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組織文化を知って見つける、あなたに合ったオフィス環境

和やかだったり、活動的だったり、慎重であったり……人に個性や性格があるように、組織にもその組織ならではの特性があります。そんな組織の特性を表す考え方のひとつに「組織文化」というものがあります。今回は、この組織文化の視点から働く環境について考えてみます。組織文化とは何か、また日本企業における組織文化の調査分析、そして組織文化の側面から求められるオフィス空間のポイントをご紹介します。

 

組織の性格「組織文化」とは

組織文化とは、経営組織において構成員の間で共有されている行動原理や思考様式のことです。簡単に言いますと、組織内において業務を遂行する際に重要視する価値観や行動の傾向のことで、その組織が何かを判断する際にベースとなるコアバリューを明確にしたものでもあります。そしてこの組織文化は、下記のように4つの特徴を持った文化に分類されます。

 

(文化とその傾向)

・家族文化(Clan):和気あいあいとした中で互いを尊重しながら、チームワークを維持していく
・階層文化(Hierarchy):秩序を重んじた中で堅実に取り組みながら、安定した連続性を維持していく
・イノベーション文化(Adhocracy):開放的な雰囲気の中で、チャンスを求めて変化に対応していく
・マーケット文化(Market):競争意識を持ちながら、目標に向かってスピーディに突き進んでいく

 

 

日本企業の組織文化を調べる

この組織文化は、「組織文化診断※1」を通して分析することができます。分析を通して、自分たちの組織が現在、どの文化傾向が強いか、そして将来(理想)はどんな組織を目指したいのかを知ることができます。今回、日本の企業約170社の調査をもとに組織文化を分析してみました。

 

※1アンケート形式による診断ツール。現在、将来の組織文化について可視化し、組織内で共通認識を得ることができ、将来の行動変革も視野に入れた診断手法である。

 

4つの組織文化の割合(現在と理想)

現在の組織文化で最も多かったのは階層文化が突出していた「階層型」で、全体の35%を占めていました。次に、「家族型」28%、「マーケット型」22%と続き、「イノベーション型」が一番少なく3%という結果です。また4つの文化をほぼ均等に持っている企業群「バランス型」は12%になります。

 

一方で将来目指したい理想の文化は、「家族型」が最も多くなり36%。割合は少ないですが「イノベーション型」は現在の2倍以上に増えています。一方減少したのは「階層型」と「マーケット型」で、特に「階層型」は現在の1/3ほどに縮小しています。「バランス型」が増えていることから、多くの企業では、現在の組織文化を良しとせず、他の文化を強めようとしていることがわかりました。

 

では日本の企業は、現在突出している組織文化からどの組織文化を目指しているのでしょうか。実はどの組織文化も現在の文化を理想とし、変化させない企業の割合が高くなっています。しかし、変革しようとする企業も少なくありません。また、目指す先は現在の組織文化によって異なる傾向を示しています。

 

・「家族型」と「バランス型」の企業は、現状維持を望む企業が多い
・「イノベーション型」の企業は、「家族型」を目指す割合が高い
・「マーケット型」の企業は、他の文化を強めて「バランス型」に向かおうとする傾向がある
・「階層型」の企業は、他の文化へ移行しようとしており、特に「家族型」を伸ばそうとしている

 

 

これら調査から現在の組織文化の傾向はさまざまであり、さらに目指している姿もさまざまであることが分かりました。現在の文化を変革して異なる文化へ移行しようとする企業も数多く存在し、その中でも家族文化やイノベーション文化を強めていこうとする動きは、チーム力や新たな価値創造が求められる現在のビジネス界の動向をある意味で反映しているように思われます。多くの企業が「イノベーション」という言葉を意識している中、全体的にイノベーション文化への移行が多いのではと推測していましたが、階層文化から家族文化への移行が目立ちました。これはいきなり対極にあるイノベーション文化に向かうことは難しく、まずは家族文化を目指そう、という意識の表れと考えられます。

 

「組織の性格」に合ったオフィス環境とは?

普段の何気ない会話から、上司からの指示連絡に至るまで、従業員の「行動」には組織文化が大きく影響しています。ミーティングのやり方もその組織の文化ならではのやり方があり、必要なミーティング空間も異なってきます。オフィスの中における個人やチームの行動は組織文化の結果として表れるものではないでしょうか。組織文化の傾向から行動を推測することでそれぞれに合ったオフィス環境のポイントを紹介します。

 

【家族文化】

 

―bp vol.5より

 

「居住性」:チームの一体感を感じながら個人の自己啓発を促す居心地の良い環境

 

(スペース例)

・チームの一体感を感じながら仕事を進めることができるレイアウト
・デスクの島(かたまり)を小さくし、組織の規模を小さくみせる
・人が自然と集まりやすい、人を招き入れるようなミーティングスペース
・相談しやすいマネージャスペース
・個人が自己啓発の学習をしたり、コーチングできる集中スペース
・歩き回りやすい回廊型動線(長い直線を避ける)

 

日常的にチームや仲間の気配を感じながら、また相談しながら仕事を進められる自席空間や、チームで雑談したり、相手を招き入れやすく、人が自然と集まりやすいオープンなミーティングスペースなどが考えられます。

 

【階層文化】

 

「秩序」:仕事を確実に遂行するために効率性を重視した環境

 

(スペース例)

・集団の調和を表し、秩序を保つことができるように組織図を反映したレイアウト
・指示系統をはっきりとするために、役職ごとに家具で象徴を表す
・業務の進捗を常に把握するために、見渡せる位置にあるマネージャ席
・ミスのない確実な処理業務のために一人で集中できるスペース
・休憩室を設け、オンとオフをわけることによって職場環境の安全性を高める工夫
・業務の流れに沿った無駄のない配置、最短距離で直線的な動線

 

【イノベーション文化】

 

 

「自由度」:すぐにチャレンジすることができる柔軟性の高い環境

 

(スペース例)

・チームや業務によってすぐ変更でき、可動性がある自由度の高い空間
・その日の業務によって個人やチームがスペースを選択できる
・アイデアを発信したり、実験的な試みがすぐにできるラボ・工房的なスペース
・自由にセッティングできるような可動性のある家具の採用
・混沌の中から情報を探し出すために、あえて無秩序であったりジグザグした動線
・変化している様子が周囲からも分かるオープンで透明性の高い空間

 

【マーケット文化】

 

「機動性」:アクティブに動くための機動力をサポートする環境

 

(スペース例)

・チームより個々人の効率性を重視したフリーアドレス
・機動力を損なわないようなタッチダウン的な空間
・競争を促すために目標が常に見え、成果や結果が他のチームからも見えるようなスペース
・スピーディに情報を交換できる立ちミーティング
・時には俯瞰して日常を見つめなおす静かなスペース
・歩き回りながら情報を入手できる明確な動線

 

組織文化をオフィスづくりに活かす

組織文化を知ることは、経営者(リーダー)と従業員の価値観を顕在化し、共有することにつながります。この価値観や行動の特徴をつかみ、組織文化に適した環境を整えることで、企業と個人が同じ方向性を向きながら、組織としてより高いパフォーマンスをあげることができるようになるのではないでしょうか。それはこれからのオフィスづくりにおいて、ひとつの有効な手段となるでしょう。

 

【参考】
キム S. キャメロン/ロバート E. クイン( 2009 ) 『組織文化を変える』ファーストプレス

 

テキスト:山田 雄介
写真:岡村製作所、loftwork
イラスト:野中 聡紀

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