REPORT

働き方改革に効果的なセルフマネジメント~開催レポート~

働き方の多様性と自由度が増す中で、個人はより自律的に働くことが求められるようになります。働く時間や場所を自由に選択することだけでなく、自分自身のコンディションも含めたセルフマネジメントを通じて、いきいきと生産性高くパフォーマンスを上げていくのが理想的。しかし、セルフマネジメントは勘と経験によるところが大きく、なかなか自分のものにするのは難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。
今回は、米国LAのドラッカースクールでセルフマネジメント理論を学んだTransform LLC共同代表の稲墻さんと、青山フラワーマーケットから派生した空間デザインブランドparkERsの設立メンバーである梅澤さんをお招きし、セルフマネジメントの最先端の理論と実践を学びます。また世界各地で開催されるお茶と座禅を通じたアイデアソンである、伊藤園の茶ッカソンの手法も取り入れながら、「心を整え、集中するヒントを学ぶ」体験型のセッションを開催します。セルフマネジメントをうまく獲得できている人も、そうでない人も。自分の働き方について、振り返る機会となりました。

畳を敷き詰めた異空間で

beeに初めて畳を敷きました!

伊藤園の茶殻を使った畳・「さらり畳」を株式会社北一商店のご協力でbeeに敷き詰めました。
靴を脱ぎ、畳に座り、いつもと目線も姿勢も違う状態でのセッションは、とても新鮮な空気が漂っていました。

ITOEN OCHA Workshop

伊藤園の角野さん

まずはじめは、伊藤園の角野さんによる「ITOEN OCHA Workshop~あなたの心に茶室を作ってみませんか?~」のセッションです。
お茶の良さとは、

1.おいしさ
2.健康性
3.コミュニケーションのきっかけ

だと思いますが、角野さんはさらに

4.自分と向き合う入口

という良さがある、と提言されています。

日本のお茶文化を初めて英訳した著書・「茶の本」で有名な岡倉天心の、

「虚は一切を含有する故に万能である。」

という言葉に表される、茶室の四角い空間や、花瓶の「からっぽ」なさま。茶室に空気が満たされていること、花瓶に水が花瓶の形を成しながら注がれて満たされていくことなどを想像して、「虚」を味わい楽しむ。
その感覚を持ちつつ、伊藤園の茶葉を使い意識を集中させながらゆっくりとお茶を注いでいきます。

心に余裕を持ち、湯冷ましをして丁寧にお茶を淹れることで、渋みが消えて甘みが増し、とてもおいしいお茶になります。
そのお茶を静かにいただくことで、心が落ち着き、「自分のためにお茶を淹れる」贅沢な時間が生まれます。心と体が安らぎ、瞑想状態になることで、「内省」へと意識が進んでいきます。
忙しい毎日に急かされ、自分の心と体を内省する時間を持てていないだけで、茶の文化を持つ日本人はセルフマネジメントが得意なはずなのです。
お茶をいただいた後は、電気を消し会場を暗くして「座禅」を行い、より心と体に向き合う時間となりました。

自然と人の最新科学~働く現代人が山や海を欲する理由〜

parkERsの梅澤さん

座禅で会場の空気がキリッと澄み渡ったところで、続いてのゲスト、梅澤さんによるセッションです。
梅澤さんは青山フラワーマーケットから派生した「花と緑で心豊かな時間を提供する」をミッションに様々な事業を展開するpark corporationの空間デザイン事業であるparkERsのブランドマネージャーをされています。
parkERsでは、「日常に公園のここちよさを」をコンセプトに植物を使った空間設計をしています。

今回は「バイオフィリア」(進化の過程で人は先天的に生物や生気(生命)のあるものを好む心理的傾向がある)を切り口に、自然と人の最新科学についてお話いただきました。
まず「組織の科学」として、感じる脳である右脳と、考える脳である左脳、どちらの脳の強みがあるかは人によって違うので、「ストレングスファインダー~さあ、才能に目覚めよう~」という強みを分析する本を使って、自分の強みを自覚しました。また、IBM社との職業的パーソナリティ調査で性格分析から長所短所を見つめなおし、適材適所の人材配置をするなど、科学的な目線で組織づくりをしているチャレンジングなお話をしていただきました。

続いて、「人と緑の科学」のお話です。
生物学では環境選択は生存本能の第一段階であり、それは現代人にも同じことが言えます。
生物学で有名なチャールズ・ダーウィンも「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。」と提言したように、環境適応能力は生物にとって最も重要なものと言えます。人類の700万年の歴史の中で、自然から離れ、都会で多くの時間を費やすようになったのはほんのここ200年程度のことです。遺伝子はすぐに変わるものではないので、人がバイオフィリアを感じるのは当然であり、むしろ自然に触れる機会の極端に少ないコンクリートジャングルで生きる現代は、人の遺伝子からするととても不自然で異常な状態と言えます。

そのような中、先進国のライフスタイル考察によると、ここ10年でロハス、ナチュラル、ヒュッゲ、アーバンジャングル…とトレンドは変遷しており、2018年はピカピカしていないゴージャス感、2020年には「自然派から地球派」というワードがトレンドとなるようです。自然回帰の流れがどんどんと進んでおり、アマゾン社の「the spheres」は緑で覆われまるで熱帯雨林の中で仕事をするような空間をつくり、ニューヨークの廃線跡地につくられた「The Highline」は緑いっぱいの空間緑道として完成され、ニューヨークの治安向上、不動産価値向上に非常に大きく寄与したと言われています。

緑が人に与える影響は科学的にも証明されており、千葉大学健康科学フィールドによると、観葉植物や花を見た時に、副交感神経の活動は通常時と比べて14%も上昇すると言われています。
緑が近くにある環境では、精神病や心臓病、ぜんそく、偏頭痛といったさまざまな病気の罹患率が低くなるというデータが出ていたり、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校付属ベニオフ小児科では「近くの公園を訪ねる」処方箋を出すこともあります。フィンランド政府ではうつ病を防ぐため、一か月に最低5時間、自然散策を推奨しているのです。
また、カンザス大学の研究によると、人は手つかずの自然の中ではクリエイティビティ(創造性)が50%も増加すると言われています。

このように、緑の重要性はさまざまな研究から証明されていますが、平成27年に発表された一人当たり公園面積を見ると、東京都6.3㎡ 大阪府5.6㎡ 、政令指定都市である大阪市は3.6㎡と世界的に見てとても低い値となっています。
(※パリ市内11.8㎡ ロサンジェルス市内17.8㎡ ロンドン市内27.0㎡ ベルリン市内27.5㎡ ニューヨーク市内は30㎡もの公園面積を誇っている)

そこでparkERsでは、「緑視率」(人の視界に占める緑の割合で、緑の多さを表す指標)に注目し、緑を使って人にとって最適な働く環境をつくりだすサービスをパソナ・パナソニックビジネスサービス社、日本テレネット社 国立豊橋技術科学大学、国立長崎大学との共同事業としてスタートしました。それがCOMORE BIZ(コモレビズ)です。

COMORE BIZの実証実験によると、植物によっては人のストレス値を上げるものもあることや、植物が視界に入る時、最初は「異物」を感知したとして、ストレス値が上がり、その後は持続的に下がっていくこともわかっています。
Think Labなど、植物を科学的に配置する世界的にも稀なチャレンジをしています。

テクノロジー(文明)の進化により、頭と体が不均衡に進んでいる中、「地球はプリミティブ(primitive)に進化する」という仮説をparkERsは立てています。文明はこれからも進化し続けますが、このままだと環境は退化していくことでしょう。
人類の営みの枠組みは、地球・環境→文明→国家・経済→企業・個人の順番でつくられていることを思い出さなければいけません。

また、人類の脳に注目すると、絶滅したホモ・ネアンデルタールは「視覚」に関する後頭葉が発達しており、現代のヒトの祖先であるホモ・サピエンスは「思想」や「創造性」に関する前頭葉が発達したと言われ、好奇心が生きていく上でいかに大切なのかがよくわかります。

植物の持つ、
・Relax
・Creative
・好感度
・人間回復力

の力を味方にして、好奇心豊かに自分らしさを大切に生きていくことが現代人には必要なのではないでしょうか。

セルフマネジメントの重要性

Transform LLCの稲墻さん

続いて、Transformの稲墻さんによるセッションです。
最初に稲墻さんより会場へ質問が投げかけられました。

「『セルフマネジメント』ってなぜ大事だと思いますか?
『セルフマネジメント』を日々意識していますか?」

人はまず、自分ではなく自分の周りにいる人や環境のことをマネジメントしたい!と思うものですが、果たして自分自身のことをマネジメントできているでしょうか…?
そもそも、自分のこともマネジメントできていない状態で、他者をマネジメントしたり変えたりすることは不可能なのです。そのことをすっかり忘れて、目に写る周りの世界をどうにかすることばかりに意識がいっているのは、非常に深刻な問題です。

セルフマネジメントにはいろいろな要素が関係しています。例えば、身体も影響しますし、感情や身体感覚、意識や集中、意図や目的などにも関係します。ほとんどの人は、それぞれの要素を軽視していたり、意識していたとしてもどれか一つ(または二つ)であって、総合的に意識が向いていません。これらの要素が自分には無関係とすら思っています。しかし、これらの要素はすべてつながっていて、互いに影響しあい、何かが不調になると、良い結果を出すことができなくなります。

自分の身体、感情、メンタルがどのような状態であるかを内省することの大切さを痛感しました。

ここで、簡単なエクササイズを通じて、身体の変化がどのように感情や意識・集中に影響を及ぼすかの実験をしました。
ストレッチや軽い運動をする前後で脈を計り、どのような変化があったのかを調べます。

運動後はみなさん脈拍が上がり、気持ちも前向きな状態に変化していました。
普段会社でこういったエクササイズをすることは恥ずかしい…と思ってしまうかもしれませんが、簡単な運動を仕事の合間に取り入れるだけでこれだけ良い効果が期待でき、生産性の向上にも繋がるのでぜひ実践することをおすすめします。

また、セルフマネジメントのクラスの一環で、ドラッカー・スクールでは「感情や身体感覚のログ」を取っていました。
自分の感情がどういう時にどうのように変化するかのログを取り続けることで、だんだん傾向が見えてきます。
そして、傾向を把握し、より感情の自覚をすることができれば、自分自身をマネジメントする「きっかけ」ができます。

続いて、短い動画を見ながら、自分の意識や集中の特徴を知るエクササイズを行いました。「注意」の枠から外れたところにある事象に、まったく自分が気づかない…という現実がそこにはありました。
逆を言うと、「人はいかに自分が見えている狭い世界を正しいと信じ込み、日々生きているか」ということに気づかされ、参加者のみなさんもとても驚いていました。
仕事や日常の中で、自分が慣れ親しんだもの、普段意識していないことに「意識を向ける」ことは非常に難しいことがわかるとともに、「自分を信じすぎないように」という稲墻さんの言葉がとても胸に響きました。

最後に、セルフマネジメントは一朝一夕にできることではなく、日々の、そして瞬間瞬間の「訓練」が必要だということが紹介されました。考えてみれば当たり前のことで、何かを知ってすぐに「できる」ようになるわけではなく、ピアノや自転車、スポーツの練習のように、多くの時間を積み重ねてようやく「できる」ようになります。「知っている・わかっている」と「できる」は全然違うことなんだなという気づきとともに、日々意識しようと強く思いました。

パネルディスカッション!

続いて、WORK MILL編集長の遅野井も交えたパネルディスカッションを行いました。

遅野井:お茶、緑、自分に向き合うこと、エクササイズ…いろんな側面でセルフマネジメントを見つめなおす場となりました。お互いになにか着想はありましたか?

角野:以前、稲墻さんのセルフマネジメントのイベントに参加したことがありますが、非常に学びがありとてもおもしろかったです。お話を聞くたびに、お茶にも同じような側面があり、可能性があると感じています。

梅澤:マネージャーという立場でどうやってチームメイトの能力を最大化させるか、ということにはメタ認知や客観的に定量評価することも大事ですが、なにより自分が変わらないといけないと痛感しました。今日のような、自分のためにお茶を淹れる時間を作ったりしながら、セルフマネジメントのフレームワークを各人が能動的にやっていく必要があると感じました。

稲墻:セルフマネジメントはどこでも、誰にでもできるものです。お茶を飲みながらもできるし、公園の緑や花を見るだけでもできる。ご飯を食べる、目をつぶる…なんでもいいから、普段の生活の中で自分自身に目を向けること、意識を向けることが大切です。ほんの少しのことですが、それをするか・しないかで全く変わってきます。

遅野井:元々日本人はセルフマネジメントが得意だったのでしょうか?

梅澤:古い日本建築を思い浮かべると、月窓や、掛け軸、花の一輪挿しなどがあります。季節の移ろいを感じ取り、愛でながら季節に寄り添うのが日本人の感性です。古来の日本には、生活の中にセルフマネジメントがあったのだと思います。

角野:お茶は東洋の伝統と言われていますが、お茶の作法も自分の感情と向き合うものだと思います。今日立てたお茶はおいしくないなぁ、正座している足が痛いなぁ…と、自分の感情を追うことが大切で、不快感の方が気づきがあります。自分の意図で生きていたら好きな方にばかり向かってしまうので、あえて意図から外して、自分の好みと違うところで不快感を味わってみる。そうすると、より自己が客観的になり、輪郭がはっきり見えると思うんです。

遅野井:なるほど。セルフマネジメントのフレームも、東洋的ですよね。

稲墻:「自分が何を見ているか」「何を通して見ているか」は、セルフマネジメントの大事な要素であり、東洋的な観点も入っていると思います。そういう意味で言うと間違いなく日本の中にも強みはあるんですが、今の日本の企業や社会人は、「昔から受け継がれている働き方ややり方と同じようにすることが正しい」という思い込みですべてをこなしてしまっています。自分が自分のやり方でやることが許されていないというか。でも、すでに機能していない昔ながらのやり方を捨てて、自分のやり方(新たなやり方)でできない限り、状況はよくなっていかないと思います。

遅野井:「若いころに自分はこういう苦労をしてきたんだ」というように、自分の成功や苦労体験を次の世代に対して押し付けることで、その人なりの我流のセルフマネジメントも押し付けることになってしまっていますよね。それでは言われた方の意識が解放されないし、自分と向き合うことなく組織のお作法に乗るだけになってしまう。また、日本人はまじめだから最後までその方法でやり遂げてしまうんですね。働き方改革の中で効率化の話がよく話題に挙がりますが、効率化を追求するあまりクリーンルームみたいな感じになっていることが少なくありません。意外と昔は納涼祭のような「仕事以外のところで効率を求めずコミュニティを大切にする文化」があって、バランスが取れていたのですが、そういった文化をそぎ落として排除してしまい、仕事だけが残ってしまった。人間にとって大事な部分をそぎ落としてきてしまったと感じています。

梅澤:parkERsでは、プロデューサーがデザイナーと植物の専門家を集めて仕事をするなど、いろんなジャンルの人を組合せています。年棒制ですし、声をかけられなければ社内ニートになってしまうんですね。得意とする特技がないと指名されない仕組みなので。打席に立たないと給料がもらえない、プロスポーツ選手と似ています。しかれたレールにはまった瞬間、他と一緒になり差別化できなくなる。そうするとうちの強みも消えてしまうからです。

遅野井:それに比べて、多くの日本企業はメンバーシップ制の雇用制度で、ゼネラリストを育てていますよね。自分が何が得意なのかを考えなくとも過ごしていける。私もはじめての転職の時、自分は何が得意なのか、何が好きなのかをふり返ったのが、とても貴重な経験となりました。ですが多くの企業において、社員はそのような内省の訓練を受けていないように思います。伊藤園で はいかがですか?

角野:そういった訓練は、正直あまり受けていません。私はテレビCMをつくるマーケティング本部に所属していますが、なかなかクリエイティブになりきれない現状があります。目の前の忙しさでいっぱいで、ブランディングや独自の価値を表現するチャレンジができていないんですね。そんな中で、こういうのもあるでしょ、と一石を投じる意味でで茶ッカソンをやっています。面白いね!って言ってくれる人もいますが、外の世界を見に行く人が本当に少なく、たこつぼ化した中でどう変えていくかが課題です。

遅野井:意図やミッション、意識のむけ方が再起動して切り替わることなく、いうなればずっとOSが立ち上がりぱなしの状態で狭いプロセスの中をずっと回っている感じですよね。日本でセルフマネジメントがうまくいかないのはミッションの見つめ直す機会がないからだと、今日の話を聞きながら思いました。意識が常に同じところに向いていて、とりあえず目の前のことを片づけるので精一杯。本当に、ずっと立ち上がりっぱなしのパソコンに似ていますね。

稲墻:その通りですね。セルフマネジメントのクラスでは、「自分にどんな思い込みがあるのか?」「身にわき起こる感覚がどのように感情に影響を及ぼし、それが思考に繋がっているか」などに気づく訓練をします。その上で、それらがどう自分の行動や結果に結びついているかを分析しています。日本人は、表面的な「自分の行動」はわかるけれど、それがどんな選択や気づきのもとで行動に繋がっているか、ということをすぐには理解できません。だいたい、1〜2か月くらいでようやく少しわかってくる。普段、行動しか見ていないんです。行動だけひたすら回してオーバーヒートしているか、ガスが切れているかのどちらかの状態になっています。

遅野井:近いところでぐるぐる回っている感じですよね。

梅澤:世界中の30代・40代の人に、幼少期どんな思い出があったかを尋ねると、日本人は「小さいころに東京オリンピックがあって~」というような全体事象を答えるんですね。欧米は「何歳の時母とこんなことをして~」と、自分事を答える。さまざまな問いを自分事として日本人はとらえない。子供のころからそういう風にやるもんだと育てられていますからね。だから訓練が必要なんです。 

遅野井:受験のプロセスなどもそれですよね。「勉強しなさい」しか言わずに、社会が決めた流れに乗せる。なんのために?ということが欠けている。角野さんは大企業で働く日本人がセルフマネジメントをすることを妨げてる要因はなんだと思いますか?

角野:そこでしか生きていけないという自信のなさではないでしょうか。僕はアメリカに行って、沢山の仲間にサポートしてもらいつつ、伊藤園の営業マンとして一人で仕事をし、日本に帰って来てからも素晴らしい仲間ができました。これから副業の時代や、さまざまな働き方ができる時代になっていきます。多くの方は、「この会社でダメだったら路頭に迷う」といった漠然とした不安を抱えていらっしゃいますが、僕はそんなことないと思います。今は売り手市場ですし、他でもやっていける人はたくさんいると思います。日本人はまじめすぎますね。

遅野井:これまでの組織や集団から離れるのが恐怖。それを守ろうとするあまり自己を変えようとせず、執着する、というサイクルですね。

角野:あとは、「自分はこれがかっこいいと思う!」という美学を大切にしないですね。僕はレールが敷かれてすべて用意された状態で成功してもあんまり嬉しくなくて、自分で考えてできた方が嬉しいし、それがストーリーになると思うんです。結果だけでなく、プロセスも含めて美学。その美学を忘れてしまった感じがしますね。

遅野井:フラワーアレンジメントの仕事は、美学をなくしたら終わってしまいますよね。

梅澤:間違いなくそうですね。ですが、日本人は決断が苦手で、行間を読み過ぎて自分の美学を曲げてしまう人が多いと思います。結果中途半端になり、それを他の人や環境のせいにしてしまう。美的感覚は千差万別ですから、僕らは「主語をお客様にする」というルールを決めています。自分の美学ではなく、あの人だったらどうだろう、と自分に憑依させる。そうすると答えが見つかるんです。自分のいいではなく、お客様のために花を咲かすのが僕らの仕事であり、デザインですから。

遅野井:ドラッカー・スクールにはいろんな国籍の方がいらっしゃると思いますが、その中でも日本人はセルフマネジメントが下手ですか?

稲墻:日本人は圧倒的に下手だと思います(笑)。下手だけど、慣れたらちゃんとできる。なぜなら、意識してやったことがないからです。そして、ちゃんと積み重ねていければきちんとできるようになります。最初はうまくできなくても、留学の終盤は日本人がリーダーシップをとっていたりもするので、「知らない」「意識していない(考える環境にない)」けれど、訓練を通して「やればできる」のだと思いました。そこには期待できるかもしれませんね。

遅野井:いかに普段訓練を受けていないかですね。でも、きっかけは難しいことではないですね。例えばお茶をちゃんと淹れてみる。コンビニでペットボトルを買うんじゃなく、ちゃんと急須で淹れてみる。 

梅澤:ぶっちゃけ、ペットボトルのお茶が売れるのと、急須でお茶を淹れてもらうことのどちらが嬉しいですか??

角野:当社としてはやはりペットボトルでしょうね(笑)。でも僕は茶葉を買って、急須でお茶を淹れてほしい。文化を買ってほしいと思います。ペットボトル飲料市場はレッドオーシャンです。一番はじめにペットボトルのお茶を作ったからこそ、一番はじめに次の提案をする。「まだそんなお茶の飲み方してるの?次の飲み方はこうだよ!」というような企画をつくっていきたいですね。僕は、伊藤園は「お茶のスタートアップ」だと思っているんです。守るよりもチャレンジしていきたい。お茶の市場が世界へどんどんと広がっていくことが願いです。

梅澤:「よそもの」の視点は絶対には大切だと思っています。その業界ではなく、世論が支持してくれたらそれが価値になります。花も文化にしていきたい。緑が豊かになることで人を幸せにできれば、それは間違いなく善ですから。

遅野井:お茶、お花、緑…普段何気なく接していたらやりすごしてしまうものたちを、愛でたり鑑賞する。それがいい影響を及ぼす科学的裏付けもあるわけですから、一瞬立ち止まってその環境を堪能し、自分がどう思うのか感じてみる。それがセルフマネジメントの第一歩ですよね。 

角野:「感情のログをとる」という落合陽一さんの言葉があります。寝る前に、今日一日はなにに心が動いたのか書きだしてみる。例えば気分の悪さを「シチューが煮えたぎるような…」というように、言語化して感情のログをとる。僕もお茶の美味しさを語る時に、「おいしい」「うまみが~」のように簡単なことしか言えないんですけど、「千利休が秀吉に会ったときのような…」みたいな感じで(笑)、言語化を、馬鹿にせずにやってみる。訓練してみることはすごく大事だと思います。

遅野井:日本人は感情を表に出すことを美徳としないから、セルフマネジメントのきっかけがないんですよね。今日のイベントが皆様にとって、いろんな感情に気づく第一歩となり、意識に再起動をかけて、セルフマネジメントのサイクルがうまく回るきっかけになりますように。ありがとうございました。  

お茶や植物でセルフマネジメント、やってみよう!

登壇者の皆様、ありがとうございました!

昔から日本人の身近にあるお茶文化や植物。それらがセルフマネジメントの「名脇役」になることに感動しました。名脇役からきっかけをもらい、毎日少しの時間でもいいので感情に向き合い、意識をリセットしてみましょう!それが私たちの生活にとても大切なことなんだと教えてもらいました。
これからもbeeではさまざまな観点から「はたらく」をよりよくするイベントを開催します!
皆様の「おもろい」観点、お待ちしております!

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