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「選択」するオフィスが個の力を引き出す

 

働く場に求められる役割は時代とともに常に変化しています。特に最近は、リモートワークといったオフィスだけでなく自宅やカフェ、コワーキングスペースなど場所に縛られず生産性を高めながら働くことが注目され、増えています。一方で、現実としてまだまだ多くの人々はセキュリティや作業特性などの理由からオフィスで働いています。しかしオフィス内でも環境と働き方を工夫することで、リモートワークのように生産性、さらにモチベーションを高めることが可能です。そんな『はたらく』を少し進化させるオフィスについて、「多様性」「性格と環境」「柔らかい働き方」「集中する環境」といった内容からご紹介します。

 

コワーキングスペースでリモートワークする人たち(コロラド州デンバー)

 

多様化するワーカー

現在のオフィスには様々な個性や背景をもった人が集まり、それぞれが色々な仕事に携わり働いています。そうしたワーカー個々の特性や状況に応じた働きやすさを見つめ、その能力を最大限に発揮できる環境づくりを行うことは多様性の時代におけるひとつの経営課題ではないでしょうか。年齢・性別・性格・国籍・人種・宗教・習慣・文化・価値観、など様々な個性がある中、性格特性という個性に焦点を当て、オフィスで働く多様な人たちをインクルード(包括)した環境と働き方について考えてみます。

 

性格と環境の相性

人間の性格には様々な分類があり、周囲の環境と関係性のある「外向型・内向型」といった性格特性があります。外向型とは、興味や関心が外界に向けられ、刺激に敏感に反応し、決断が速く、行動的で社交的な性格特性です。一方、内向型は、興味や関心が自己の内面に向けられ、主観的、内気、孤独で思慮深い反面、実行力、社交性に乏しい性格特性です。声が大きく、コミュニケーション能力に優れ、リーダーシップを発揮する外向型人間に対して、内向型人間はクリエィティブな発想や、時間をかけて問題解決に取り組む忍耐力と綿密性、リスク管理能力に長けていると言われております。そして環境に対して好む刺激レベルも異なります。外向型は、刺激を求め、考えるより行動することや他者と一緒にいることでパフォーマンスを発揮しやすいですが、内向型は、刺激の少ない環境を好み、静かな時間や熟考からエネルギーを得ています。このように同じ人間でも性格特性において持っている能力やパフォーマンスを発揮できる環境が異なってきます。

 

「柔らかい働き方」を容認する

多様な人材と働き方に合わせてフレキシブルに選べるオフィス環境をつくることが、働く人の能力を引き出す効果的な手法になるのではないでしょうか。つまりワーカーが働き方や目的を考慮し、オフィス内で自由に場所を選択して働くことができる環境のことです。これらは、ABW(Activity Based Workplace)と言われ、海外から始まり、最近日本においても注目されはじめています。バリエーション豊かな環境から働く人が自分の個性や好みをふまえ、オフィスの中で働く場所を選ぶワークスタイルは、主体性を高め、自律を促進することにもつながります。普段、仕事のスケジュールを自身の都合だけでなく、効率なども考慮しながら各自で設定していると思います。これからはオフィスにおいて働く場所もスケジュール同様に各自で考え設定しながら働くことが、快適性や生産性を高める要素となりうるのではないでしょうか。実際、私たちの調査では、座りたい席、つまり仕事の内容やその日の気分に合った場所で仕事ができた人はそうでない人よりも仕事へのモチベーションが3倍にもなり、そして創造性や効率などにも好影響を与えていることがわかりました。

 

Q.オフィスの中で働く場所を選ぶことは仕事に影響を与えますか?

オフィスのどこで行えば、快適に作業しやすいか、もしくは他者(上司、同僚、部下など)に相談しやすく作業が進めやすいか。コミュニケーションや会議の場合、アイデアが出やすい刺激のあるワイワイガヤガヤした環境なのか、静かで周りの視線が少ない環境でじっくり討議するのか。作業内容や状況に合わせて最適な場所を選んで柔軟に働くことが仕事の効率を高め、そして、音や視線などの刺激を自分が選択した場所で自由に調整できるようになることが理想ではないでしょうか。そんな働き方に対応した空間は、ワーカーたちの交流を加速させるスペースと個人が集中して作業ができるスペースを設え、「集中」と「交流」のバランスに配慮された場をつくることが重要です。また集中も交流の場も画一的な空間を設えるのではなく、異なる多様な環境を用意し、個人に選択肢を与えることが重要になります。そしてもっとも大切なのは、組織と個がお互いを尊重し、柔らかい働き方を容認すること。つまり企業は自律したワーカーに対して自席以外で作業することを認め、積極的に推奨することです。それが組織への帰属意識が高まる要因となりエンゲイジメントの向上も期待されます。

 

集中する環境を再考する

日本の多くのワーカーは、まわりの人との仕切りのないオープンでデスクが島型対向に並んだオフィス環境で働いています。この方式は、スペースや組織変更などによる人員増減にも柔軟に対応でき、ランニングコストが抑えられるというメリットがあります。また、仕切りのないオープンオフィスは、他者とのコミュニケーションを促進することやマネージャーが管理しやすいなどの利点があります。しかし、どこに行ってもこのような環境であることが業務にとって効率的なのか、個人にとって快適なのかと疑問を抱きます。プライバシーの欠如など個人がひとりでじっくり考える作業といった仕事の内容によってはデメリットになることもあるのではないでしょうか。刺激の少ない環境を求める内向型はもちろん外向型な人であっても、まわりに邪魔されず自分の仕事に集中したい時があります。調査から仕事内容によっては自席から場所を変えて環境を整えたいというワーカーが全体で93%、内向型は92%、外向型でも89%もいることが分かります。今の日本のオフィスには、ひとりで作業に集中しやすい環境が不足していることが課題です。

 

Q.ひとりで作業をしているとき、仕事の内容によって作業環境を変えたいことがありますか?

 

では集中しやすい環境とは、どの様な環境でしょうか。集中しやすい環境を構築するには集中を阻害する要因を把握し、軽減することが必要になります。そこでオフィスにおいてワーカーが感じる集中を阻害する要因を、環境・雰囲気・音・視線・位置の5つの項目において調査し、以下のことが分かりました。

 

Q.オフィスにおいてあなたの集中を阻害する要因は?

  • 74%がオープンや開かれた環境が集中しにくいと感じる一方で、19%が完全に囲われている閉じられた環境が集中しにくい
  • 雰囲気では、自宅のようなリラックス感が49%と最も高い
  • 音、視線に関しては、84%のワーカーが騒がしい。特に後ろから覗き込まれることが最大の阻害要素である
  • 位置は、回答が最も分散しているが自席(チームと一緒にいる)が42%と高い

 

このように集中を阻害する要因は個人によって様々であり、作業や目的によっても最適な環境は異なります。多様な人たち、多様な作業に対して多様な環境を用意することが理想的ですが、全て人に対して専用の環境を用意することはスペース、経済面においても現実的ではありません。そこで働く人たちに作業する場所をオフィス内で「選択」させるという働き方がポイントになります。

働く人の側から考える

今までの働く環境は、構築・管理していく際の効率性とコスト削減を重視してつくられることが多く、その結果、きわめて画一的でバリエーションに欠けたものになる傾向でした。これからは多様化する個性を中心とした『働く人、一人ひとりの能力を最大限に引き出す環境づくり』が組織には求められます。個を高めることが、知識創造を加速させるコミュニケーションやコラボレーションのポテンシャルや質を高め、真の創造性を発揮できる強い組織へとつながります。効率、コスト削減など企業・組織の側から考えるだけでなく、自らのパフォーマンスを最大限に発揮するため働く人の側から考えることです。まずは選択できる環境と仕組みを個人、組織ともにチャレンジしてはいかがでしょうか。

 

あなたのオフィスは働く場所を選べますか?

 

テキスト:山田 雄介
写真:山田 雄介
イラスト:野中 聡紀

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