着飾るほど、遠ざかる?「共創」はただの手段。いつか当たり前になって、なくなればいい(株式会社コネル・出村 光世さん、WORK MILL共創ディレクター・岡本 栄理)
異なる立場の人たちが集まり、新しい価値を創造したい。でも、そんな共創の源泉はどうやって見つけていけば良いのでしょうか?
今回お話を伺ったのは、オカムラの特許技術をもとに、2045年の職業を想像し体験する「0次開発Project」(2026年6月開催)をご一緒した株式会社コネルの代表・出村 光世さん。
WORK MILLの共創ディレクター岡本 栄理と改めて「共創」について考えてみました。
「なんかいい人そうだな」から始まったFactory Pride Association
お二人は、2026年5月29日に行われた「Factory Pride Summit 2026」でもご一緒されていましたね。WORK MILLを運営する株式会社オカムラとKonelの出村さん。
どのように出会い、お仕事が広がっていったのか、きっかけから教えてください。



岡本
振り返ると、私が主催した大田区の町工場を巡るツアーが、出村さんと初めてお会いした時だったと思います。
このイベントは、2024年に企業間交流を目指すスペース「terminal.0 HANEDA」のオープンがきっかけの企画でした。


岡本
これまでKonelさんには、展示会のグラフィックなどのオカムラのブランディングに関わる部分でお手伝いいただくことはありました。
でも、出村さんと実際にお会いして、お話したのはこの時が初めてでした。

出村
懐かしいです。楽しい催しでしたね。
その後、Konelがブランディングを担当させていただいている、静岡県の精密板金加工会社コプレックに、岡本さんが大阪の企業さんを引き連れてきてくれたんですよね。

どうして静岡まで?


岡本
私はもともとものづくりが好きでオカムラに入社したという経緯もあり、「ものづくり」にもっと光を当てたいという想いでWORK MILLの活動をしていて。
当時はまだ何につながるかはわかりませんでしたが、メーカーで働く一会社員として、最前線の情報を知っている状態でいようと思っていたんです。
大田区の見学に続いて、ものづくりの現場を多様なメンバーと共創的に見学する機会をWORK MILLの活動として企画しました。

出村
コプレックは、一般社団法人Factory Pride Association(以下、FPA)の理事の企業さんで。少しずつFPAが動き始めていた頃でした。

岡本
確か、見学後に「この取り組みを世に広めていきたい」と伺って。「もし色々と整った際には、声をかけてくださいね」と伝えていたんです。その後、出村さんから本当にお声かけをいただいて(笑)。
FPAの設立イベントを私たちの東京の共創空間「Open Innovation Biotope “Sea”」で開催することになったんです。

出村
当時、FPAはまだ立ち上がったばかり。オカムラのような大きな企業さんと一緒に進めることにも価値があると感じていました。今は、まだ僕らからするとgiveしてもらってばっかりという感覚です。
実は「岡本さんならお願いを聞いてくれそうだな……」という雰囲気を感じていたので、声をかけました。

岡本
うれしいです!

出村
岡本さんなら個人的にも動いてくれるかもしれないという期待感があって。岡本さんにお願いしているのか、オカムラさんにお願いしているのか……いい具合に曖昧な感覚だったのもよかったですね。
一緒に何かを始める時には、「なんか良い人そうだな」くらいのノリが、とても大事だと思っています(笑)。
毎日いろんな人と出会うので、何か動き出した時に「この人にお願いしたらいいぞ」というのがピンと思い浮かぶわけです。お互いに思いついちゃう感じですよね。

岡本
その感じ、わかります……!
あと、タイミングってありますよね。出会ってすぐ何かプロジェクトが動き出すことってあまりないので、「なにか」が動き出す「いつか」に向けて自然とつながり続けておくのが大事だな、と思います。ある時に機が熟して仲間になるなんてことは、これまでに何度も経験してきました。
今はSNSのおかげでゆるくつながっておくことができますし、直接会わなくても関係性が育っていくことも可能になりましたからね。
「なんか面白そう! この人たちと一緒にやってみたい」から始まった、0次開発Project
ここからは、株式会社オカムラで新規事業に取り組む、小貫 絢子さんにもお話を伺います。
まずはKonelさんと一緒に取り組んだ「0次開発Project」がどのように始まったのか、教えてください。


小貫
出会いは2023年ごろだったと思うのですが、まだフューチャービジネス推進事業部(現・フューチャービジネス企画部)も始まったばかりで、試行錯誤中でした。
Konelさんが運営する日本橋地下実験場に伺った際、心からワクワクしてしまって。
「なんか面白そう! この人たちと一緒にやってみたい」と、0次開発Projectへとつながっていきました。

「なんか面白そう!」から、プロジェクトがスタートすることがあるんですね!


出村
受発注によって新規事業を始める場合は、まずは契約書を締結して、お金をいただいて、いつまでに製品を作って、売り上げを達成して……という流れになります。
早期に売上を達成することを目標にしてしまうと、検証したり、実験したり、“遊ぶ時間”がなくなってしまうんです。


出村
でも、「面白そう」から始めると、泳ぎながら時間をかけて思考することができる。
「0次開発Project」については、「Konelとオカムラ、何だったら一緒にやれるかな?」というすり合わせを重ねていくことで、少しずつテーマが設定されて、企画が出来上がっていきました。

小貫
今回のプロジェクトは、「この人たちと一緒になにかを進めたい」という熱量があったからこそ前進していくのだと実感しました。
今でも忘れられないんですが、「この新規事業チームでこれから先どうしたらいいんだろう?」と出村さんたちと考えている時に、スペースデブリクリーナーの話をしてくれたんです。
スペースデブリクリーナー?


小貫
宇宙ごみを清掃する未来の職業の名前です。オカムラのリクライニングチェアの技術が、将来的には宇宙ゴミを掃除する「スペースデブリクリーナー」の人のアイテムになるかもしれないよ、とお話をされていて。
「なんかできるかもしれない!」「これまでのオカムラの事業に新しい付加価値をつけられるかもしれない!」と一気にプロジェクトが加速したことがありました。
もう心に火がついてしまい、「絶対にこのプロジェクトを形にしたい!」と思うようになったんです。
小貫さんの中の「やりたい」という思いがあったからこそ、プロジェクトを大きく前進できたのかもしれませんね!
実施した感想を教えてください。


小貫
想像以上の反響でした。
ご来場いただく方も当初の想定を大きく上回り、518社、2000名以上の方々にお越しいただきました。


小貫
短い開催期間でしたが、口コミが口コミを呼んで。
「〇〇社のAさんから『行ってきた方がいい』と言われたので来ました」と駆け込んでくれた会社員の方、学生や家族連れ、さまざまな立場の方がそれぞれの目線で未来を考えてくれたのがとてもうれしかったです。

出村
僕は野球の試合が開幕したような気持ちです。まずは、無事に始まったことが嬉しいですね。
ただやっぱりホームランを狙いたいですから。ここで出会った人たちと、挑戦をしていくフェーズに入っていくのだろうと思っています。

小貫
まさにここからがスタートですね!
ここを起点に、しっかりと形にしていきたいと思っています。
どのようにして共創は生まれるのか?
小貫さん、ありがとうございました!
2つの事例とも「なんか面白そう」という感覚的な部分からプロジェクトがスタートしているという共通点がありますね。共創の源泉はどこにあるのだと思いますか?


岡本
共創って、「共創しよう」と思って始まるものではないと思うんですよね。
むしろ、この人となんかやりたいから始まって、後付けで仕事になっていく感覚が強い。順番が全く逆なんです。

出村
わかります。
あとは、個人的なモチベーションがあるかどうかも大事ですよね。たとえば、「会社の中に共創推進室ができたから」「会社から『共創をやれ』と言われたから」だけでは、新しいプロジェクトを生み出すのは困難でしょう。


出村
そもそも共創は手段のひとつに過ぎなくて。やりたいことはあるけど、自分の能力だけでは難しい時にこそ、共創をするものだと思うんです。
最近は、ソロプレナー(※)という生き方も出ていますが、共創しなくていいのだったら、僕はしなくてもいいと思っています。その方が早いし、いいものができる可能性もあるので。
※:Solo + Entrepreneur の造語。ひとりでプロダクトを作り、ビジネスを運営していくスタイルのこと
岡本さん、小貫さんの中に熱量があったことはひとつのポイントですね。


岡本
あと、正解がない世界だと思うので“自分なり”の型を積み上げていくことがすごく大事だと思っているんです。
ニューロダイバーシティ(※)の第一人者である村中直人さんから「同じ形のレンガを積み上げて作る画一的な組織より、形も大きさも違う石を組み合わせた石垣のような組織の方が強いんだ」というお話を聞いたことがあって。
私自身、その話にとても救われたんです。
※:Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)を組み合わせて生まれた言葉。個人の違いを相互に尊重しながら、社会生活をしていこうという考え方。

岡本
もともと私は、全部の仕事をひとりで抱え込もうとするタイプだったんです。
もちろん業務全体を把握することは大事なことです。でも、自分が苦手なことを「得意だよ〜」と進めてくれる人が現れた時に、石垣がカチっとハマって世界が広がっていく感覚があったんです。
これを共創と呼ぶのなら、めっちゃ面白いと思うし、どんどん人を巻き込んでいきたいな、と。


出村
石垣っていい例えですね。新しい石垣を作ろうと思ったら、いろんな形のいろんな石を知っておかなければなりません。
そういう意味で、やっぱり人と会っておくっていうのは、ポイントですね。共創上手な人って、いろんな得意技を持った人を知っているし、めっちゃ人と会っていますよね。
鎧を脱いで、野生を取り戻して働こう
人脈を広げるだけではないですし、「これをすれば共創できる」とか「共創のために〇〇しましょう」ではないですね。


岡本
そうですね。「共創人材をどうやって育てていくか?」ってノウハウ化したくなることもわかるんです。
でも、カテゴリーに分けてしまうほど、共創からは遠ざかってしまう……。パラドクスですよね。


出村
「共創歴3年です!」って言われてもなんか違いますよね(笑)。
もうノウハウを得ようとすることに時間を使わなければいいんじゃないですか? 好きなことを見つけて、動いているのが一番いいと思います。

岡本
野生を取り戻す感覚が近いかも……?
「共創」というノウハウで着飾った鎧を身につけるのではなく、本当の自分に戻るというか脱ぎ捨てていく作業だと思いますね。

出村
好きなことを発信して、行動して、人と出会って、そこから自然発生的に事業が生まれていく。
映画やドラマなどの作品は、共創したからこそできたものだと思いますが、「今回の作品はめっちゃ共創しました!」とは言いません。

岡本
むしろ、共創するためのスキルやノウハウをつけようとするほどうまくいかなくなってしまいますから。
だから、共創が当たり前になって、「共創」という言葉がなくなってしまえばいいと思いますよ。

2026年7月取材
取材・執筆=つるたちかこ
写真=森カズシゲ
編集=鬼頭佳代/ノオト


