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編集部がミル ― コワーキングスペース探訪 サンフランシスコ編

WORK MILLメディア編集部が日々の取材で掲載しきれなかった内容や、気になっている場所や物などをコラムとしてお伝えしていきます!

多様な人々と同じ空間を共有しながら働くこと、オフィスでは出会えない人々とつながりながら働くこと。その中で各人の知識が交わり、新たな価値創造へ繋がる——「コワーキング」、今までの境界を超える新しい働き方が台頭しています。
9月に発売した『WORK MILL with Forbes JAPAN』創刊号の特集「コワーキングと働き方の未来」では様々な世界のコワーキングスペースを取り上げています。ウェブマガジンでもこれまでNY編ヨーロッパ編と紹介しました。第3回目は、コワーキングの本場サンフランシスコ編です。創刊号には掲載していないスペースも含め詳しくご紹介します。

 

コワーキングスペースはサンフランシスコ(以下SF)のシリコンバレーが発祥の地と言われており、SFには本当に多くのコワーキングスペースが存在します。WeworkもSFのベイエリアに15拠点(2017年11月現在)展開しています。そして語らずともSFは数多くのスタートアップやデザイン会社があり、世界的なイノベーションを輩出している都市です。SFにとってコワーキングスペースは、ただの作業スペースではなく、そこで働く人々のコミュニティやビジネスを育む、大きなプラットフォームの役割を担っています。今回はそんなSFでも特徴のある4つのコワーキングスペースを厳選して紹介します。

 

Galvanize SOMA(ガルバナイズ ソーマ)

「刺激する」「元気にする」という意味で、ITを専門とした企業や起業家を支援するコワーキングスペースです。コロラド州デンバーから発祥して現在はSFはじめNYやテキサスのオースティンなど計8拠点を構えています。このSFSOMA店の最大の特徴は、一般的にコワーキングスペースでよく見られるスペースやコミュニティの提供だけでなく、データサイエンスやWEB開発などIT教育プログラムコースの提供、それらを教える専門家を用意していることです。つまりメンバーは自分に足らない、これから必要とされる専門的な知識や技術のレベルアップを受講することで図ることができます。例えると専門学校や職業訓練を兼ね備えたコワーキングスペースとも言えます。また、IBMGoogleといった大手IT企業とも提携しており、彼らによる支援やメンバーとの雇用マッチングも行っています。この教育や雇用支援など幅広いサービスは起業家に対する「セーフティネット」の役割を果たしており、シリコンバレー特有のエコシステムの環境に加え、セーフティネットの存在はとても魅力的に感じました。

 

―エントランスにSF4大コーヒーの1つ「サイトグラスコーヒー」が入っており、メンバー以外の人もカフェ空間として使用できます。ちなみにこのサイトグラスコーヒーは、Twitter とSquare の創業者ジャック・ドーシーが出資し、プロジェクト段階のサービスを昔の店舗で試していたそうです。

―1階のメンバー専用のホットデスクスペース。アクセスビリティ―も高く、すぐ隣にサイトグラスコーヒーもあるので人気の高いエリアです。

―個室というよりオープンスペースにワークステーションが並んでおり、企業ごとに席が割り当てられ働いています。

―提携しているGoogleのGoogle for Entrepreneursも在籍しており、スペースの利用者を支援しています。

―ミーティングルームや研修ルームというべきでしょうか。IT教育プログラムもこちらで講義しているようです。

―屋上はテラスとして開放し、自由に使用しています。ちょうどこの日はSF市職員が見学に訪れており、その団体と遭遇。

―地下にあるイベント会場。1対1の対面でそれぞれ何しているのかな?と思ったら、この日はどうやらメンバーと企業のマッチング(面接)だったようです。ちなみに隣の会場ではIBMによるワークショップが開催されていました。

 

Bespoke(ビースポーク)

SFのショッピングモール「ウェストフィールド・サンフランシスコ・センター」内にあるコワーキングスペースです。Bespokeとは洋服の注文仕立てやオーダーメードという意味で名前が示す通り、リテール(小売り)を専門とした企業が集まるスペースです。場所がショッピングセンター内ということも関連性が高く、提供するスペース機能も「コワーキング」「デモ」「イベント」と大きく3つに分かれており、ビジネスモデルに連動しているのが特徴的です。「コワーキング」エリアでビジネスモデルやプロダクトを検討し、「デモ」エリアで検証し、「イベント」エリアで発表する。また、ミーティングルームを仮店舗として一定期間使用が可能など、デモや仮店舗で自分たちのビジネスを試す、まさにプロトタイピングを実践しているところにイノベーションを生み出しているSFらしさを感じました。そして聞くところによると運営がこのショッピングセンターの投資部門と知り、これはショッピングセンターにおける新たなビジネススタイルの検証とも思いました。

 

―ショッピングセンター最上階である4階にいちテナントのように並んでおり、エントランスがあります。同じくSFを拠点とするクラウドファウンディングIndiegogoとも提携しており、メンバーへの資金調達も支援しています。

―エントランス前のモニターからBespokeのレイアウトが分かります。左にコワーキングエリア、通路や吹き抜けを挟んでデモエリアとイベントエリアがあり、ショッピングセンター内においてもかなりの面積を使用しています。

―コワーキングエリアの風景、通常のワーキングスペースですが、オープンデスク、ソファースペース、個室スペースがあります。

―コワーキングエリア中心の象徴的なオープンスペース。プレゼンやハンズアップなどイベント時にも使用しますが、普段はメンバーたちがリラックスしながらそれぞれが働いています。

―ショッピングセンター通路側の空間はミーティングルームとして使用しているが、要望があれば一定期間、仮店舗を開くことができショッピングセンター来訪者に対して試験的に販売できることがユニークです。

―この奥がイベントスペース。200人以上入ることができ、ランウェイも備え、ファッションショーの開催も可能らしいです。訪問当日は、グーグルがイベントを開催中でした。

Campsyte(キャンプサイト)

「キャンプの思想によって都市の再構築を目指す」というビジョンを掲げ、ハーバード大学、スタンフォード大学出身のアジア系アメリカ人2名で創業。現在、SF市内の4か所に点在しています。簡易的なキャンプ場やキャンピングカー、都市農園の小屋、郊外にあるプール付一軒家、コンテナ倉庫など、通常のオフィスビルのスペースとはかけ離れ、今までのワークスペースにない非日常的なロケーションを用意しているのが特徴です。登録さえすれば利用できる簡易さも良いところです。私が訪れたのは、キャンピングカーが置いてあるキャンプ場をイメージしたロケーション。残念ながら土曜日ということもあり、利用者が私と同僚だけで少し寂しい写真になっておりますが、快晴でとても快適に働くことができました。

 

―街中の空きスペースを活用したロケーション。決して広いスペースではないですが、隣地ビル壁面のグラフィックを施すなど雰囲気をつくる工夫が見られます。常時、人員を置いておらず、エントランス開錠はスマートロックで遠隔で行うあたりはSFらしさを感じました。

―敷地内には、屋外のキャンプ家具スペース、そして「Sandy」「Besty」「George」と名付けられたキャンピングカー3台。使用するにはインターネットからそれぞれ予約します。

―キャンプファイヤー用のセットも。まさに「OFFICE CAMPERS」を実践!(弊社が先月発表したオフィス内外の仕事環境を整える新しい働き方の提案)

―こういった場所があれば、オフサイトミーティングに最適です。SFといえども冬場は10℃前後と寒いので暖房設備も整っています。

―キッチンもありましたが、残念ながら施錠されていました。でも缶ドリンクは置きっぱなし。飲んでいいのかな・・・と思いましたが止めておきました。

―私たちが今回使用したキャンピングカー「Besty」。定員5名で1時間当たり$35です。こちらは暗証番号がメールで送られ、時間になってインプットすると開く仕組みです。

―室内はキャンピングカーそのままです。雰囲気は抜群でしたが、なかなか独特な香りのする空間でした・・・。

D.Haus(ディーハウス)

SFを拠点とするエクスペリエンスデザイン・エージェンシー、btrax, Inc.が手掛けるコミュニティワークスペースです。デザイン的視点から日本企業とSFのスタートアップやイノベーターがコラボレーションを行う事を目的とした場で、彼らのオフィス内にあります。単なる作業スペースだけではなく、シリコンバレーの最新の情報やネットワーク、イベントを通じ、イノベーション創出の為のプラットフォームの提供を目指しています。利用プランもプライベートオフィスから住所登録のみのバーチャルオフィス、そして出張者向けのウィークリープランまで用意しており、シリコンバレーへのマーケティングやプロモーションなどアメリカへのビジネス進出や、現地企業との技術・サービス連携などを目的とした日本企業にとっては非常に使いやすい施設です。現在、7社の日本企業が契約し、こちらを使用しています。まさに日本とSFのイノベーションやビジネスの懸け橋となるコワーキングスペースではないでしょうか。

 

―btraxオフィスのエントランス、彼らのオフィス内にD.Hausは併設されています。天井にあるミラーボールに彼らの遊び心を感じます。

―btraxオフィスのワーキングスペース。UXデザイナーやイノベーションディレクターなど様々なスペシャリストがいるbtrax社員たちと空間を共有し、交わりながら働けることもD.Hausの特徴です。

―D.Haus利用者のデスクは、シリコンバレーやアメリカではもはや定番となりつつある上下昇降できるスタンディングデスクです。(もちろんオカムラ製品です!)

―窓からSFの街並みが一望できるミーティングルーム。壁面ホワイトボードでよくブレストが行われているそうです。

―こちらはbtraxのサービスであるイノベーションプログラムなどを実施するワーキングルーム。クライアントはこちらでワークショップに励み、サービスのアイデアを固めます。

―明るく開放感のあるカフェスペース。コーヒーや果物を片手に他のメンバーやbtrax社員たちとの交流が行われます。

オフィス中央のスペースを利用し、デザインやイノベーションをテーマに定期的にイベントを開催しています。現地の最先端の情報収集やネットワーキングができるところは魅力的だなと感じました。

 

NY、ヨーロッパと続き、SFのコワーキングスペースを紹介しました。SFでは多くのスタートアップ、大企業、デザイン会社が日常的にピッチイベント、ハッカソン、ワークショップ、オープンオフィスなどのイベントを行い、新たなイノベーションやビジネスを探求しています。そういった彼らのオープンコラボレーションから生まれるエネルギー、技術、アイデアに引き寄せられ世界中から人が集まる魅力的な街だなと毎回訪れるたびに感じます。スタートアップの成長やビジネスの成功を最大限支援するための様々な工夫とアイデアがSFのコワーキングスペースには詰め込まれていると強く思いました。

 

※販売中の「WORK MILL with Forbes JAPAN」創刊号では様々な視点でコワーキングの可能性を議論していますので、是非ご購読ください。

 

 

2017年12月5日更新

 

テキスト:山田 雄介
写真:山田 雄介btrax,Inc.提供

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