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エモーションの交換がイノベーションを生み出す ― WeWork Japan CEOクリス・ヒル×経営学者・入山章栄

これからのよりよい「はたらき方」を追求するWORK MILLプロジェクトチームは、2017年9月27日、満を持して『WORK MILL with Forbes JAPAN』を創刊。リリースを記念して、同月25日に創刊パーティ「Future Work Style Session 2017」を開催し、3つのトークセッションを企画しました。

 

本記事では、この日行われたWeWork Japan CEOクリス・ヒル×早稲田大学ビジネススクール准教授・入山章栄の対談「イノベーションを起こす働き方」の内容を中心に、パーティの様子をお伝えします。

 

未来の働き方を考える3つのトークセッション

9月25日、青山の骨董通りに面する多目的空間「IDOL」にて開催された『WORK MILL with Forbes JAPAN』創刊パーティ「Future Work Style Session 2017」。当日、148坪を有するラグジュアリーな会場には、働き方に関心を持つ300名超の参加者が集まりました。

 

トークセッションに先立って、はじめにWORK MILL編集長・プロジェクトリーダーの遅野井 宏より、プロジェクトの概要を紹介。その後、歓談の時間を挟みつつ、メインコンテンツとなる3つのトークセッションが続きます。

 

ー遅野井宏(おそのい・ひろし)WORK MILL編集長

 

1つ目のセッションは「人生100年時代の働き方」をテーマに、一般社団法人at Will Work代表理事・藤本あゆみさんとWORK MILL編集長・遅野井が登壇しました。

ー藤本あゆみ(ふじもと・あゆみ)一般社団法人at Will Work代表理事

 

2つ目のセッションは、リクルートホールディングス「iction!」事務局長・二葉美智子さんと、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんが、「未来を先取りする働き方」を表題に語り合いました。聞き手を務めたのは、Forbes JAPAN副編集長の九法崇雄さん。

ー左:二葉美智子(ふたば・みちこ)リクルートホールディングス iction!事務局長
ー中:平田麻莉(ひらた・まり)一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事
ー右:九法崇雄(くのり・たかお)Forbes JAPAN副編集長

 

それぞれのセッションでは、「なぜ働き方の見直しがここまで注目されているのか」という背景から、「これから求められる雇用や会社組織の在り方」についてまで、幅広く示唆に富んだディスカッションが展開されました。

 

世界中を席巻するコミュニティメイカー「WeWork」が日本進出

最後の3つ目のセッションは「イノベーションを起こす働き方」をテーマに置いた、WeWork Japan CEOクリス・ヒルさんと、早稲田大学ビジネススクール准教授・入山章栄さんによる対談です。

 

WeWorkは「to create a world where people work to make a life, not just a living」というミッションを掲げ、世界中にコワーキングスペースや賃貸住居を展開しているスタートアップ企業です。2010年にアメリカ・ニューヨークで創業し、現時点で、準備中も含めてアメリカ、中国、韓国、インド、イギリスなど世界18か国・約52都市に、211か所を超える拠点を構えています。
近年ではさらなる躍進を遂げ、2016年7月時点でWeWorkの企業価値は200億ドルを突破。いま最も勢いのあるユニコーン企業の一つとして、世界中から注目を集めています。

そんなWeWorkが、2018年より日本でのサービス展開を開始します。今回はそれに先立ち、世界のビジネストレンドにも精通している気鋭の経営学者・入山さんが、WeWork Japanの代表を務めるクリスさんに、彼らの躍進の秘訣や日本展開のビジョンについての問いを投げかける形で、セッションは進められました。

 

エモーションの交換には、リアルな場が必要

学生の頃から「自分で起業をして、自分のために働くこと」が夢だったと語るクリスさん。若くして連続起業家の才覚を表し、オーガニックフードを取り扱う店舗経営や卸業を手がけ、次々と成功を収めます。その後、個人的にも親交があったWeWorkのCEOに誘われて、そのビジョンに共感し、彼はWeWorkにジョインしました。

 

入山さんが「デジタル全盛の時代に、なぜWeWorkが手がけるような、リアルな場を介してのコミュニティづくりに重要性を感じたのか?」と尋ねると、クリスさんは次のように答えました。

 

確かにこのご時世、スマホ一台あればなんでもできてしまいます。ネットを通じてコミュニケーションも十分取れるでしょう。しかし、有機的なエネルギーや経験値、パッション、エモーションの交換は、Face to Faceでないと中々うまくできないものです。そして、これらはイノベーションに不可欠なものでもあります。(クリス・ヒル)

ーChris Hill(クリス・ヒル)WeWork Japan CEO

 

テクノロジーを駆使し、リアルに良質なコミュニケーションの場を生み出していくことがイノベーションに繋がると指摘するクリスさんは、さらにWeWorkのビジネスの本質について言及していきます。

 

私たちの仕事は、コワーキングスペースを作ることではありません。それはあくまで、ビジネスの一側面です。私たちが最終的に提供したいのは「テクノロジーを最大限に生かした、創造的かつグローバルなコミュニティ・ネットワーク」なのです。それはさまざまなアイデアが具現化する場であり、仲間の共助によって素晴らしいビジネスが次々と花開く場所でもあります。(クリス・ヒル)

 

WeWorkは、デジタルかリアルのどちらかに肩入れしているわけではなく、それぞれの特性をそれぞれ生かしてコミュニティをデザインしている……そう強調したクリスさん。これに対し、入山さんは「リアルな場所、テクノロジー、人の3つを有機的に繋げるコミュニティを展開できているのはWeWorkだけだ」と、その内実を高く評価しました。

 

エモーション=感情と仕事のパフォーマンスの相関性は、最近の研究によって科学的にも立証され始めています。この感情というのは、言葉上のコミュニケーションだけでは、なかなか共有し難いもの。一方で、同じ空間にいるとなんとなく、機嫌の良し悪しが分かることもありますよね。会社勤めの皆さんほど、クリスさんの言う「リアルな場の大事さ」が、肌感で理解できるのではないでしょうか。(入山章栄)

 

WeWorkは大企業にこそ恩恵をもたらす

一般的に、コワーキングスペースは「オフィスを持たないフリーランサーたちのための場」というイメージを持たれがちです。しかし、WeWorkはMicrosoftやDELLなどの大企業と提携を結んでおり、利用者の1割以上が会社員を占めています。クリスさんによれば、WeWorkの恩恵を最も享受しているのは、意外にもこうした大企業なのだそうです。

 

「大企業が最もWeWorkの恩恵を受けている」というクリスさんの発言は、非常に興味深いポイントですね。イノベーションの根源は既存の知と知の組み合わせであり、多くの大企業が苦手としているところです。WeWorkは場の提供を通して、大企業と小さなスタートアップがコラボレーションする機会を、積極的に生み出しています。大企業にとってWeWorkが作るコミュニティは「オープンイノベーション」の格好の実践場となるはずです。(入山章栄)

ー入山章栄(いりやま・あきえ)早稲田大学ビジネススクール准教授

 

ここから話はWeWorkの日本進出の予定に及んでいきます。日本ではまず、六本木・銀座・新橋の3か所でコワーキングスペースの運営をスタートさせると語ったクリスさん。「日本の経済や社会にどんなインパクトを与えたいか?」という入山さんの問いかけに対しては、フラットな姿勢を見せました。

 

私たちはこれまでも、何か具体的に変革を起こそうとしてきたわけではありません。テクノロジーを駆使して、エネルギーが交換・増幅される場所と機会を作ってきたまでです。その結果、いくつかの地域では大きなインパクトを伴った変革が起こりました。これらは私たちが意図したものではなく、その場に集まった人々のクリエイティビティによるものです。(クリス・ヒル)

 

もし仮に、今の日本の働き方に変革が必要ならば、それをもたらすのは私たちではなく、あなたたちの意志である――上記のクリスさんの発言からは、そんなメッセージ性がひしと感じられます。WeWorkが日本に作る新たなスペースは、変革を求める人々にとって、心強い味方になるのでしょう。

 

セッションの最後は、クリスさんの会場へのメッセージで締められました。

私たちのゴールは、日本の皆さんのワークスタイルを変えることではありません。日本社会の中でたくさんの意見交換をしながら、一緒に新しい創造的なコミュニティを作っていくことです。 皆さん、ぜひご協力お願いします。(クリス・ヒル)

 

すべてのトークセッションを終え、明日への変革の萌芽の香りを残しながら、盛況のうちに幕を下ろした「Future Work Style Session 2017」。この日、この会場内でも、たくさんのエネルギーやエモーションの交換が行われました。WORK MILLプロジェクトはメディアづくりと並行して、今後ともこうした場づくりにも注力していきます。

 

そして、現在発売中の『WORK MILL with Forbes JAPAN』創刊号では「コワーキングと働き方の未来」を特集に掲げ、国内外の先進的なワークプレイスを多数紹介。巻頭にはWeWork CCOミゲル・マケルビーさんと、トークセッションにも登場したWeWork Japan CEOクリス・ヒルさんのインタビューを掲載しています。本レポートでWeWorkやコワーキングスペースの進化に興味を持たれた方は、ぜひお手に取ってみてください。

2017年10月17日更新
取材月:2017年9月

 

テキスト: 西山 武志
写真:葛西龍

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