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「働き方変革」に関する調査とその自由度から見えた実態

あなたは自身のワークとライフをどのようにとらえていますか。

 

政府が働き方改革を推進し、一人ひとりがはたらき方を意識する機会が増えています。では、「はたらく」とはどのようなことなのでしょうか。人によって様々な定義があると思いますが、「ライフ=人生」を構成する要素の1つとして「ワーク=仕事」があるのではないかとわたしたち Work in Life Labo.(ワークインライフラボ)※1では考えています。一人ひとりが自分の思い描く「ライフ=人生」を作るためには、どう生きどうありたいかを、自ら考えていくことが大切です。

 

わたしたちはライフの多様な要素※2に着目し、この考え方を「Work in Life」と定義し、これからの「はたらく」をさまざまなテーマのもとに調査研究しています。今年度は「働き方変革」「ダイバーシティ」の2つをテーマに研究を行いました。今回は2018年4月に発行した約一年間の調査研究をまとめた活動レポートの中から、「働き方変革」の課題の1つである「働き方の自由度」に関しての調査結果をお伝えします。

※1 Work in Life Labo.はオカムラの「はたらく」を共に考え描く活動「WORK MILL」から生まれた共創プロジェクトです。Work in Lifeに関連したテーマを調査・分析・発信していく研究会として活動しています。
※2 ライフを構成する要素としては、ワークのほかにファミリー(家族)、ホビー(趣味)、スタディー(勉強)、コミュニティ(組織)などがある。

 

なぜ、働き方の自由度なのか

 

「働き方改革」というと、長時間労働の是正や女性活躍などに注目が集まっていますが、わたしたちワークインライフラボではより「人」にフォーカスして「いきいきと働くこと」に注目しました。いきいきと働くためには、自分自身で働き方をデザインできることが大切です。そのためには、「働き方の自由度」が必要だと考えました。

 

今回の調査研究では特に、「働く時間」「働く場所」「副業・兼業」の3つの自由度に注目し、ワーカー個人の視点に立ったアンケート調査、企業の視点に立ったインタビュー調査を行いました。

全体傾向と企業規模からみた働き方の自由度

アンケート調査では年代、企業規模などによる自由度の違い、自由度が エンゲイジメント※3やウェルビーイング※4に与える影響を明らかにし、「日本における働き方変革がどうあるべきか」を考える材料とすることをめざしました。

 

まず、アンケート調査の結果についてです。3つの自由度の全体的な傾向としては「時間」>「場所」>「兼業・副業」の順に自由度があることが分かりました。また、企業規模別にみてみると、大企業※5の方が働く「時間」「場所」の自由を与える制度はやや充実しているようです。しかし、「時間」「場所」の自由度も、満足度も大企業の方が低い結果となりました。大企業は「時間」「場所」に関する制度は整っている傾向にあるものの、うまく利用されていない可能性がありそうです。実際に、制度は整っていてもほとんど利用されていないという話を聞いたことがあります。制度自体の充実だけではなく、利用できる雰囲気や文化を作っていくことが必要だと考えられます。

※3 組織に対する愛着・貢献意欲のこと
※4 身体的、精神的、社会的に満たされた状態にあること 参考:1946年世界保健機関憲章前文
※5 本調査での大企業とは、従業員1,000名以上のこと

 

属性からみた働き方の自由度

属性別に自由度の比較をしてみましたが、職種・年代による自由度・満足度の差は見られませんでした。特徴的だったのは、子育て中※6の男性・女性に関しての結果です。

 

まずは、自由度があるかどうかについてです。性別にかかわらず子育て中の人は、そうでない人に比べて働く「時間」「場所」の自由度があると思っていました。とくに、子育て中の女性は制度についてもほかの属性の人に比べて「ある」と思っているようです。満足度に関しては、子育て中の女性が最も高いという結果が得られました。筆者は、まわりの子育て中のワーカーを見て、「時間のやりくりが大変そうだ」という印象を抱いていたため、子育て中の女性の「時間の自由度」に関する満足度が高いことを意外に感じました。時間に関する満足度が高いということは、周りから見るよりも自身で時間や仕事コントロールをし、柔軟に働けている、と感じている方も多くいらっしゃるのかもしれません。

 

次に制度の有無に関しては、子育て中の女性が最もあると感じているのに対し、「時間」に関する制度は子育て中の男性が最も低い結果となりました。男女制限なく制度等は設けられているものの、男性の育児休暇や時短勤務などの制度利用は女性に比べまだまだハードルが高いのかもしれません。実際に筆者の周りでも、育休制度を利用する女性は多い印象です。男性の利用はまれに聞くもののまだまだ一般的とされていないことが多く感じます。余談ですが、筆者の知り合い(男性)には直談判をし、会社を説得して育休を取得した人がいます。育休の取得有無は自身の判断にゆだねられるべきだと思いますが、特別な働きかけなしに取得したい人が取得できる、そんな社会になればいいなと思います。

※6 本調査での子育て中とは、小学生以下の子どもと同居していること

 

自由度がエンゲイジメントなどに与える影響

続いて、エンゲイジメントやウェルビーイング、心理的安全性や、職場の多様性(ダイバーシティ)と各自由度・満足度との関係についても調査を行いました。

 

「各自由度・満足度が高いほど、エンゲイジメントもウェルビーイングも高くなる」という結果が得られました。自由度が高いほど、会社への愛着や貢献に対する気持ちが高まると考えられ、さらには会社からの信頼があると感じたり、成長意欲が高まったりするとも考えられます。とはいえ、「ワーカーに自由度を与えれば生産性は上がるのか」といったご意見を聞くことがあります。しかし、生産性は簡単に測れるものではありません。ワーカーへ「時間」「場所」の自由度を認めることで、各自が自身の働き方をデザインし、自律した働き方ができるようになればおのずと生産性は上がるのではないかと筆者は思います。もちろん、対象者が自律したワーカーであることが大前提となるとは思いますが。

 

続いて、心理的安全性・職場の多様性との関係も見てみました。心理的安全性とは、職場が対人的なリスクを取ることに関して安全であるという信念のことを言います※7
「自由度が高いほど、心理的安全性・職場の多様性が高い」という結果が得られました。多様なワーカーがいる職場ほど、各ワーカーが適応できるように働き方の自由度が認められているのではないかと思います。また、ワーカー同士のスキルや能力の信頼があるからこそ働く自由度を高められるのではないでしょうか。

※7 the belief that the workplace is safe for interpersonal risk taking;Frazier et al.,2017;Edmondson,1999

 

働き方の自由度がワーカーに与える影響とは

アンケート調査から、多様な働き方を進めていくことは個人の選択肢が拡がり、それによる仕事への満足感やエンゲイジメント、ウェルビーイングが向上する可能性が高いことが分かりました。また、心理的安全性も確保されている状態になるとも言えそうです。働き方の自由度が高いと感じることで、働く人にも企業にも望ましい影響を与えることができるのではないかと思います。

 

 

企業からみた働き方の自由度

続いて、企業は各自由度に関してどのようにとらえているのかの実態を把握するために、業種が異なる6社の人事担当者の方々にインタビュー調査を行いました。主に伺った内容は、働き方変革の取り組みや目的、実施している施策(特に「副業・副業」「働く自由度を高める施策」について)、導入の社内背景や狙いについて調査を行いました。ヒアリング内容から、わたしたちWork in Life Labo.のメンバーで「制度の有無」「利用の有無」「検討の有無」について総合的に判断し、◎○△×の4段階で表記しています。

 

全体的にみると、6社中5社で各自由度を高めようとしている結果が得られました。今回の調査では働き方の自由度について検討していないと回答した「金融」の企業に理由を伺ったところ、そもそもワーカーが求めていない、といった理由が挙げられました。業種により、「時間」「場所」の自由度に関するとらえ方が異なるのかもしれません。アンケート調査の結果で表記してはいませんが、業種別に各自由度について見たところ働き方の自由度の低い業種として金融業は3位となっており、ヒアリング調査結果を裏付けるような結果となっていました。とはいえ、今回の調査では1社のみの調査だったため実際には積極的にチャレンジしている企業があるかもしれません。

 

「時間」「場所」の自由度に関しては制度や施策を設けていたり、さらなる施策に向けて前向きに検討している企業が多いものの、「副業・兼業」に関してはIT系の企業以外では検討さえも行われていない状況でした。理由としては、労働時間の管理やワーカーの健康管理などに関する心配の声がありました。また、すでに「副業」を取り入れている企業は開業時から取り入れていた、と言ったかたちであり近年取り入れたものではありませんでした。導入に関してはもともとの企業文化も大きく関係しているのかもしれません。

 

働き方変革の目的についてもインタビューしたところ、取り組み当初は「離職率の低下」や「労働時間の削減」などのマイナスをゼロにするような目的が挙げられました。一定期間を超えた後は、各社ワーカーがより良く働くための次の取り組みに進んでる様子がうかがえました。

 

企業の「働き方変革」の展開

各社がその企業なりの「働き方変革」を展開している様子がうかがえました。そして、企業としてのアイデンティティと社員のエンゲイジメントや組織規律を徐々に変えていこうとしていました。インタビュー企業の中では業種を問わず、制度を整えて働き方の選択肢を増やしていこうという姿勢が見られたように思います。

 

ワーカー個人の視点にたったアンケート調査、企業の視点にたったインタビュー調査から「働き方の自由度の高さ」「心理的安全性の確保」がキーワードであることが分かりました。個人の感覚としても、企業の制度整備に関しても、これからより働き方の自由度は高まっていくのではないかと思います。そのためには、ソフトとハード、双方からの環境づくりが重要だと考えられます。制度が整備されてもそれを柔軟に運用できているか、多様な働き方を許容する風土があるか、それを支える空間づくりができているかなどを見直すことが大切ではないかと思います。

 

しかし、この調査を進めていく上でひとつ気になったのは、誰もが自由度を求めているわけではないという点です。アンケート調査を行う中で一部自由記述欄を設けていたのですが、ある一定数ではあるものの「自由は求めていない」または、「選択肢は求めていない」という回答が見られました。選択肢を与えられると、困ってしまう・選べないというようなこともあるようです。そのような方にとっては、自由度を与えられることは、今よりも働きにくく感じてしまう可能性もあるかもしれません。

 

このようなことから、企業側はただ自由度を認めるのではなく、ワーカーに自由度を認める理由や意図を明確にしていくことが重要だと思います。

 

2018年5月22日更新

 

テキスト: 谷口 美虎人
グラフ等参照資料元:Work in Life Labo.活動レポートVol.1

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