腹を出したおじさんがたくさん歩いていたり、と昭和なノスタルジックさを感じました。とはいえ、昭和を数年しか生きていないわたしは、想像でしかありませんが…。と、思えばソーラーパネルが設置されていたり、セグウェイのような乗り物に載りながらスマホで会話をしている住人がいたりと、昭和の中に現代が混ざりこんだような不思議な街でした。
そんな地区からそれほど遠くない場所には、日本にはまだない2018年6月にオープンしたばかりのMUJI HOTEL、世界一?大きいと言われている3フロアにわたるスターバックス、その横には宝石商を行っていた場所をリノベーションした厳かなビルに取材日の翌日にオープンするというwe workがありました。先ほど訪れた地区との趣の違う現代的な光景に、ものすごくギャップを感じました。ちなみに、MUJI HOTELの中にあったベンチは先ほどの胡同で使われている黒っぽいレンガがおしゃれに再利用されていました(写真を取り損ねてしまいました)。
スターバックスに入った際に感じたのは、家具の配置の不思議さです。素敵な内装に素敵な家具があるにも関わらず、低い本棚はソファーで囲われて本棚の機能を失い、本が取り出せない…なんていうレイアウト。アバウトさに衝撃を受けていたのですが、誰も疑問に思わずくつろいでいる様子。細かいことにこだわらず、ざっくりとしているのは国民性なのかなぁ、なんて感じました。
街の中で初めて見たのは全自動の図書館。大通りの歩道にちょこんと急におかれていてびっくりしました。
ちなみに、中国と言えば町中がモクモクとした排気ガス、なんてイメージがあったのですが実際に訪れてみると電気自動車が走っていたりと、排気ガスはほとんど感じませんでした。聞いたお話によると、昨年まではわたしたちがイメージするモクモクとした排気ガスが感じられたそうですが、この一年で急速に変わったそうです。あまりにスピーディな動きに衝撃を受けました。
また、街を歩いているとビルや道路のスケール感が日本とは全く異なり、ものすごく自分が小さく感じました。一区画歩くのも、日本の感覚で歩くとへとへとになってしまいました。
そういったこともあってかは分かりませんが、街中には日本とは比べものにならないくらいシェアサイクルが展開されていました。街中で自転車に乗っている人は、ほとんどがシェアサイクルを利用していました。スマホで決済から鍵の解除までできるようで、移動手段としてはメジャーなようです。
また、ご存知かとは思いますが中国は日本よりも圧倒的に現金を使わない国と言われています。WeChatPay、AliPayなどの電子マネーはあらゆる場所に広く普及しており、スマホ一つで決済ができるようです。実際に利用してみたかったのですが、現地の口座がないと利用できないようです(わたしが聞いた限りですので、もしかしたら別の方法があるのかもしれません)。
写真は、誌面では取り上げませんでしたが「THE BULK HOUSE」という、ZERO WASTE(ゼロ・ウェイスト)をテーマとしたインテリア・日用品のショップです。日本では、個人商店で普及している電子マネーはそれほど多くない気がするのですが、しっかりと電子マネー対応がされていました。わたしが訪れた限りでは、対応してない店舗はなかったように思います。このお店では、繰り返し使えるストローや抽出型販売のシャンプーなど日本ではあまり見かけない製品の販売や販売方法をされていました。
※1ZERO WASTE(ゼロ・ウェイスト)…工場や地域社会での廃棄物の発生や資源の浪費をゼロに近づける運動
続いて取材したのはサスティナブルビジネスの価値を感じ、中国もサスティナブルにしたいという思いから始めたという世界で一番、地球に優しいというGung Ho!というピザ屋さん。ピザの生地は全粒粉・グルテンフリーやローカーボから選択でき、オーガニックな食材を厳選したお店、と聞いていたのですが、向かう途中の毒々しい?ピンク色の看板にわたしの理解が正しいのか少し不安になりました。
看板を通り過ぎ店内に入ってみると、看板のイメージとは異なる少しアメリカンな雰囲気の店内でした。ここではサスティナブルに注目したきっかけや新しいコンセプトの店舗開業のストーリーについてお話を聞いていますので、是非ペーパーマガジンでご覧ください。
夕食は取材後にこちらでいただいたのですが、フライドポテトはサツマイモでできており、食べてみるといわゆるジャンキーな味はせず、ほくほくしていてとてもおいしかったです。ピザもグルテンフリーの生地でオーダー出来たりと通常のピザ屋さんではオーダーできないことができました。ちなみに、こちらで飲み物を頼んだ際に出てきたのは、何度も使えるステンレスのストロー。THE BULK HOUSEで販売されていたもの(写真を参照)と同じものでした。日本では、何度も使えるストローを飲食店で見たことがなかったので新鮮でした。
正直なところ、中国にはソーシャルイノベーションというイメージはほとんどありませんでした。今回企画をするにあたり調べて知ったのが Bコーポレーション※2 というアメリカの非営利団体が運営する認証制度。環境に配慮した建造物に対してはLEED認証といった認証制度がありますが、こちらの認証制度はその企業版とも言われています。こちらの認定企業、日本は2,3件なのに対して中国は9件と圧倒的に認定企業が多かったのです。その違いはいったい何なのか、小さなところからソーシャルムーブメントが生まれてきているのではないか。そんな問いを元に、北京は取材を進めました。ここでは、ダイジェスト的にお伝えしておりますので是非興味をお持ちいただけましたら、ペーパーマガジンもお手に取っていただければと思います。
次回のレポートはロンドンについて紹介していきます。
※2Bコーポレーション…米国ペンシルバニア州に本拠を置く非営利団体のB Labが運営している認証制度で、環境、社会に配慮した事業活動を行っており、アカウンタビリティや透明性などB Labの掲げる基準を満たした企業に対して与えられる民間認証です。
2018年9月25日更新
取材月:2018年7月